AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

2755:ゼロスタット3

2013年09月30日 | ノンジャンル
 UNICORNさんはピストルのようなものを持っていた。その銃口をレコードの盤面に向けて引き金をとてもゆっくりと引いた。大きな銃声は響かなかった。そして、その引き金をまたゆっくりと戻していった。その操作を2度、3度と繰り返した。

 そのピストルのようなものは静電気除去装置である。製品名は「ゼロスタット3」。随分と昔からある製品のようである。イギリスのメーカーのものとのこと。(+)と(-)のイオンを発生させ、静電気を中和するそうである。

 操作は銃口をレコードに向けて引き金をひいて戻す。これを何度か繰り返す。電気、電池などを一切使用せず、半永久的(約50,000回)に使用可能とのこと。

 UNICORNさんは「5秒かけてゆっくりと引き金を引き、2秒ほど停止、そしてまたゆっくりと5秒ほどかけて戻す・・・これを3度繰り返せばばっちり。」とその操作方法を教えてくれた。

 レコードの静電気対策グッズはいろんなものが出ている。最もポピュラーなものが除電ブラシ。これはブラシの金属部分を持って盤面の上をブラシでなぞるだけ・・・埃も取れる。

 「除電ブラシも効果がないわけではないけど、静電気対策においては効果はそれほど大きくない・・・」とのこと。

 UNICORNさんはレコードをかける前とかけた後、それぞれ丁寧にゼロスタット3を操作した。これなら相当効果が出そうである。



 色は当日窓から見えていた晴天の青を思わせる爽やかなもの。見た目的なかっこよさも充分に持ち合わせている。価格は1万円ちょっととのこと。

 「これいいな・・・買おうかな・・・」

 今はまだいいが、冬になるとレコードの静電気は猛威をふるう。レコードを両手で取り上げる時、LP-12のフェルト製のマットがレコードにくっついてきたりするのである。これが手元にあれば安心である。
コメント

2754:観戦

2013年09月29日 | ノンジャンル


 今年の国体は東京で行われている。ロードレースは多摩エリアで行われ、普段チームでのロングライドでよく通る道がそのコースの一部になっている。

 そこで、今日のロングは国体ロードレース観戦も織り込んだ設定となった。目的地は「都民の森」。今年、チームのロングで頻繁に行くコースである。往復距離は110kmほど。

 睦橋通り、檜原街道、そして都民も森まで続く道がロードレースのコースの一部となっていた。そこで、普段よりも早めにスタ―トして、選手たちが到着する前に都民の森まで上がり、そこで良い観戦ポイントを探すことにして出発した。

 朝早く出たので走り始めは肌寒かった。しかし、走り進むうちにウィンドブレーカーは不要になった。

 夏のロングライドは辛かった。特に今年の猛暑は半端でなかった。一度は軽い熱中症になって体調がおかしくなったこともあった。

 9月も下旬となり、当然ではあるがずいぶん涼しくなった。涼しいことは良いことである。11月までは快適なロングライドが続くはずである。

 快適な天候に背中を押されて順調に走った。「1年中こんな気候であったら良いのに・・・」とついつい思ってしまうが、時間を留めることが出来なのと同様季節はやがて移り変わってゆく。

 上り終えて観戦ポイントも決まった。そこでしばし待った。最初は「少年の部」。高校生である。続いて「成年の部」。こちらは実業団の実力派選手たち。

 高校生たちは若々しい空気を撒き散らしながら上っていった。「若いって、良いな・・・」と素直に思った。

 続いて「成年の部」。さすがに速い。「あんな風にぐいぐい上れたらな・・・」と思いながら観戦した。

 観戦は終わった。下り始めた。スピードはどんどん上がってゆく。一気に武蔵五日市駅まで走った。下り基調なので結構なハイペースであった。

 体重が70kgもあるので、下り基調の平坦路は大の好物。「ロングライドがこんな道ばかりであったら良いのに・・・」調子の良いことを思う。

 もちろんそんなことは起こり得ない。厳しい上りがあって初めて下りもある。猛暑の夏があって秋の涼しさがある。そういったことなのである。楽ばかりしていてはけして実り多いものは得られないのである。
コメント

2753:午前中

2013年09月28日 | ノンジャンル
 高田馬場で西武線を降り、営団地下鉄東西線に乗り換えた。高田馬場から一駅目、早稲田駅で電車は停まり、ドアが開いた。間もなくそのドアは閉まり、電車は動き出した。電車のガラス窓から構内の様子や「早稲田」と駅名が書かれたプレートを眺めた。

 すると、私の心の中には甘酸っぱい液体が沁みだしてきた。その液体はゆっくりと沁み出る。まっさらな紙がごく薄い剃刀になって指の腹に真一文字の小さな傷を付けた時、赤い液体がぷっくりと膨らむように、心の中でその甘酸っぱい液体は丸く膨らんだ。その液体の色は赤紫である。表面張力が一定の限界点に達した時に破れ、その赤紫はさっと心の中に広がった。

 「懐かしい・・・」という一言では片付けられない感情がゆっくりと回る。この駅から10分ほど歩いた所に私が四畳半一間のアパートを借りていたのは四半世紀以上も前のことである。トイレも炊事場も洗面所も共同、もちろん風呂もない部屋であった。その小さな正方形の中で数年暮らした。部屋にはテレビもなく、電話もなかった。そこでは「清貧」という文字が胡坐をかきながら半目になっていた。

 そんな思い出深い駅の次の駅で電車を降りた。改札を通って、地上へ出る階段を登った。地上から地下へ向かって風が流れ落ちていた。地下の方が気圧が低いのであろうか・・・一定方向の風であった。登ろうとしている私にとっては向かい風である。

 流線形の航跡を後方へ伸ばすようにしながら私は階段を登った。登りきると風は止んだ。風の流入は階段とともに始まっているようであった。

 登りきったところにはpontaさんがいた。時間は9時20分。今日は珍しく午前中OFF会である。しばらくするとホスト役のUnicornさんがいらした。

 待ち合わせ場所から数分歩いたところにある独創的なデザインのマンションの一室がUnicornさんのお宅である。リスニングルームは長方形。その長辺に沿って銀色の角を持つ一角獣がその角を向かい合わせるように並び、その二つの銀色が引き合い、ほど良い緊張感を保っている空間には、個々に完全なバランスを有する惑星のようなオーディオ機器が設えられている。それらの機器は各々脈絡なく自転しているのであるが、何かしらの法則性を見出して公転することにより有機的に繋がり合っていた。



 最初の音はグレン・グールドであった。かれの独自の宇宙はメビウスの輪のように一回ねじれては永遠の循環を続ける。彼の左手は軽々しくは動かない。しっかりとした足取りをもって白と黒の渡り廊下を駆けるように進む。その紡ぎ出す音の質感はとても自然。ピアノの質感がとても良くなっていた。

 その後さまざまな話を栞のように時折折り込みながら、Unicornさん最近の愛聴盤が披露された。そのなかで印象に強く残ったのは、グレングールドとシューベルトのロザムンデであった。

 ロザムンデはPHILIPS盤であった。PHILIPSらしい上品で穏やかな音の質感であった。「PHILIPSの音がする・・・」と思った。同時に「QUAD ESLの音がする」とも感じられた。

 PHILIPSは長年QUAD ESLをモニタースピーカーとして使用していた。この頃はESL63PROの時代であろうか・・・そんなことが刷り込まれていたから、そう感じたのかもしれない。しかし、普段ESLの音を聴き慣れている私がそう感じたのはこの盤だけであった。「なんだかほっとする・・・」

 9時半から12時までの「午前中OFF会」は晴天の青をバックにスムースに進んだ。昼食はUnicornさんの自宅そばのバーガー屋さんで頂いた。ここのバーガーは絶品である。厚みのある円形は見事な手さばきで胃袋の中に流し込まれた。

 「午前中OFF会って結構良いすね・・・健康的で・・・はやらせますか・・・」そんなことを話した。「はっやるかな~、はっやらないだろうな~」心の中の松鶴家千とせが間髪入れずに呟いた。
コメント

2752:開墾

2013年09月27日 | ノンジャンル
 晴れて澄みわたった空気を貫いてくる矢のような直射日光は熱を孕んでいた。それらが降り注ぐ地面には熱がうっすらと積もっていたが、空気が乾いているからか風が吹くとその熱の堆積は思いのほか軽々しく移動していった。

 秋に季節が移りゆくに従って陽の傾きは夕方の早い時間帯に強くなっていく。重力の重みに耐えきれずにすっと太陽は降りていく。

 それに伴って気温も下がる。夏の蒸し暑かった頃自宅のそばの自然公園で時折見かけた蚊柱が何の前触れもなくその点描画の棒グラフをすっと地面の向かって下げるように、気温は下がった。

 6時少し前にダンススクールが入っているビルの入口に着いた。あたりはすっかりと灰色の色合いに支配されていた。その灰色が濃いものに変わっていくに従ってビルの斜めにあるセブンイレブンの看板の照明は鮮やかさを増していった。

 「7」はオレンジ色と赤に色分けされている。そこに緑色の文字とロゴがクレソンのように添えられている。それらが白い地を背景に浮き上がる。

 その看板を目にして、「そういえば、那須のセブンイレブンの看板は色鮮やかなものではなく白地に焦げ茶色でこれらの文字や記号達が色づけられていたな・・・」と脈絡もなく思い出した。

 皇室の保養地があるため地味な色合いに揃えられていたのである。それを目にした時、商業主義のどぎつさが改めて認識された。

 エレベータに乗って「3」のボタンを押す。ダンススクールの入口には大きなガラスがはめ込まれていて中の様子が窺える。

 例の小学生の男女が踊っていた。それ以外には初老の女性がレッスンを終えたばかりなのであろうか休憩コ―ナーで冷たい麦茶を飲んでいた。

 今晩は週に一回受けているダンスのレッスンであった。始めて4ケ月ほど経過した。進歩のリズムは極めてゆっくりである。

 「2年ほどすると姿勢が意識しなくても変わってきますよ・・・」

 「ジェニファー」は言う。年単位で見る必要があるのであろう。今はまだ、開墾を要する広大な畑地を前に鍬一本で耕し始めたところである。

 鍬一本による人力ではそれほど進まない。それでも、継続すればやがて耕されていく。土は捲れ上がり、空気を内に含む。微生物が活性化され土は徐々に豊富な養分を備蓄してゆく。種がまかれれば、それらの発芽を促す成分がゆっくりと沁み込んでいくはずである。

 脳はこの開墾により何かしら刺激を受けているのであろう。「ジェニファー」と右腰を合わせる。その接触が離れない絶妙の距離感が保てればいいのであるが、複雑なステップに差し掛かるとこともなげにその腰は離れていく。

 鍬が腕の一部になったように感じ、両手の指の付け根が太く硬くなる頃、「ジェニファー」の右腰と私の右腰は寄り添ったままワルツの調べに乗って滑るようになるのであろうか・・・
コメント

2751:dB

2013年09月26日 | ノンジャンル
 タイヤは走行距離30,000kmごとに交換している。Mercedes-Benz E-350 BLUTECは尿素を入れたタンクが荷室の下に格納されているためスペアタイヤがない。そのため、ランフラットタイヤが装着されている。

 ランフラットタイヤはパンクしてもしばらく通常の速度で走ることが出来る。側面は頑丈な材質のゴムで出来ている。もしもの時には安心であるが、乗り味は少々硬い。荒れた路面ではごつごつとした突き上げ感がある。

 車を20年以上運転していて実際にパンクを経験したのは一度だけ・・・「20年に一度のことのために・・・あえて、ランフラットでなくてもいいか・・・」というのが正直な感想である。

 ランフラットは乗り味だけでなく、価格面でもデメリットがある。前回30,000km走行時に交換した時には20万円以上のコストが必要であった。普通のタイヤよりも価格が高いのである。

 スペアタイヤがない場合、ランフラットタイヤを装着していれば車検は通る。普通のタイヤであっても、パンク修理キットが装備されていれば車検は通るようである。

 そこで、今回は普通タイヤに交換しようと思っている。自宅そばのイエローハットで見積もりしてもらった。候補は二つ。一つはMICHELIN Primacy HP。交換にかかる費用は工賃や現在のタイヤの処分費も含めて170,000円。もう一つはYOKOHAMA ADVAN dB。こちらはもう少し安く155,00O円。

 もう少しで走行距離は60,000kmに達する。

 「どちらにするかな・・・ハンドリングや乗り味などの総合力ではMICHELINであろう・・・でも静寂性ではYOKOHAMAか・・・商品目にdB(デシベル)と付いているくらいだから・・・」

 E-350 BLUETECはディーゼルらしい太いトルクと燃費の良さがセールスポント・・・どちらかというと癒し系の車である。見かけはけして癒し系ではないが・・・

 「その癒し系の車の性格からすると、dBでも良いかな・・・静寂性高そうだし・・・でもMICHELINを履いていた方が、分かってる感が高いか・・・差額は15,000円か・・・」

 そろそろ、決めなければいけない。あと数日で走行距離は60,000kmを超えそうである。
コメント