AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

3026:バウハウス

2014年06月30日 | ノンジャンル
 結局、2台のAudiに試乗したのち、この日は待ち合わせに利用している食品スーパーの屋上駐車場へ向かった。時間は3時になろうとしていた。私は夕方から所用があったため、今日はゆっくりとはできなかったのである。

 「どうだった・・・Adui・・・」

 「良い感じだとは思ったけど、決定打という感じでもないかな・・・品質的にはやはり優秀って感じ・・・隙がない。」

 「隙がないか・・・確かにそういった感じかも。びしっとした工業製品っていう雰囲気かな・・・エモーショナルなものも取り込もうとはしているけど、その底辺には冷徹さというかとてもクールなものがあるよね。いつもバウハウス・デザインのことを思い起こすんだけど、ドイツ車ってあの精神が根底にあるような気がする。」

 「その辺がAlfa Romeoとは根本的に違うのかも・・・これこれって強く胸に訴えかけるものがないような気がして・・・」

 「まあ、最近はグローバル化が合言葉のような感じだから、そういった個性は互いに薄れてきてはいるのかもしれないけど、でもやっぱり違うよね・・・」

 VW POLOはするすると屋上駐車場へ向かうスロープを上がっていった。そのスロープの角度なりに視線が空を向いた。空には黒い雲がかかっていた。

 「また今日も急な雨が降り出すのであろうか・・・先日のように雷鳴を伴って・・・」

 とっさにそう感じた。その黒い雲は私の心にも覆いかぶさるかのように空に広がっていた。

 「最近耳の調子が悪くて・・・音がすんなりと聞こえないんだ・・・」

 「耳が遠くなる年齢ではまだないでしょう・・・」

 「ちょっと早いよね・・・目の方はもう老眼がはじまっていて、そっちは年齢相当という感じだけど・・・」

 「なんだか、またざっときそうな感じね・・・」

 「これはきっとくるよ・・・」

 POLOをMitoが停まっているすぐ横に停めた。

 「また、メールするね・・・」

 「待ってる・・・」

  そう言って彼女は車を降りて自分の車の運転席へ移った。乗りこんでエンジンをかけた。威勢のいいエンジン音が唸った。ウィンドウを下げて軽く手を振った。かすかな笑顔であった。

 コメダ珈琲で食べた味噌カツサンドの味わいが喉元にまだ残っている感じであった。「あれはボリュームがありすぎだよな・・・」そんなことをふっと思った。

 Mitoはスロープの手前でブレーキランプを赤く光らせてから曲がり、下っていった。それを見届けてから、POLOのサイドブレーキを解除してATレバーを「D」に入れた。遠くの方で一瞬光った。雷鳴は聞こえてこなかった。
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3925:A3 SEDAN

2014年06月29日 | ノンジャンル
 A1の試乗を終えて、Audiのディーラーに戻った。A1を駐車場に停め、建物内に入っていった。接客用のテーブルに座って、簡単なアンケート用紙に必要事項を記入した。

 建物のなかには数台のAudi車が展示されていた。私がアンケート用紙に記入している間、彼女はその展示車を見て回っていた。

 そして戻ってきてそっと耳打ちした。

 「あのA3 SEDANって試乗できないのかしら・・・」

 営業マンに確認すると、試乗車があるとのことである。

 「試乗されますか?」

 「いいのですか・・・」

 「ええ、今日は平日ですから、試乗のお客様それほど多くないのです・・・大丈夫ですよ。A3 SEDANはこちらが予想していた以上に売れているんです。日本ではセダン需要は落ち込んでいましたからね・・・」

 日本ではセダンに対する需要はずっと低迷している。ファミリーカーとしての役割は日本ではセダンからミニバンへ完全に移行してしまっている。

 しかし、子育てが終わり、大きなクルマや多人数が乗れるモデルの必要性が無くなった世代にとっては、プレミアムコンパクトセダンは魅力的に映るに違いない。潜在的な重要はしっかりとあったのである。

 日本におけるかつてのセダンはどちらかいうと万人受けする大人しいデザインが多かったが、プレミアムコンパクトセダンにおいては、積極的に選ばれるアグレッシブなデザインが採用される。

 その代表格の一つがAudi A3 SEDANである。用意された試乗車は、1.8LTFSIエンジンを搭載するクワトロでA3 SEDANのトップグレードであった。色は赤。

 インテリアはA1と同様なデザインテイストでプレミアム性を充分に感じさせる。メタルの使い方と直接手で触れる場所の処理が上手いのだろう、上質な質感が気分を落ち着かせてくれる。表面だけの豪華さではない大人の高級感を感じることができる。

 彼女が運転する際に後席にも座ったが、A1と違い頭部周辺の余裕もしっかりある。サイドから見たラインは、やはりセダンらしい伸びやかさに溢れている。クーペを思わせるようなルーフラインは見ていて目に心地よい。

 エンジンは充分にパワフルである。TFSIらしくエンジン回転が低くくてもトルクが力強い。スペックとしては特に尖ったモデルではないが、1.5tを切る車重が効いているのか、体感上の印象はしっかりとスポーティーである。

 VW GOLFよりも足回りもシートもやや硬め。味付けにもブランドイメージどおりの調味料が使われているようである。

 明らかにA1よりもロードノイズやエンジン音が低く抑えられいて、静粛性のレベルが高く、高級感を感じさせる。

 ハンドリングも正確で気持ちいい。従前Audiのハンドリングは軽すぎるという印象を持つことがあったが、最近その味付けも少し修正が加わったようである。

 試乗車は1.8LTFSIのエンジンを積みクワトロである。エントリーモデルは1.4LTFSIのエンジンを搭載しFFである。そのエントリーモデルの価格は334万円。301万円のA1とそれほど変わらないプライスである。

 「これなら、A3の方が良いかも・・・」

 彼女はふっと洩らす。助手席に座った営業マンはしたり顔で微笑んでいた。

 「確かに・・・これは良い・・・」

 彼女の言葉に頷く。A3にもスポーツバックと呼ばれる5ドアハッチバクもあるが、このA3 SEDAN、想像以上に良くできた車である。


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3024:A1

2014年06月28日 | ノンジャンル
 コメダ東村山店を出て駐車場に向かった。停めてあったVW POLOに二人は乗りこんだ。VW POLOは購入からもうすぐで3年を迎える。来月には1回目の車検である。極めて清廉で無駄のないデザインは飽きのこないものである。

 「ドアの閉まる音が違うね・・・やっぱりドイツ製って感じ・・・」

 「寧々ちゃん」はぼそっと呟いた。二人はVW POLOに乗って、アウディ西東京に向かった。「寧々ちゃん」はあまり乗り気ではなかったが、Audi A1 Sportsbackの試乗をする予定であった。

 Audi A1はプラットフォームをVW POLOと同じくするが、その立ち位置は大きく異なる。A1は「プレミアムコンパクト」という一種独特な分類に属する。同じ分類に属するのはMINIやMitoなどである。

 プレミアムらしさを醸し出す演出は周到に行われている。ツートーンに色分けできるエクステリアデザインはAudiの最新文法に則っていて、斬新かつクールである。

 インテリアにも凝った造形が見られる。エアコンの吹き出し口は円形をしていてスポーティーな印象を受ける。ポップアップ式のNAVIのディスプレイもスマートである。



 Audi西東京の建物は清潔である。Audiのブランドイメージどおりの造形と色合いにまとめられている。すぐ隣には先日行ったルノーのディーラーがある。

 Audi A1の試乗を申し込んで、しばらく椅子に座って待った。営業マンの男性がやってきて、「どうぞこちらです・・・」と案内をした。

 「VW POLOからの乗り換えを検討されているのですか・・・」

 「ええ、まだ決めたわけではないのですが・・・車検が近付いてきたので、ちょっと考えてみようかなっと思いまして・・・」

 「A1はPOLOと比べると、エンジンがまず1.4Lターボになっていますのでパワーに余裕があります。VW GOLFに搭載されているエンジンと同じものです。後はデザインですね・・・ツートンカラーや凝った造形などにAudiらしい特徴見られます。ボディサイズはPOLOとほとんど変わりませんので取り回しは良いです。」

 営業マンはそつのないやり取りで試乗コースを案内した。途中でドライバー交代をした。彼女も運転した。

 平日であったので、試乗時間はゆったりとしたものであった。30分ほど乗ったであろうか。試乗車の色は赤。ピラーとルーフの色は黒であった。「赤と黒」でなかなかお洒落である。



 足回りやシートはPOLOよりも硬めに感じられた。室内はあまり広くはない。特にリアに座った時には少し窮屈感がある。そのへんはデザイン優先の弊害があるのかもしれない。

 パワーには余裕がありハンドリングもしっかり感がある。アイドリングストップに関しても思ったよりもスムーズなものである。シートの出来も優秀。

 インパネ周りの質感もAudi品質を感じさせる。ちょっとやんちゃな感じを受けるフロントデザインに関しては好き嫌いが分かれると思われるが、良くできた車である。
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3023:メガーヌ

2014年06月27日 | ノンジャンル
 「コメダ珈琲」東村山店の店内はお昼時で混みあっていた。彼女は山切りパンを使ったサンドイッチを私はカツサンドを頼んだ。

 木を多用した店内はメルヘンチックな雰囲気である。椅子は柔らかめのソファー椅子であり、居心地はとても良い。年齢層に関係なく人気のこの店は、名古屋発祥である。チェーン展開・FC展開を最近積極的にしているようで、東京でもあちらこちらで見かけるようになった。

 東村山店は比較的古いので東京では早めにできたお店なのかもしれない。ここの珈琲は充分に美味しい。私は特に珈琲の味わいにこだわりを持っているわけではないが、その味わいは充分に練られ吟味されたものであることが分かる。

 食事しながら車の話になった。彼女の現在の愛車アルファ・ロメオ Mitoはそろそろ買い替え時を迎えている。しかし、これっといった候補が具体的には上がっていなかった。

 先日ルノーのディーラーに行ってルーテシアを試乗した。今一つの印象のようであった。彼女はルノーに以前乗っていた。それが先代のメガーヌであった。



 先代のメガーヌはフロントは比較的オーソドックスな造形であったが、リアのデザインは違和感満載であった。

 Cピラーとリアのガラスはほぼ垂直に切り立っていて、そこからリアバンパー部分へ向けて曲線が丸く連なっている。

 一筋縄では完結しないフレンチデザインの妙がそこに集約されていた。彼女もそのデザインが印象的で気にいったようである。

 「変でしょう・・・あの後ろ姿・・・ほんとに初めて見た時は笑っちゃった。でも、なんだか気になるっていうか、かわいいっていうか・・・色は鮮やかな青にした。バンパーにはグレーの太めのプロテクターが付いていて、全体として牧歌的な雰囲気が漂っていて、良い感じだった。」

 ルノーのデザインは最近大きく変わった。押し出しの強くなったフロンデザインはかなり派手目ではある。

 メガーヌもフェイスリフトを受けた。先代のメガーヌとは大きくその顔つきは変わった。どうもその変貌ぶりは「寧々ちゃん」には快く受け入れられなかったようである。


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3022:短編集

2014年06月26日 | ノンジャンル
 家に帰りついた。耳の具合が変であった。聞こえないわけではないが、一枚の膜のようなものを介して音が認識されるようなのである。

 強力な轟音の振動は私の鼓膜をいたく傷つけたのかもしない。膜を通過して脳内の聴覚中枢に達するので、少々音がぼんやりとする。

 数日で回復するとは思われるが、長引くようならば、一度病院で検査する必要があるのかもしれない。

 そんな耳の状態では音楽を聴いてもその豊かな表情を充分に摂取することは難しかもしれない。そんなことを思いながら、リスニングルームのイージーチェアに腰掛けた。

 腰かけた瞬間、右耳の鼓膜に「キ~ン」と響く音が鳴り始めた。耳鳴りである。その音はしばらく続いた。特に音量も音程も変わることなく、一定の音である。

 その耳鳴りは3分ほどで止んだ。耳鳴りが止んだのを確認してから、椅子から立ちあがり、真空管アンプの電源をONにした。数本並んだLEAK TL-1Oの真空管が淡くオレンジり色に輝き始めた。

 真空管アンプの場合、立ち上がりの音はとても褒められたものではない。最低でも1時間ほど経過しないと、その本来の音色を発してくれない。

 その待っている時間は、本を読んだり、一旦リビングルームへ移動してテレビを観たり、固定式ローラ台に設置されているロードバイクを漕いだりする。

 私は本を取り出した。ヘミングウェイの短編集である。幾つかの短編を読み終えた。スペインを舞台としたそれらの短編はひと時異国の風景と気温と空気の中に私を連れて行ってくれた。

 どのくらいの時間が経過したのか腕時計を確認した。アメリカ製のこの時計は正確性はいま一つである。頑丈であるのが唯一のとりえであるかと思われるその時計は、この座り心地の良い椅子に座ってから45分ほどの時間が経過したことを示していた。

 私は立ちあがって1枚のレコードを取り出した。Joan Fieldの演奏によるドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲である。

 立ち上がりはいま一つの感じである。徐々に音に滑らかさと余韻が加わってくる。耳の具合は、相変わらず鼓膜の振動が滑らかさを欠くせいか、いつもとは異なって聴こえる。

 「これは、もしかして・・・鼓膜の傷は固定化され、消え去ることはないのであろうか・・・」

 曲は第二楽章に入った。私はレコード針を一旦レコードから上げて、アームをアームレストに戻した。アンプの電源をOFFにして、椅子に腰かけた。

 サイドテーブルに伏せて置かれていたヘミングウェイの短編集を取り上げて、続きを読み始めた。海辺のシーンから始まる短編である。風景はふっと移ろっていった。
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