AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

2663:和田峠

2013年06月30日 | ノンジャンル
 家を出たのは7時ちょうどであった。天気は曇り。空には灰色の雲が厚くかかっていた。それを見上げながら「降らないといいけど・・・天気予報は午後から晴れると言っていたはず・・・」と思った。

 家から出てすぐに軽く上る。多摩湖の周遊道路に出る。それを下る。下り初めて、妙に体に受ける風が心地よかった。特に頭に受ける風の具合が・・・

 そして、気付いた。「ヘルメット忘れた・・・」あわててUターンした。全く寝ぼけているのであろうか・・・一旦家にとって返しヘルメットをかぶって出直した。

 少し急いだ。集合時間の7時半には間に合った。今日のロングの行先は和田峠である。往復距離は100kmあるかないか。距離は大したことないが、和田峠は激坂で有名な峠である。上りの距離は4kmほど。ほんの少し緩むところがあるにはあるが、大半が10%を超える激坂。所々15%以上のエリアも・・・

 体重70kgの貧脚ローディーにとって、激坂は大の苦手科目。和田峠に形容詞を付けるとしたら迷うことなく「地獄の」と付けるであろう。

 玉川上水に沿って西へ向かって走り、途中南に方向転換し八王子方面へ・・・多摩大橋と大和田橋を渡って浅川に沿って続く遊歩道へ・・・しばらく行って水無瀬橋のところから陣馬街道に入る。そして延々陣馬街道を走る。すると、和田峠の上り口に着く。

 地獄への入口・・・といったところであろうか。しかし周囲の風景は地獄とは正反対の緑あふれる穏やかな世界である。

 上り始めは穏やかである。しかし、徐々に和田峠はその本当の姿を見せ始める。2kmを超えるあたりから、呼吸が乱れ始める。ペースは全く上がらない。集団がばらけ始める。私は徐々に付いていけなくなる。

 「くそっ・・・斜度は厳しいままか・・・体重をちぎって投げ捨てられればいいのに・・・」汗が流れる。呼吸は蒸気機関車のそれのように激しい。

 激坂攻略には程遠い走りでようやく上り終えた。ロードバイクを立てかけて、座りこんだ。汗はひっきりなしに落ちてくる。祈るように組み合わせた両手にぽたぽたと汗が沁み込んでいく。峠の頂上は雲の切れ間が見え始めていた。雨の心配どころか晴れて暑くなりそうな気配である。

 

 激坂は辛い。それは変わらない。しかし、激坂を上り終えると、何かしらこう晴れやかな気分になる。それはだらしのない走りであっても、やはりそうである。血液が相当な勢いで体内を循環している間に浄化されたかのようである。

 「なんだか・・・血が入れ替わったようである・・・」

 帰りは下り基調。気温がずいぶん上がった。峠を上り終えた時はへとへとの態であったが、帰り道は不思議とそれほど疲れていなかった。

 「和田峠・・・今度一人で行ってみよう・・・」そんなことを帰り道に考えていた。最も苦手な激坂・・・「地獄の」と形容詞を付けたくなる峠である。でも、きっと近いうちにまた来るであろう・・・和田峠に、一人で。
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2662:2階

2013年06月29日 | ノンジャンル
 2階の寝室にQUAD ESL989を移動してからどのくらいの期間が経過したのであろうか・・・確か3ケ月か4ケ月ほどになるであろうか・・・

 それまでは、1階のリスニングルームに設置していた。しかし、1階のリスニングルームでは、ESL989は酸欠状態に陥った金魚のように大きな口をせわしなくぷかぷかしているような感じに聴こえるのである。

 「あれっ・・・」と当惑しながら、いろんなことを試した。ついには逆オルソン方式も試した。しかし、冷静な頭で考えなおした。「諦めた方がよさそうだ・・・」という結論に達した。

 1階のリスニングルームは6年ほど前に石井式リスニングルームにリフォームした部屋であった。もともとは10畳ほどの広さの応接間であった。リフォームの結果、周囲の壁が11cmも厚くなったので、部屋の広さは8畳ほどに縮小した。極めて密閉度が高く、防音も完ぺき。夜でも時間を気にせず音量を上げられた。

 しかし、ESL989との相性は最悪と言っていいほどであった。多額の費用をかけてリフォームした部屋であったのでなかなか踏ん切りがつかなかった。

 そんなこんなで、ようやく2階に移ったESL989は、伸び伸びと背伸びをしたように開放的な音を奏で始めた。どうやら、ESL989は広い空間が喉から手が出る程欲しかったようである。酸欠状態からようやく解放された。

 2階の部屋は15畳ほどの広さがある。縦に長い部屋である。スピーカーからリスニングポイントまでは6mほど離れている。リスニングポイントにはビンテージ北欧家具のイージーチェアが置かれている。Arne Vodderデザインのお気に入りの椅子である。

 今日はそのリスニングポイントに他の方に座っていただいて、一時を過ごした。我が家に来てくれた方はishiiさんと本日のコーヒーさんである。ishiiさんのお宅には少し前にお邪魔したばかり、本日のコーヒーさんとは初対面であった。お二人ともオーディオにも音楽にも造詣が深い。音楽の合間にはそういった話題で盛り上がった。

 ESL989が2階に移ってからは、特にあれこれいじることはほとんどなくなった。何かを変えようとする意思はなく、ごく稀にスピーカー位置を微調整するか、LP-12のトーンアームを微調整するぐらいであった。

 別に飽きたわけでもない。時間は短くなったが、オーディオで音楽を聴く。しかし、「趣味」としての優先順位は随分下がってしまった。今では、オーディオで音楽を聴くということは、「趣味」というよりも日常のなかの当たり前の一時というような位置づけになっている。

 「本来、そういったものであるべきなのであろうか・・・」そんことを頭に浮かべながら、お二人にレコードやCDで何曲か聴いていただいた。

 ふっと思いついた。「また1階にもどせば、もしかしたらあれこれ気になっていじりだすのかもしれない・・・アンプを変えようか・・・ケーブルをいじろうか・・・セッティングを大幅に変えなければ・・・となると、趣味にまた復権するのであろうか・・・」

 もちろん、思いついただけで、実行することはあり得ないであろう・・・
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2661:競技会

2013年06月28日 | ノンジャンル
 金曜日の夜・・・いわゆる「花金」である。国分寺駅の周辺の人込みはいつもより多いような気がした。私はとある場所へ急いでいた。人込みを掻き分けるようにして、速足で歩いた。「このペースで歩けば、きっと7時ちょうどぐらいに着くはず・・・」そう思いながら。

 ダンススクールはビルの三階にある。エレベーターに乗り込んで3階に上がる。エレベーターを降りて、扉を開けた。

 先日ウィンナ・ワルツの舞踏会が終わったので、とりあえずダンス教室に通う当面の必要性はなくなった。しかし、私は継続することを選んだ。今日からはレッスンはウィンナ・ワルツ以外のダンスに切り替わる予定である。

 フロアでは金曜日にいつもレッスンを受けている小学生のペアが踊っていた。男性の講師が指導していた。他にはレッスンを受けている生徒はいなかった。

 いつものようにダンスシューズに履き換えた。しばらく、その小学生のペアのダンスを眺めていた。脇ではその親達が座ってレッスンの様子を見ていた。「ジェニファー」が控室から出てきた。

 「ジェニファー」は「どうでしたか?舞踏会・・・」と笑顔で訊いてきた。

 「ええ、まずまずでした。広さの割に人数が多く、スペースを確保するのが結構大変でした。ボックスで停まりながら、スペースを見つけてはナチュラルターンで進む・・・そんな感じでした。でも楽しめたし、良い経験になりました。」

 「そうでしたか・・・楽しめたのなら、良かったです。」

 「4時半から始まって、7時まで、途中休憩もあったり、ウィーン風フォークダンスを習ったりしましたが、結構な時間、踊ってました。シャツもズボンも汗だくでした。ウィンナ・ワルツって結構疲れるんですよね・・・」

 「テンポが速いですからね・・・初めてのダンスでウィンナ・ワルツを習ったのは良い経験になったと思います。せっかくウィンナ・ワルツをやりましたので、それを活かして今日からはワルツをレッスンします・・・テンポはぐっとゆっくりになります。」

 今日からはワルツを習うことになった。テンポはウィンナ・ワルツに比べるとゆっくりである。しかし、ステップが多様である。クローズドチェンジ、ナチュラルターン、リバースターン以外に幾つものステップがある。

 今日は新たに「チェック・バック」と「ナチュナル・スピーンターン」を習った。既習の三つのステップと新たに習ったステップを組み合わせて、音楽に合わせてフロア内を踊った。

 ウィンナ・ワルツと比べてワルツはゆっくりなリズムで踊りやすい。CDで曲をかけながら、フロア内を2周、3周する。新たなステップの時には視線が落ちがちになってしまったが、まずまずの感じ。

 「初回のレッスンでここまで踊れれば上出来ですよ・・・」

 30分は駆け足で過ぎ去る。次回のレッスンの日程を決める時に、少しばかり「ジェニファー」と会話した。彼女は今も年に数回「競技会」に出ているようであった。しかし、なかなか上位には食い込めないようであった。

 「前回の試合も1点足りなかったんです。あと1点とっていれば決勝に上がれたんです・・・」

 彼女はそんな話をした。競技会は審判員の採点によって勝ち進んでいく形式なのであろう。「Shall we dance?」の中のシーンが頭に浮かんだ。

 「そういった競技会って観覧できるのであろうか・・・」「ジェニファー」の試合を観てみたいような気になった。
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2660:SPEC

2013年06月27日 | ノンジャンル


 夜7時の日比谷公園は、まだ明るさが残っていた。気温は20度を切っている。過ごしやすい。私は、入口からほど近いところに佇んでいる日比谷図書文化館を目指した。その建物はすぐに見つかった。

 今日はishiiさんからのお誘いを受けて、「SPEC試聴会」に参加した。SPECは3年前に業績不振に苦しんでいるPIONEERから退職した10名の技術者達が起こした会社である。プリメインアンプやフォノイコライザーを製品として製造販売していて、国内外で好評を得ているようである。

 「ガイアの夜明け」というテレビ番組でその奮闘ぶりが報道されて大きな反響があったために新たに企画された試聴会であった。

 私もその番組を偶然観ていた。なので、ishiiさんから電話があった時「あっ、あのメーカーか・・・」とすぐに興味を持ったのである。

 4階の小ホールに到着したのは7時5分前であった。ishiiさんと挨拶した。椅子に座って、入口でもらったパンフレットを眺めた。プリメインアンプは3種類。RSA-F1、RSA-M1、RSA-V1DT・・・いずれも共通のテイストのデザインを纏っている。

 そのデザインは、木製ベースを採用するなど独自のこだわり感が感じられる。フロントにはセレクタースイッチ、ボリュームノブ、パワースイッチのみのシンプルな構成。個人的な好みからすると、それほどかっこいいとは思えない。

 スピーカーはB&W802Nであった。試聴会に使われたのはフラッグシップのRSA-F1。まずはCDで何曲かかかった。CDプレーヤーは自社で試験的に作製した製品で、残念がら販売されていないものであった。

 その音の質感は、伸びやかで、澄んでいる。B&W802Nを自在闊達に駆動するその駆動力は相当なもの。音の表面にささくれや角ばった質感もなく、使用されている部品の優秀性が窺われる。

 「これなら、受けが良いのも分かる・・・」

 アナログもかかった。レコードプレーヤーは現在開発途中の試作機が使われた。アナログの音の質感は明らかにCDやSACDを上回っていた。電源部が別躯体となっているフォノイコライザーREQ-77Sが使われていた。このフォノイコライザー、相当反響があり、高価格であるにもかかわらず売れているようである。

 試聴スペースとしては広い空間の小ホール。試聴会なので、セッティング等の煮詰めはそれほどではない。もっと整った環境であれば、さらにその音質は向上するであろう。しかし、このSPECのアンプの実力の高さはしっかりと窺うことができた。

 「純粋な楽観主義」・・・その音からはそんな言葉がイメージとして頭に浮かぶ。音は明るい。そして澄んでいる。透明な空間に、明るく艶やか・・・アンプのベース部に使われているスプルース材の色合いのような音が広がる。

 くすみや陰りのない音は自身に満足げな表情である。あけっぴろげで屈託のないその表情は、きっと多くの人に受け入れられるであろう。

 明るく、饒舌そしてフレンドリー。初対面であったが、打ち解けてすぐに話せる。どちらかというとこちらが聞き役にまわる。少し肥満気味であるがエネルギッシュに動き、喋る。「良い人(音)である・・・」そう思った。
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2659:クワトロポンテ

2013年06月26日 | ノンジャンル


 先日、横浜のMさんと中華街の「聚英」でお美味しい食事を楽しみながら様々なことを話していた。そして何かのきっかけでマセラッティのクワトロポンテの話となった。横浜のMさんはマセラッティを2台乗り継いでらっしゃるマセラッティ派である。

 現行型クワトロポンテはピニンファリーナがデザインを担当。数年前のマイナーチェンジにより若干の修正が加えられたが、その基本的なデザインは踏襲された。

 その流麗での伸びやかな肢体は官能的でかつスポーティーである。サイズはMercedes-Benz S-CLASSやBMW 7シリーズに近いが、その性格はドイツ系セダンよりもよりラグジュアリーでスポーティーな4ドアセダンという位置づけである。

 この車が似合うためには、それなりの年齢とセンス良いいでたち、そして一種の気品のようなものが必要となってくる。首に金のネックレスをしているような中年オヤジは間違っても乗ってはいけない車である。

 そのクワトロポンテが最近フルモデルチェンジをした。横浜のMさんは新型のデザインをあまり高く評価していなかった。「今一つピンとこない・・・」そういった評価であった。

 まずはフロントから見てみる。特徴的なグリルデザインは変わらないが、従前のモデルに比べて目つきが少々悪くなったような気がした。Mercedes-Benzの初代CLSを思わせるような目つきである。メンチを切ったヤンキー風でもある。このフロントライトの造形は先代のどこか遠くを眺めているような印象のものに比べて優雅さは相当減退している。



 リアに回る。現行型の縦ラインから横長のものに変更されている。フォーシルバーリングをつけてしまえば、ほとんどAudiの後姿である。「これもなんだかな~」という印象を持った。

 サイドから見るとその緩やかにラウンドする全体のラインは明らかに先代の流麗さを引き継ごうとしている意思が窺える。新たに引かれた2本のキャラクターラインにより、その表情はよりエッジの立った鋭いものとなっている。

 デザインは好みである。なので、当然新型の方がかっこいいと思う人がいるはずである。しかし、個人的にはピニンファリーナの手による現行型のデザインの方がはるかに良いと思われてならない。クワトロポンテには、あまりがつがつした造形ではなく、洒落たツイードジャケットのような上質のゆとりのようなものを備えていて欲しい・・・そう思うのであった。

 まあ、新しい流れと言えば新しい流れなのかもしれない。よりアグレッシブに、より精悍で威圧的なフォルムに・・・そういう流れなのかもしれない。
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