AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

4491:試聴

2018年06月30日 | ノンジャンル
 GOLDMUND MIMESIS 39Aからは、その後、ラフマニノフのビアノ協奏曲第2番の第1楽章、マーラー交響曲第5番の第1楽章、そして、ブルッフのバイオリン協奏曲第1番の第1楽章のデジタルデーターがMIMESIS 12へ送られた。

 1UサイズにまとめられたMIMESIS 12は、その控えめな躯体のわりに実に良い仕事をしているようで、OCTAVEのHP-300SEに精緻なアナログ信号を粛々と送り込んでいた。

 OCTAVEのHP-300SEとRE280 MK2は、そのアナログ信号を、デフォルメすることなくきっちりと増幅し、スピーカーを駆動するに十分な出力までもっていってから、デンマーク製のスピーカーのユニットを振動させていた。

 温度感は決して高いものではない。どちらかというと、冷静沈着と評していい質感を有していた。しかし、冷徹と評するほどに表情が乏しいわけでもない。

 つまり、最初に聴いたグレン・グールドのピアノ演奏によるゴールドベルグ変奏曲であれば、実際に聴いた1981年の録音のものではなく、1955年に録音された彼のデビュー盤の方がふさわしく、次に聴いたラフマニノフのピアノ協奏曲では、実際に聴いた第2番ではなく、第3番の第1楽章の方がふさわしく、次に聴いたマラーの交響曲第5番であれば、ブルックナーの第5番の第1楽章の方がふさわしく、そして最後に聴いたブルッフのヴァイオリン協奏曲であれば、シベリウスのヴァイオリン協奏曲の第1楽章の方がふさわしい・・・そう感じさせる音の質感であった。

 わが家のリスニングルームで聴ける音とは、当然のことであるが、方向性の異なる音である。まあ、我が家のオーディオシステムは60年前に製造されたスピーカーと真空管アンプが主たるポジションを占めているのであるから、この真新しく高性能なシステムと比べるまでもないことではあるが・・・

 一通り聴いて、このシステムの大まかな印象を脳裏に刻んだ後、ほんの少し「実験タイム」も設けられた。

 つい最近一般販売が開始されたGe3の「額縁」を導入したばかりのグールドさんは、勢いあまって、Ge3のRCAケーブルも購入したようである。

 その製品名は「銅蛇」・・・Ge3らしく怪しいネーミングである。しかし、その見た目はいたって普通のRCAケーブルである。

 それをグールドさんが持参されてきていたので、プリアンプとパワーアンプを接続しているRCAケーブルをこれに交換してみることになった。

 さきほどまで使用されていたMITのMI330 SHOTGUNを外して、「銅蛇」に差し替えた。そのうえで直前に聴いていたブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番第1楽章を再度聴いた。

 その印象は変わったか・・・やはり変わる・・・まあ、これも当然ではある。帯域バランスはどちらかというとやや高域よりにシフトした。そして、音の抜けきり感は明らかにアップした。

 MITの時はちょっと詰まった感じかしていたのかもしれない。しかし、そのことがややタメを作っていて、聴感上は耳なじみの良い穏やかさを演出していたようである。抜けの良さを取るか、タメを取るか・・・まあ、これは個人的な好みなのかもしれない。

 OCTVAEのプリアンプとパワーアンプ、さらにはRaidho Acousitcsのスピーカーは順次ヤフオクで処分される予定である。

 これらのオーディオ機器が、次なるオーナーのもとで、その本領を発揮できることを願いながら、私は「オーディオショップ・グレン」を後にした。
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4490:ヨーロッパ連合

2018年06月29日 | ノンジャンル
 GOLDMUND MIMESIS 39Aはトップローディング方式のCDトランスポートである。ブラックアクリル製のふたを上に跳ね上げてCDをセットする。

 今日、この「オーディオショップ・グレン」に集まった3名は、いずれもトップローディング方式のCDプレーヤーを使っている。

 小暮さんはMIMESIS 39A、グールドさんはKRELL CD-DSP、そして私はORACLE CD-2000である。いずれも各メーカーの主張の籠った個性的なデザインをしているが、トップローディング方式であるということは共通している。

 セットしたCDの上に小振りなスタビライザーを乗せてから、その蓋は手動で静かに閉められた。MIMESIS 39Aはフロントパネルに操作ボタンが綺麗に並んでいる。

 その一つを小暮さんは押した。最初にかかったのは、グレン・グールドのピアノによるバッハのゴールドベルグ変奏曲である。

 グールドさんの愛聴盤である。グレン・グールドは、1955年そのデビュー盤としてこの曲を録音し、翌1956年に発売している。さらに彼が50歳で亡くなる前年に当たる1981年にも、この曲を録音している。

 彼にとって、この曲は特別な存在であり、どちらの盤も名盤として名高い。23歳の時の演奏であるデビュー盤と、彼にとっては晩年となる49歳の時の録音では、その醸し出す雰囲気はまったく異なっている。

 一般的には1981年の録音のものが広く知られている。そこにはグレン・グールドのみがなしえる孤高の演奏が記録されていて、記念碑的な存在となっている。

 MIMESIS 39Aにセットされたのも、この1981年に録音されたものである。グールドさんが持参されたCDである。再発盤ではなく、発売当初のものである。

 CDが初めて世に出された時代のCDであり、コレクターズアイテム的な存在である。CDもレコード同様、オリジナルと再発では音が随分と違う。

 このCDは人気が高いので、繰り返しリマスタリングされて再発された。SACDも出されたし、非常に高価なガラスCDも出された。

 グールドさんは、そのハンドルネームが示す通り、グレン・グールドの大ファンである。この1981年録音のゴールドベルグ変奏曲だけで5枚のCDをお持ちである。(その中には高価なガラスCDも含まれている。)「でも、やっぱり録音の翌年である1982年に発売されたオリジナルのCDが一番しっくりときますね・・・」と話されていた。

 このCDからは一切の束縛から解放されたかのような彼独自の音世界が展開する。テンポは極端にデフォルメされ、時には異様なまでに遅くなったり、速くなったりするが、それが不思議と耳に馴染む。体に無理なく浸透していくので、拒絶反応は起きない。

 ゴールドベルク変奏曲は全部で30曲ある。そのうちの10曲まで聴き進んで、小暮さんはリモコンのストップボタンを押した。

 グールドさんは、KREL CD-DSPを送り出しとして、KRELLのプリアンプとパワーアンプで、WILSON AUDIOのCUB(オリジナル)を鳴らされている。CDのみでアナログはされていない。

 GOLDMUND、OCTAVE、そしてRaidho Acousiticsという組み合わせで聴いたゴールドベルグ変奏曲はどのように心に響いたのであろうか・・・

 「OCTAVEは真空管のアンプと聞いていたので、もう少し暖色系かと思いましたが、結構硬質というか、カチッとしたしっかり感のある音でしたね・・・総体として良い印象です。このスピーカーなかなかの実力ですね・・・」

 グールドさんはそう評された。確かに、私も同じような印象を持った。スイス、ドイツ、デンマークというヨーロッパの国々のオーディオ機器によって構成されたシステムは、なかなか実力が高い。
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4489:Ayra C-2

2018年06月28日 | ノンジャンル
 「Mimizuku」のコーヒーの代金420円をぴったり支払ってから店を出た。朝のうちの雨はすっかりと止んでいた。空には雲がまだ残っていたが、その隙間から太陽が顔を覗かせていた。

 ビルの脇にある階段を登った。このビルは1フロア1部屋の構成である。2階は「光通商」と会社名らしきものが書かれた白く小さなプレートが扉に貼り付けてある。しかし、一度も人の出入りを見かけたことはない。

 3階は随分と前から空いているようで、扉には何の表札も掲げられていなかった。階段の登り口にある集合ポストにも3階のポストには何の記載もなく、ポスティングされた広告のみが乱雑に入っていた。

 4階まで登ってくると息が切れた。4階の扉には「オーディオショップ・グレン」と書かれた横長の看板が掲げられている。

 呼び鈴がないので、金属製の扉を右手の人差し指の背でノックした。「ゴン・・・ゴン・・・ゴン」鈍い音が響いた。

 「どうぞ・・・」オーナーの声が聞こえた。扉を開けて、中に入った。リスニングポイントに置かれている3人掛けソファには、先客が来ていた。

 グールドさんである。グールドさんと小暮さんに挨拶して、私もそのソファに腰かけた。リスニングポイントから見て右側にある横長のオーディオラックには、先日搬出を手伝ったOCTAVEのプリアンプとパワーアンプの姿があった。

 そしていつもはOLD TANNOYなどのヴィンテージ・スピーカーが据えられている場所には、Raidho AcousitcsのAyra C-2がすらっとした姿で立っていた。

 その姿は、実にモダンでいて、どこかしら北欧的な静謐感も有している。Ayra C-2には、平面型リボントゥイーターとセラミックスドライバーが採用されている。

 そのユニットからは爽やかな音がしそうな予感が溢れている。2.5ウェイ・フロアスタンド型のスピーカーは目に馴染む造形をしていた。

 オーディオラックには、小暮さんが普段自宅で使っているGOLDMUNDのMIMESIS 39AとそのペアとなるGOLDMUND MIMESIS12も置かれていた。

 この時代のGOLDMUNDはいかにもSWISS MADEらしいきりっとした端正な表情をしている。その質感は、Ayra C-2と共通なものを感じさせてくれる。  
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4488:CF-1480

2018年06月27日 | ノンジャンル
 コーヒーを飲み終えたが、まだ2時にはもう少し時間があった。カウンター席に座ったまま、何をすることもなく、SONY製のラジカセから小さめの音量で響く「ケルン・コンサート」を聴き続けた。

 そして、カウンターに裏返しにしていたスマホを手に取った。「ヤフオク」のアプリを起動した。そしてSONY製の昔懐かしいラジカセを何気に検索した。

 実は私はSONY製の古いラジカセを1台所有している。2年ほど前に専門店でしっかりとメンテナンスされたものを購入したのである。

 なので、あらためて購入する必要性はないのであるが、ちょっとしたコレクター目線で、スマホの小さな画面に表示されるものを眺めて、時間をつぶすことにしたのである。

 「SONY ラジカセ」と入力して検索した。すると1970年年代のものや1980年代のもの、さらに最近のものも含めて様々なSONY製のラジカセが表示された。

 そのなかで目についたのが、1974年に発売されたCF-1900であった。1970年代の古いものはやはりそのほとんどがジャンク扱いであり、製品の状態が良くないものが多い。

 しかし、目についたCF-1900は、「商品のボディにキズヨゴレの無い非常に美しい状態の美品です。」と紹介されていた。

 さらに「ロッドアンテナ折れ無く真っ直ぐ伸びます。バッテリーのチューニング(ライト)動作確認済みです。テープ再生、早送り、巻き戻し、テープ録音、動作確認済みです。ラジオFM/AM受信動作確認済み、受信良好です。」と続いていた。

 きっとコレクターが保存していたものであろう。CF-1900は、非常にコンパクトな躯体であるが、そのデザインはスイッチ類の配置なども含めて、極めて合理的で、引き締まった良い表情をしている。

 「これは良い状態だな・・・」と思った。価格は34,800円。他のものよりも明らかに高い値付けである。

 2年前に購入したSONY製のラジカセは現在事務所に置いてある。BGMとしてFM放送を流しているのであるが、「その横にもう1台置いて、気分で使い分けるのもいいかな・・・」と妄想した。

 さらにスマホの画像を次々に見ていくとCF-1480もあった。写真を見る限り状態は良いようであったが、「ジャンク扱い」となっていた。

 CF1480の特徴は丸いダイヤルスケール。同調するとLEDが光るギミックも使う楽しさを演出している。ダイヤルスケールは一般的には長方形で直線基調であるが、この丸いデザインは目を引く。



 価格は8,000円。「ジャンク扱い」となると価格はぐっと下がる。こういった古いものを修理してくれる専門店はまだあるようである。

 フルメンテナンスするとなると2~3万円ほどのプライスにはなるようである。写真で見て、良い状態のものであれば、「ジャンク扱い」のものを安く購入して、メンテンナンスを受けるという選択肢もある。

 スマホを見始めると、時間は現代の流れに変わり、その経過スピードが速くなったようで、気付くと時刻は2時になっていた。 
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4487:ケルン・コンサート

2018年06月26日 | ノンジャンル
 カセットテープのクリーニング部分が過ぎ去って、「ケルン・コンサート」の冒頭、印象的なフレーズが響いた。

 この歴史的な名盤が録音された日のキース・ジャレットの体調は最悪だったようである。前日の夜にソロコンサートをローザンヌで終え、朝早くにケルンへ車で移動した。その移動に要した時間は6時間ほど。

 ほとんど寝ていない状態での長時間の移動で、体は相当に疲弊していたはず。さらに会場に用意されていたピアノの状態も良いものではなかった。

 その状態は、「ずいぶん前から調律されておらず、ハープシコードのきわめてまずいコピーか、ピアノの中に留め金でも入っているみたいな音がした」・・・そうである。

 24時間ほとんど寝ていない状態・・・満足のいく調律がなされていないピアノ・・・そんな状況で臨んだコンサートで、伝説的な名演が生まれた。

 SONY製のラジカセは、製造されてから40年以上の年月が経過している。何度かの修理を経ているようであるが、いまだに現役で活躍している。その姿は実に頼もしく感じられた。70年代のSONYのデザインはやはり優れている。今見ても決して古びた感じがしない。

 「ケルン・コンサート」が小さめの音量で始まって少しすると、私のコーヒーがカウンターに置かれた。白いカップに注がれた黒い液体の表面は周囲の光を吸い込んでいるかのように静かであった。

 女主人と会話することは、ほとんどない。女主人は作業を終えると、いつも座る椅子に座って本を読み始めた。

 この小さな空間に3人の人間がいて、時間を共有していたが、それぞれ交わりがほとんどなく、「ケルン・コンサート」の音のみが響いていた。静寂と測りあえるほどに、その音楽は精妙であった。

 今日はこの後、この同じビルの4階にある「オーディオショップ・グレン」に向かう予定であった。「2時ごろに店にお伺いします・・・」と午前中に連絡した。

 国立にお住いのグールドさんも店に来られる予定であった。実は先日「寧々ちゃん」の家から運び出された彼女の夫が愛用していたオーディオ機器のうち、スピーカーとアンプが「オーディオショップ・グレン」に展示されていて、試聴会をしてみることになったのである。

 レコードプレーヤーであるOracle Delphi5とフィニッテ・エレメントのオーディオラックは既にヤフオクで売却されたようである。

 「新しいものだから、CDが良いかなと思ってね、自宅からGOLDMUNDのCDトランスポートとDAコンバーターを持ってきているんだ・・・」と小暮さんは話していた。

 ということは、デジタルはGOLDMUNDのペアで、アンプがOCTAVEのペア、そしてスピーカーがRaidoh Acousitcsのものという組み合わせとなる。ヴィンテージオーディオを扱う「オーディオショップ・グレン」では滅多に聴くことのできない組み合わせである。
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