AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

5448:無駄の堆積

2021年01月31日 | ノンジャンル
 AurexのCDプレーヤ1号機であるXR-Z90に一枚のCDがセットされた。セットされたのは、DANIEL LOZAKOVICHのヴァイオリンによるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が収録されたものであった。

 2019年、まだ世界がコロナ禍に見舞われる前の録音である。DANIEL LOZAKOVICHは2001年スウェーデンに生まれた。

 極めて優れた才能を有するヴァイオリニストで、その演奏についてボストン・グローブ紙は「落ち着いた物腰、澄みきった音色、みごとな技巧」と賛辞をおくっている。

 第1楽章を聴いた。Aurex XR-Z90、OPTONICA SM-3000 MK2、OTTO SX-551というシンプルな構成であるPaoさんのサブシステムの音の質感は、予想していたものよりも艶のあるバランスの良いものであった。

 もちろんPaoさんのメインシステムと比べると見劣りする点が多いのは事実であるが、かかっているコストを考慮すると、「相当に検討している・・・」と評価できるものと思われた。

 このシステムだけを聴いている分には「これはこれでいいのでは・・・」と思えるクオリティーを有していた。

 肩ひじ張らずに、穏やかな心情で聴ける音の質感で、圧迫感のない、軽やかな美しい音質に「そんなに悪くないですよ・・・十分に聴けます・・・」その評価をPaoさんに伝えた。

 「そう・・・そう思う・・・まあ、ハイファイとはちょっと違うけど、それほど悪くないかな・・・」とまんざらでもない表情であった。

 気を良くしたのか、続いてもう1枚別のCDを取り出して、CDを入れ替えた。Aurex XR-Z90はカセットデッキにカセットテープを入れるようにCDを縦にセットする。

 XR-Z90には小窓がついていて、その窓からCDが回転するさまを目で見ることができる。今見ると結構斬新でかっこいいデザインと言えるであろう。



 次にかかったのは、EDGAR MOREAUのチェロによるヴィヴァルディのチェロ協奏曲であった。彼も若い。

 EDGAR MOREAUは1994年のパリ生まれである。2009年のロストロポーヴィチ国際チェロコンクールにおいて「最も将来性のある若手奏家」賞を受賞し、さらに2011年のチャイコフスキー国際コンクールで第2位となった。

 鮮度感溢れる演奏である。「やはり若いって良いな・・・」と、なくしてしまったものを惜しむような気持になった。

 「サブシステムか・・・まあ、趣味の世界は効率だけでは割り切れない世界である。物欲の沼にはまり込んでしまう危険性もあるが、趣味というものは無駄の堆積であってもいいのかもしれない・・・」とPaoさんのサブシステムを聴きながらぼんやりと思った。
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5447:SX-551

2021年01月31日 | ノンジャンル


 「今は無き三洋電機はかってOTTO(オットー)というブランド名でオーディオ機器を生産・販売していたんだ。そのOTTOから1976年に発売されたのが、このSX-551なんだ・・・」

 「このスピーカーは、かなり気合が入っていてね・・・まずユニットが良い・・・低域用のは25cmコーン型ウーファーの振動板は西ドイツのクルトミューラー社にオーダーしたもので、北欧産の針葉樹パルプ紙を柔らかく厚手に抄造したものを採用しているんだ。かなりコストがかかっている。」

 「中域用の3.9cmソフトドーム型スコーカーの振動板も、その素材には動物性ファイバーと植物性ファイバーを混紡して織り上げたものが使われてたり、高域用の2.7cmソフトドーム型ツィーターも当時としてはかなり手の込んだもので、開発担当者の強い思い入れが感じられる。」

 「さらにキャビネットの突板として用いられているのは西アフリカ原産のブビンガ材で、これが実に良い発色なんだよね。木目の美しいその明るめの色合いはとても日本製とは思えないようなオーラを放っていたんだ。」

 Paoさんは片方のスピーカーのサランネットを取り外してユニットを見せてくれた。三つのユニットがきれいに配置されていて、アッテネータも装着されていた。

 「実はこのスピーカー、我が家に来たと時にはひどい状態でね・・・ネットワークとユニットは取り外して、オーバーホールしてもらい、キャビネットも補修のために専門の業者に送って、今の状態に仕上げてもらったんだ・・・」

 「そのためのコストは結構かかったけど、しっかりとメンテナンスしたから、見た目も良くなったし、今後10年間はトラブルもないはず・・・」

 Paoさんは、このスピーカーに結構な思い入れがあったのであろう。コンディションが悪かったものをヤフオクで落札して、かなりのコストをかけて復活させたようである。

 「このOTTO(オットー)というブランド名、もしかしたら音(おと)から来ているんでしょうか?」

 私は思いついてそう言うと「そうかもね・・・きっと語呂合わせという面もあっただろうね・・・このロゴもかっこいいよね・・・」

 Paoさんは一旦外したサランネットを元に戻しながら、そのサランネットの右上についている「OTTO」と記されたブランドロゴを愛でるように眺めていた。

 AurexのCDプレーヤー、OPTONICAのプリメインアンプ、そしてOTTOの3ウェイスピーカーというシンプルな構成が、Paoさんのセカンドシステムであった。それが6畳ほどの広さの部屋に綺麗にセットされていた。

 「聴いてみる・・・まあ、音の方は期待しないでね・・・こっちは音度外視だから・・・」そう言いながら、サイドテーブルの上に置かれた数枚のCDのなかから1枚を取り出した。
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5446:OPTONICA

2021年01月30日 | ノンジャンル


 「まずはこのプリメインアンプ・・・見たことないでしょう・・・これはOPTONICAのSM-3000 MK2・・・」

 「OPT0NICAって知ってる・・・?」

 「聞いたこともありません・・・日本のメーカーなんですか・・・?」

 「もちろん・・・日本製・・・実はシャープが昔々オーディオブランドを持っていたんだけど・・・それがOPTONICA・・・そのOPTONICAブランドで1974年に出したのがSM-3000。その翌年に出たのがSM-3000 MK2なんだ・・・」

 「良い面構えしてるでしょう・・・これ・・・まさにMADE IN JAPANの真心が形になっているよね・・・実に良いな・・・」

 「このずらっと等間隔に並んだスイッチやノブの整然としたさま・・・フロントフェイスにおけるこれらの配置の素晴らしさ・・・眺めてるだけでもご飯が二杯はいけるって感じだよ・・・」

 Paoさんは、そう言って見たことも聞いたこともない日本製の古いプリメインアンプを紹介してくれた。

 「OPTONICAですか・・・しかし、また狭いところ突いてきますね・・・誰も知らないででしょう・・・そんなブランド・・・」

 「まあ、まあ・・・CDプレーヤーも結構レアだよ・・Aurexは知ってる・・・?」

 「Aurexは知ってますよ・・・確か東芝ですよね・・・東芝のオーディオブランドだったはず・・・」
 
 「正解・・・!オーディオブランドとしてはやはり『日陰組』に属するブランドだけど、OPTONICAよりはまだまし・・・という存在かも・・・でもやはりさすが東芝だけに、時折これはっと思わせる良い製品を出してるんだよね・・・」

 「このCDプレーヤーはAurex XR-Z90。1982年に発売されたAurexのCDプレーヤー1号機なんだ・・・なんとその当時の定価は225,000円もした。」

 「AurexのCDプレーヤーの1号機ですか・・・今見ると実に斬新ですね・・・このCDを縦に入れるのが、実に新鮮です・・・」
 
 「まだ、CDプレーヤーのデザインが固まる前だったからね・・・その後日本製のCDプレーヤーはほとんどのものがトレイ方式になっていくけど、CDプレーヤー黎明期にはいろんなものがあって、この縦にCDをセットするフロントローディング機構を採用したメーカーも結構あったんだ。」



 Paoさんのセカンドシステムは、御本人が「珍品」と評する通りに珍しいもので構成されていた。

 AurexのCDプレーヤ1号機であるXR-Z90に、シャープの古のオーディブランドであるOPTONICAから1975年に発売されたSM-3000 MK2という型番のプリメインアンプというシンプルな構成で駆動系が構成されていた。

 そして、セカンドシステムの要となるスピーカーもやはり古いものであった。そして、駆動系同様見たことのないものであった。

 美しい突板に覆われたスピーカーのフロントには薄茶色の良い色合いのサランネットが取り付けられていて、ユニットは見ることができない。そのサランネットには小さなブランドバッジが右上に取り付けられていた。

 その小さなブランドバッジにはアルファベットが四つ並んでいた。「OTTO」と見て取れた。今見ると絵文字のようにも見える。
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5445:甘泉園公園

2021年01月29日 | ノンジャンル
 最近の気候はまさに日替わりである。小春日和かと思わせておいて、翌日には真冬に逆戻りということが何度も繰り返されている。

 今日は3月下旬並み暖かさである。しかし明日の天気予報は最高気温が6度ほどで今日よりも9度ほど下がるとのことである。さらに夕方には雪が降るという、今日の気候からすると想像もつかない急展開である。

 暖かい空気のなか、車を走らせた。新青梅街道を延々と走ってゆき、何度か交差点を曲がると、道は新目白通りに入った。

 新目白通り沿いのコインパーキングに車を停めた。道は思いのほか空いていた。やはり緊急事態宣言の影響であろうか。

 都電 荒川線の「面影橋」駅近くのコインパーキングから、Paoさんのお宅まで徒歩で数分である。

 予定していた時間よりも早く着きすぎたので、その途中にある新宿区立 甘泉園公園に立ち寄ってみることにした。

 甘泉園公園はメインが回遊式庭園で、その脇には遊具を備えた児童公園とテニスコートが併設されている。

 一旦中に入ってしまうとここが新宿区とは思えないようなのどかな景色と空気感に包まれる。

 「甘泉園」の名は、ここから湧く泉の水がお茶に適していたところからきたと言われている。池を抱く日本庭園が周辺とは別世界の静けさを演出ている。

 Paoさんのご自宅はこの甘泉園公園に面している。昭和の時代を濃厚に感じさせる古い家屋で、親から相続して今はPaoさんが一人で暮らしている。

 回遊式の日本庭園をくるっと一周した。その真ん中には大きな池がある。池の中には鯉がゆったりと泳いでいた。



 「セカンドシステムか・・・そういったものを持っているのもいいかな・・・いやいや・・・現代はミニマリストがかっこいいとされる時代である。不要な持ちものを減らし、本当に自分に必要なものだけで暮らすのが時代の潮流である・・・」

 「Paoさんのセカンドシステムって、まったく予想がつかないな・・・きっと変わったものばかり集めたんじゃないの・・・」

 そんなことをぼんやりと思った。ベンチがあったので、少し座った。スマホで時刻を確認した。予定の時間よりも10分ほど早かったが、「まあ、いいか・・・少し早い分には・・・」と思って、公園を出て、Paoさんのお宅へ向かった。
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5444:セカンドシステム

2021年01月28日 | ノンジャンル
 「セカンドシステムだよ・・・セカンド・・・taoさんも随分と前にセカンドシステム持っていたでしょう・・・」Paoさんはそう言った。

 「まあ、メインシステムが行くとこまで行ってしまった感があって、もういじりようがない感じになっちゃったのでね・・・完全に遊びの領域でもうひとセット揃えようか思いついてね・・・」

 Paoさんのメインシステムは、スピーカーがYAMAHAのNS-5000である。これをマーク・レビンソンのNo.26LとNo.27.5の組み合わせで鳴らされている。送り出しは昨年、Cary AudioのCD 306 SACを導入された。しかもかなりレアな存在となるブラックタイプである。



 「仕事を完全にやめてしまったからね・・・時間が余ってしまって・・・この家に一人暮らしだから、部屋も空いているし・・・」

 Paoさんは、定年退職後1年ごとに更新できる嘱託職員として区役所で働いていたが、昨年は更新しなかったようである。

 「あと2年ほどは働けたんだけどね・・・なんだかやってられないって気になってね・・・まあ、年金もたっぷりあるし悠悠自適だよ・・・」と、昨年話されていた。

 「もう揃えたんですか・・・一式・・・?」

 「そうそう・・・全部ヤフオクでね・・・ラックだけは自作したけど・・・コロナで巣籠だったからね・・・」

 「結構お金かかったんじゃないですか・・・?」

 「ぜんぜん、メインシステムに比べると本当に安いよ。音は置いといて、昔懐かし個人的に思い入れのある珍品ばかり集めたからね・・・そういった古いものはとても安く出品されているんだ・・・もちろんコンディションが悪いものが多いので、その辺は気を付けないといけないけど・・・ジャンクの場合は修理してくれるところも知っているから、ジャンクの場合はそこに持ち込んで直してもらってね・・・」

 「音はひどいよ・・・笑っちゃった・・・まあ、見てるだけでもいいって感じで・・・BGMとしては聴けなくもない・・・かな・・・」

 「つまりビジュアル系ってわけですね・・・」

 そんな会話をしたのが先週のことであった。

 「セカンドシステムか・・・」我が家にも10年以上前にはセカンドシステムがあった。「なんで二つあるの・・・?」という家族からの攻撃にあって、撤退を余儀なくされたのである。その点、Paoさんは独り暮らしなのでやりたい放題ができるのであろう。
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