「Mad Sound」を出てくるとき、「ゆみちゃん」だけでなく、私も荷物を抱えていた。そして、私の顔は少しばかり上気していた。冷たい冬の空気が顔に当たって心地よかった。
彼女は当初の予定どおりSONY CF-1610を購入した。外観には大きな傷や錆もなく程度は良好であった。きちんとメンテナンスが行われているので、ラジオもカセットの動作もいたって正常である。ラジオ受信用のアンテナもまっすぐに伸び、ねじれたりよれたりしていなかった。
エアパッキンで丁寧にくるまれたCF-1610は、大きめの紙袋に入れられて彼女に手渡された。価格は20,000円である。
そして、私も紙袋を持っていた。入っているのはSONY CF-1900である。しかし、このCF-1900はエアパッキンにはくるまれてはいない。
元箱があったのである。「まあ、奇跡のようなものです。元箱も綺麗に保管されていたんです。内部は徹底的にメンテナンスしましたから、当分修理の必要はないと思います。これは人気のある機種で、デザインも素晴らしいですよね。この時代のSONYの底力のようなものを感じますよね・・・」店主は感慨深げに話した。
こちらの価格はぐっと上がって45,000円である。ヤフオクでジャンク品に近い内容のものであれば10,000円程度で入手できるであろうが、結局メンテナンス費用を含めるとそれなりの出費になるであろう。
クリーニングもしっかりと行われたようで40年という年月の経過を思わせない美しさであった。ラジオのチューニングメーターが私の心をころころとくすぐった。
もしも小学生の頃のSONY CF-1900を手に入れていたならば、布団の中にもぐりこんで真っ暗ななかでラジオを聴いたに違ない。暗い空間のなかでオレンジ色に光るこのチューニングメータに心躍らせながら・・・
「Mimizukuに戻って、聴き比べしませんか・・・?」
「ゆみちゃん」は嬉しそうにそう言った。MimizukuのCF-2580と合わせると70年代前半のSONYのラジカセが3台揃うことになる。こんな機会は滅多にないはず。
CF-1610、CF-1900、CF-2580・・・3台がMimizukuのカウンターに並んだところを想像した。
イジェクトボタンを押してカセットを入れる。そして蓋を閉じる。PLAYボタンを押すとカセットが回転しテープが走行しはじめる。ヘッドの上をテープが通り過ぎていき音楽が流れる。それらの一連の流れは、時間そのものの流れと一致して、妙に心に安心感をもたらす。同じカセットテープを次は別のラジカセで聴いてみる。
そんな時代錯誤な出来事が、砂時計の砂が詰まってしまって砂が落ちなくなったような古ぼけた喫茶店Mimizukuのカウンターの上で繰り広げられる。それは、奇妙でありながら心躍るささやかな出来事に違いない。
「それは、いいね・・・きっと楽しいよ・・・」
コインパーキングの精算を済ませた。Poloのリモコンキーを押した。「ピッピッ・・・」と音がしてハザードランプが2回明滅した。Poloもどうやら賛成のようである。
彼女は当初の予定どおりSONY CF-1610を購入した。外観には大きな傷や錆もなく程度は良好であった。きちんとメンテナンスが行われているので、ラジオもカセットの動作もいたって正常である。ラジオ受信用のアンテナもまっすぐに伸び、ねじれたりよれたりしていなかった。
エアパッキンで丁寧にくるまれたCF-1610は、大きめの紙袋に入れられて彼女に手渡された。価格は20,000円である。
そして、私も紙袋を持っていた。入っているのはSONY CF-1900である。しかし、このCF-1900はエアパッキンにはくるまれてはいない。
元箱があったのである。「まあ、奇跡のようなものです。元箱も綺麗に保管されていたんです。内部は徹底的にメンテナンスしましたから、当分修理の必要はないと思います。これは人気のある機種で、デザインも素晴らしいですよね。この時代のSONYの底力のようなものを感じますよね・・・」店主は感慨深げに話した。
こちらの価格はぐっと上がって45,000円である。ヤフオクでジャンク品に近い内容のものであれば10,000円程度で入手できるであろうが、結局メンテナンス費用を含めるとそれなりの出費になるであろう。
クリーニングもしっかりと行われたようで40年という年月の経過を思わせない美しさであった。ラジオのチューニングメーターが私の心をころころとくすぐった。
もしも小学生の頃のSONY CF-1900を手に入れていたならば、布団の中にもぐりこんで真っ暗ななかでラジオを聴いたに違ない。暗い空間のなかでオレンジ色に光るこのチューニングメータに心躍らせながら・・・
「Mimizukuに戻って、聴き比べしませんか・・・?」
「ゆみちゃん」は嬉しそうにそう言った。MimizukuのCF-2580と合わせると70年代前半のSONYのラジカセが3台揃うことになる。こんな機会は滅多にないはず。
CF-1610、CF-1900、CF-2580・・・3台がMimizukuのカウンターに並んだところを想像した。
イジェクトボタンを押してカセットを入れる。そして蓋を閉じる。PLAYボタンを押すとカセットが回転しテープが走行しはじめる。ヘッドの上をテープが通り過ぎていき音楽が流れる。それらの一連の流れは、時間そのものの流れと一致して、妙に心に安心感をもたらす。同じカセットテープを次は別のラジカセで聴いてみる。
そんな時代錯誤な出来事が、砂時計の砂が詰まってしまって砂が落ちなくなったような古ぼけた喫茶店Mimizukuのカウンターの上で繰り広げられる。それは、奇妙でありながら心躍るささやかな出来事に違いない。
「それは、いいね・・・きっと楽しいよ・・・」
コインパーキングの精算を済ませた。Poloのリモコンキーを押した。「ピッピッ・・・」と音がしてハザードランプが2回明滅した。Poloもどうやら賛成のようである。