AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

3240:ハザードランプ

2015年01月31日 | ノンジャンル
 「Mad Sound」を出てくるとき、「ゆみちゃん」だけでなく、私も荷物を抱えていた。そして、私の顔は少しばかり上気していた。冷たい冬の空気が顔に当たって心地よかった。

 彼女は当初の予定どおりSONY CF-1610を購入した。外観には大きな傷や錆もなく程度は良好であった。きちんとメンテナンスが行われているので、ラジオもカセットの動作もいたって正常である。ラジオ受信用のアンテナもまっすぐに伸び、ねじれたりよれたりしていなかった。

 エアパッキンで丁寧にくるまれたCF-1610は、大きめの紙袋に入れられて彼女に手渡された。価格は20,000円である。

 そして、私も紙袋を持っていた。入っているのはSONY CF-1900である。しかし、このCF-1900はエアパッキンにはくるまれてはいない。

 元箱があったのである。「まあ、奇跡のようなものです。元箱も綺麗に保管されていたんです。内部は徹底的にメンテナンスしましたから、当分修理の必要はないと思います。これは人気のある機種で、デザインも素晴らしいですよね。この時代のSONYの底力のようなものを感じますよね・・・」店主は感慨深げに話した。

 こちらの価格はぐっと上がって45,000円である。ヤフオクでジャンク品に近い内容のものであれば10,000円程度で入手できるであろうが、結局メンテナンス費用を含めるとそれなりの出費になるであろう。

 クリーニングもしっかりと行われたようで40年という年月の経過を思わせない美しさであった。ラジオのチューニングメーターが私の心をころころとくすぐった。

 もしも小学生の頃のSONY CF-1900を手に入れていたならば、布団の中にもぐりこんで真っ暗ななかでラジオを聴いたに違ない。暗い空間のなかでオレンジ色に光るこのチューニングメータに心躍らせながら・・・

 「Mimizukuに戻って、聴き比べしませんか・・・?」

 「ゆみちゃん」は嬉しそうにそう言った。MimizukuのCF-2580と合わせると70年代前半のSONYのラジカセが3台揃うことになる。こんな機会は滅多にないはず。

 CF-1610、CF-1900、CF-2580・・・3台がMimizukuのカウンターに並んだところを想像した。

 イジェクトボタンを押してカセットを入れる。そして蓋を閉じる。PLAYボタンを押すとカセットが回転しテープが走行しはじめる。ヘッドの上をテープが通り過ぎていき音楽が流れる。それらの一連の流れは、時間そのものの流れと一致して、妙に心に安心感をもたらす。同じカセットテープを次は別のラジカセで聴いてみる。

 そんな時代錯誤な出来事が、砂時計の砂が詰まってしまって砂が落ちなくなったような古ぼけた喫茶店Mimizukuのカウンターの上で繰り広げられる。それは、奇妙でありながら心躍るささやかな出来事に違いない。

 「それは、いいね・・・きっと楽しいよ・・・」

 コインパーキングの精算を済ませた。Poloのリモコンキーを押した。「ピッピッ・・・」と音がしてハザードランプが2回明滅した。Poloもどうやら賛成のようである。
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3239:CF-1900

2015年01月30日 | ノンジャンル
 店から数分歩いたところのコインパーキングが空いていたので、Poloを停めた。車を降りて「ゆみちゃん」がプリントアウトした地図を見ながら、ラジカセ専門店が入っているビルを探した。

 それはすぐに見つかった。そのビルに2階に階段で上がり、指定された番号の部屋を探した。その部屋の扉には小さな看板が貼り付けてあった。「Mad Sound」と書かれていた。

 チャイムを押した。インターホンから「どうぞ、お入りください・・・」と男性の声がした。ドアを開けて中に入った。

 店内は思っていたよりも明るく、組み立て式の大型の収納棚が並んでいた。その棚には多くのラジカセが綺麗に収納されていた。

 二人はそれらの古いラジカセを順番に見ていった。SONY、National、Victor、SANY0、HITACHIなどのメーカーの様々なラジカセが並んでいる。

 小学校6年生の頃、通学路の途中に上新電気の店舗があった。1階には白物家電が置かれ、2階には音響関連とテレビが置かれていた。小学校からの帰り道よく寄り道をした。入口を入ってすぐ左に階段があり、その階段を一段飛ばしで駆け上がり、ラジカセコーナーに向かった。そして、飽きることなくそこに綺麗にディスプレイされているラジカセを眺めた。

 そこには小学生の目がすると宝物のような様々な機器が立ち並んでいた。特にSONYのラジカセが好きであった。SONYのラジカセからは、えも言われないような魅力的な香りが発散されていて、それに惹きつけられる虫かなにかのように私の目は釘付けになった。

 70年代に発売されたラジカセがずらっと並んでいる店内にしばらくいると、ちょっとしたタイムスリップ感が湧き上がってくる。

 「懐かしい・・・上新電気の2階にいるような気になってくる・・・」そんなことを思いながら、一通り見てまわった。

 「ゆみちゃん」はSONY CF-1610を見つけたようで、それを手にとってその外観を詳細にチェックしていた。

 私はとあるラジカセに見入っていた。それはSONY CF-1900。小型のラジカセであるが、別売りのタイマーを用意すると留守録が出来たり、フェライト&フェライト・ヘッド採用していたりと、その当時としては高性能なラジカセであった。

 そして、その作りが本当に隅々まで気合が入っている。そして気合が入っても空回りすることなく、そのエネルギーがこの小さな体にしっかりと詰め込まれている。餡が尻尾の先まで詰め込まれているたい焼きのように、手に持ってみてもずっしりとした手応えがある。

 しばし、その前で佇んでいた。


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3238:Polo

2015年01月29日 | ノンジャンル
 「この車はなんていう車なんですか?」

 「ゆみちゃん」はその質問にそれほどの興味はないことを示すかのように抑揚のあまりない語調で訊いてきた。小柄な彼女はポロの助手席のシートすっぽりと収まっていた。

 「フォルクスワーゲンのポロ・・・かわいい車でしょう・・・」

 私はエンジンをかけるためキーをイグニッションに差し込んで軽く右に回した。1.2Lのガソリンエンジンはすっと目覚めた。

 「taoさんは背が高いから、大きな車に乗っているのかなって、思ってました。」

 「ゆみちゃん」はシートベルトをした。車をゆっくりとコインパーキングから出した。喫茶店Mimizukuで待ち合わせ、これから渋谷へ向かう。道が混んでいなければ大した距離ではないのでそれほど時間はかからないはずである。

 「小さいものが好きなんだ。不必要に大きなものはどうもね・・・このポロは小さなお利口さんって感じの車で、気に入っている。外観もインテリアもかちっとしていて大人な感じがして、こちらに媚びてこないデザインが良い・・・」

 ナビに目的地の住所を入力したので、ナビが指示した通りの道を進んだ。ナビの画面には指示された道路に紺色のラインが入る。その紺色のラインから外れないように車は静かに進んでいった。道は徐々に混み始めた。

 「昨日ホームページを確認したんですけど、SONY CF-1610はまだ残っているみたい・・・現物が綺麗ならいいけど・・・」

 「ゆみちゃん」はどうやら候補を絞っているようである。CF-1610は1973年の発売のモノラル・ラジカセである。SONYらしい清潔感のあるデザインのなかに、独特なラインによる縁取りがあり、心惹かれるデザインである。当時のエントリー的なポジションの存在である。それだけに、機能はシンプルである。しかし、エントリーモデルだからといって気を抜いた感じは微塵もなく、隅々までしっかりとした作りがなされている。

 「CF-1610はお薦めだよね・・・このモデルはエントリーモデルなんだけど、小さなお利口さんって感じで、しっかりとしているんだよね・・・ちょうどポロのような感じかな・・・ポロのインテリアデザインとこの当時のSONYのデザインって少し共通点があるよね・・・媚びていない感じが良い・・・」

 車内はFM放送が流れていた。Inter FMにチューニングがあっていた。The Lumineersの「Ho Hey」がかかっていた。

 「この曲好き・・・」

 彼女は笑顔でそう言った。


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3237:在庫確認

2015年01月28日 | ノンジャンル
 「SCOTTのADDICT SL・・・TIMEのIZON・・・BH ULTRALIGHT EVO・・・それからKUOTAのKHAN・・・在庫の確認を来週にでもお願いできますか・・・すみません、なかなか一つに絞れなくて・・・」

 ロングライドの途中でリーダーに頼んだ。バイクルプラザで扱っているブランドは限られている。その限られたブランドのなかでも、候補が多くて決めきれない。とりえず4つに絞った。

 私の身長は181cm、大概のメーカーではLサイズのフレームが適正サイズとなる。あまり数の出ないLサイズは日本にはそれほど入ってこない。完売になってしまうと、来年まで入ってこない可能性もある。とりあえず、候補に残った4つの在庫の確認をしてもらうことにしたのである。

 メールは翌週の月曜日に来た。「SCOTT ADDICT SLはLサイズは完売、TIME IZONは現在在庫はないが予約すれば4月か5月に入荷する予定、BH ULTRALIGHT EVOはLサイズが数台在庫有り、KUOTA KHANは入荷したばかりで現在検品中で在庫有り」とのこと。

 「ふむふむ・・・」とメールの内容を確認した。「どうすべきか・・・ADDICT SLはMサイズなら在庫は若干あるとのこと、Mサイズでもステムのサイズを工夫すればどうにかなるかも・・・TIME IZONは予約をすぐに入れれば6月のMt,富士ヒルクライムには間に合う。BH ULTRALIGHT EVOとKUOTA KHANはLサイズ在庫有り、発注すれば近いうちに入荷する。」

 2月から3月中旬までは確定申告で仕事が一番忙しい時期である。確定申告が終わる3月下旬ぐらいにフレーム交換をするのが気分的に一番のる。

 確定申告が終わる時期というのはその解放感から気分が高揚する。そして、忙しさからくる心理的鬱屈感をさらに強力に吹っ飛ばす起爆剤のように新たなフレームが確定申告明けに到着するとタイミング的には抜群である。

 とりあえずどれか一つ押さえる。3月下旬にコンポーネントとホイールを移植し、新たな相棒が完成する。そんな流れが望ましような気がする。

 「となると、Lサイズの在庫が現在あるBH ULTRALIGHT EVOかKUOTA KHANのLサイズを押さえて、3月下旬に入ってからセットアップする。それが妥当なプランか・・・」

 「いや、TIME IZONも捨てがたい・・・あの独得な存在感は、やはり凄い。Mt.富士ヒルクライムには間に合うしな・・・」

 在庫確認はしたが、結論がすぐに出るわけではない。しかし、時間に余裕はない。近いうちに結論を導き出す必要はあるようである。
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3236:城山湖

2015年01月27日 | ノンジャンル
 城山湖へ向かう上りを上り始めた。ゆったりとしたペースでしばし上った。1km程とかってに想像していたのであるが、1km程上っても道はずんずんと続いている。

 「あれ・・・まだあるの・・・」

 と少々面食らう。やがて隊列は長く伸び始めた。先頭を引いている2名がペースを上げた。心拍計を見たら170を超えていた。

 「結構しんどい・・・斜度もしっかりある・・・どこまで続くんだ・・・」

 と、心の中を「?」マークでいっぱいにさせながら、上り続けた。「ここを曲がればさすがに終わりだろう・・・」という期待は何度も裏切られた。

 やっと駐車場が見えた。「ついた・・・長かったな・・・」と思い、ペースを落とす。しかし、数名いるローディーのなかにチームメンバーは見当たらない。

 「まだ、上るの・・・」

 折れた心はさらに折れた。しばし上り続けるとようやく城山湖に到着した。結局3km以上あったような気がする。斜度もしっかりとしたものであった。これはヒルクライムコースとして実にしっかりとしたコースである。気合を入れて緊張感を持って臨むべきコースであった。

 『それさぁ、早くいってよぉ~』と心のなかには松重豊のテレビCMでのセリフが響いた。かってな想定ではあったが、想定外にしっかりとした城山湖ヒルクライムであった。



 城山湖はとても小さな湖であった。少し行ったところに眺望の良いポイントがあるということで、そちらに移動した。広々した眺望にしばし見入る。

 上ってきたルートとは別のルートで下りていった。大きな道に出て、車に気をつけながら帰路を進んでいった。

 国道16号、野猿街道と進んでいき、やがて多摩川サイクリングロードに入った。ここはジョギングやウォーキングをしている人、サイクリングを楽しんでいる人が多くいるので気を使う。スピードを少し緩めて川沿いの道を走っていく。

 郷土の森公園のところで多摩川サイクリングロードを降りて、府中街道へ向かった。ここで東大和メンバーは本隊から切り離されて、府中街道を北上して東大和市を目指した。

 「緩め・・・」のコースとして選択された相模湖・城山湖コースであったが、決して緩くはないロングライドであった。その証拠に脚にはしっかりとした疲労感が詰め込まれていた。
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