結局、2台のAudiに試乗したのち、この日は待ち合わせに利用している食品スーパーの屋上駐車場へ向かった。時間は3時になろうとしていた。私は夕方から所用があったため、今日はゆっくりとはできなかったのである。
「どうだった・・・Adui・・・」
「良い感じだとは思ったけど、決定打という感じでもないかな・・・品質的にはやはり優秀って感じ・・・隙がない。」
「隙がないか・・・確かにそういった感じかも。びしっとした工業製品っていう雰囲気かな・・・エモーショナルなものも取り込もうとはしているけど、その底辺には冷徹さというかとてもクールなものがあるよね。いつもバウハウス・デザインのことを思い起こすんだけど、ドイツ車ってあの精神が根底にあるような気がする。」
「その辺がAlfa Romeoとは根本的に違うのかも・・・これこれって強く胸に訴えかけるものがないような気がして・・・」
「まあ、最近はグローバル化が合言葉のような感じだから、そういった個性は互いに薄れてきてはいるのかもしれないけど、でもやっぱり違うよね・・・」
VW POLOはするすると屋上駐車場へ向かうスロープを上がっていった。そのスロープの角度なりに視線が空を向いた。空には黒い雲がかかっていた。
「また今日も急な雨が降り出すのであろうか・・・先日のように雷鳴を伴って・・・」
とっさにそう感じた。その黒い雲は私の心にも覆いかぶさるかのように空に広がっていた。
「最近耳の調子が悪くて・・・音がすんなりと聞こえないんだ・・・」
「耳が遠くなる年齢ではまだないでしょう・・・」
「ちょっと早いよね・・・目の方はもう老眼がはじまっていて、そっちは年齢相当という感じだけど・・・」
「なんだか、またざっときそうな感じね・・・」
「これはきっとくるよ・・・」
POLOをMitoが停まっているすぐ横に停めた。
「また、メールするね・・・」
「待ってる・・・」
そう言って彼女は車を降りて自分の車の運転席へ移った。乗りこんでエンジンをかけた。威勢のいいエンジン音が唸った。ウィンドウを下げて軽く手を振った。かすかな笑顔であった。
コメダ珈琲で食べた味噌カツサンドの味わいが喉元にまだ残っている感じであった。「あれはボリュームがありすぎだよな・・・」そんなことをふっと思った。
Mitoはスロープの手前でブレーキランプを赤く光らせてから曲がり、下っていった。それを見届けてから、POLOのサイドブレーキを解除してATレバーを「D」に入れた。遠くの方で一瞬光った。雷鳴は聞こえてこなかった。
「どうだった・・・Adui・・・」
「良い感じだとは思ったけど、決定打という感じでもないかな・・・品質的にはやはり優秀って感じ・・・隙がない。」
「隙がないか・・・確かにそういった感じかも。びしっとした工業製品っていう雰囲気かな・・・エモーショナルなものも取り込もうとはしているけど、その底辺には冷徹さというかとてもクールなものがあるよね。いつもバウハウス・デザインのことを思い起こすんだけど、ドイツ車ってあの精神が根底にあるような気がする。」
「その辺がAlfa Romeoとは根本的に違うのかも・・・これこれって強く胸に訴えかけるものがないような気がして・・・」
「まあ、最近はグローバル化が合言葉のような感じだから、そういった個性は互いに薄れてきてはいるのかもしれないけど、でもやっぱり違うよね・・・」
VW POLOはするすると屋上駐車場へ向かうスロープを上がっていった。そのスロープの角度なりに視線が空を向いた。空には黒い雲がかかっていた。
「また今日も急な雨が降り出すのであろうか・・・先日のように雷鳴を伴って・・・」
とっさにそう感じた。その黒い雲は私の心にも覆いかぶさるかのように空に広がっていた。
「最近耳の調子が悪くて・・・音がすんなりと聞こえないんだ・・・」
「耳が遠くなる年齢ではまだないでしょう・・・」
「ちょっと早いよね・・・目の方はもう老眼がはじまっていて、そっちは年齢相当という感じだけど・・・」
「なんだか、またざっときそうな感じね・・・」
「これはきっとくるよ・・・」
POLOをMitoが停まっているすぐ横に停めた。
「また、メールするね・・・」
「待ってる・・・」
そう言って彼女は車を降りて自分の車の運転席へ移った。乗りこんでエンジンをかけた。威勢のいいエンジン音が唸った。ウィンドウを下げて軽く手を振った。かすかな笑顔であった。
コメダ珈琲で食べた味噌カツサンドの味わいが喉元にまだ残っている感じであった。「あれはボリュームがありすぎだよな・・・」そんなことをふっと思った。
Mitoはスロープの手前でブレーキランプを赤く光らせてから曲がり、下っていった。それを見届けてから、POLOのサイドブレーキを解除してATレバーを「D」に入れた。遠くの方で一瞬光った。雷鳴は聞こえてこなかった。