AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

5195:Σ

2020年05月31日 | ノンジャンル
 Paoさんは、ピックアップに明らかな不具合が生じていたCD34をオーディオラックの最上段から降ろした。鈴布団のような形状のインシュレーターも一緒にラックから撤去された。

 そしてその代わりにオーディオラックの最上段に位置したのが、YBA CD3 SIGMAであった。アルミ製のボディーは淡い白色で清楚ないでたちである。

 トップローディング方式で、蓋は手で左右方向に開閉する。フロントフェイスには左側に小さなトルグスイッチが三つ並んでいる。

 真ん中にはディスプレイが、そして右側には金色のバッジがあり、そこにはYBAというメーカーのロゴが大きく記され、その下に「Classic 3 Σ」と記されていた。

 Paoさんは「CD3 SIGMA」と言われていたが、正式な製品名は「Classc 3 Σ」なのかもしれない。まあ、どちらでもいい話ではあるが・・・

 少し変わっているのが脚である。前1後ろ2の3点支持で、インシュレーターかと思ってしまうような独自形状の脚が付いている。

 いろんなところが変わっている。そして全体的に見るとバランスが良いような悪いような、不確かで微妙なバランスの上に辛うじて均衡を保っているといった危うさがある。

 Paoさんは左右スライド式の蓋を開けてCDをセットした。そしてスタビライザーを乗せてCDをしっかりと固定した。

 CDは先ほどと同じベルリオーズの幻想交響曲であった。そしてリモコンを操作してやはり第4楽章を選択した。
 
 「断頭台への行進」が厳かに流れ始めた。CD34の時に比べて、サウンドステージがより後方に奥深く展開した。

 音の質感は穏やかで滑らかなもので、ぐんと前に張り出してくるタイプではなかった。2005年の発売とのことであるので、新しい機械ではない。
 
 Paoさんの説明によるとアナログ用とデジタル用にそれぞれ独立した電源トランスを採用しており、発売時の定価は100万円近いものであったとのことである。

 一体型のCDプレーヤーで定価が100万円近いものということは相当な高級機ということになる。情報量もしっかりとあり、その質感は高い。決してピーキーにならない穏やかな耳当りの中高域は魅力的である。

 「なんだかフランスのエスプリを感じるな・・・」理詰めのドイツ車ではなく、ふわっとした猫脚が心地いいルノーやシトロエンといったフランスメーカーの車の乗り味を連想させる音である。

 第4楽章が終わった。「良いじゃないですか・・・フランスの香りを感じますね・・・上質です・・・」

 「ちょっと柔くないかな・・・」とPaoさんは若干ネガティブな評価を下していたが、私個人の感想としてはCD34よりもクラシックに限ってはCD3 SIGMAの方が良いと思われた。

 「しかし、このデザイン、好きな人と嫌いな人とがはっきりと分かれる感じですね・・・私はなんだか分からないけど妙に惹かれるものを感じますね・・・この訳の分からなさ加減が実にフランス的ですね・・・今はやりの言葉で言うと『癖が強い・・!』ということになるのでしょうか・・・これは外観も音もブルーチーズ的な魅力があります。」

 私は思いつくままにそんなことを話した。「オーディオ仲間の方は、このCDを売ってくれるのですか・・・?」と訊くと「気に入ったら20万円でどうだって言われている・・・」とPaoさんは応えた。

 「20万円か・・・決して安くない価格ではあるが、私なら買うだろうな・・・」と心の中で思った。Paoさんはあまり乗り気ではないようではあるが・・・

 その後グレン・グールドのピアノでゴールドベルグ変奏曲や五嶋みどりのヴァイオリンでチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のCDなども、このフランス製のCDプレーヤーを送り出しにして聴かせてもらった。

 「まろやかでコクもある・・・なんだかワインに合うと思わせる音だな・・・」そんなことを思いながら、優雅な日本庭園が魅力の甘泉園公園に隣接した一室で典雅な一時を過ごした。
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5194:CD3 SIGMA

2020年05月31日 | ノンジャンル
 Marantz CD34の不具合は、時折音飛びするようになったことと、CDによっては最初から読みこまないものも出てきたということであった。

 「おそらく、ピックアップの不具合で、交換する必要がありそうなんだが・・・」とPaoさんは言葉を漏らしていた。

 Marantz CD34は1985年2月に発売された。その当時はフィリップスの子会社だった日本マランツが投入した「戦略モデル」で、高級機を上回る内容を持ちながら、59,800円という価格で販売されたため大ヒットした。

 当時のCDプレーヤーの中では音質も素晴らしく、今でも「名機」として語られることが多い。そのCD34の内部パーツなどをアンプ製作で有名な工藤氏が徹底的にモディファイしたのが、Paoさんのお宅のCD34である。

 早速聴かせていただいた。曲はベルリーズの幻想交響曲であった。リモコンで選曲されたのは第4楽章であった。

 第4楽章には「断頭台への行進」という少々おどろおどろしい標題が与えられている。アヘンを吸引し意識朦朧となった主人公は夢の中で愛していた彼女を殺して、死刑を宣告される。そして死刑執行の時が来て、断頭台へ引かれていく。その状況を第4楽章は表している。

 断頭台への行列は行進曲にあわせて前進し、その行進曲は暗く荒々しく、そして厳かでもある。迫力がある音楽は途切れることなく順調に進んでいったが、この楽章の後半、盛り上がった瞬間に音飛びが生じた。

 何かが滑ったかのように異音が一瞬出て音楽が途切れ、瞬間移動した。そして、移動後の場所で何事もなかったかのようにまた音楽が流れた。
 
 その瞬間、私とPaoさんは顔を見合わせた。「これか・・・ピックアップの寿命が来ているようだな・・・」と思った。

 さらにその楽章の終盤でも音飛びが発生した。症状は同じであった。ひゅんと滑って転んだが、すぐに立ち上がって何もなったかのようにすたすたと歩いていく感じであった。

 第4楽章が終わった。「これはピックアップの交換で直るんじゃないですか・・・」「まあ、そうなんだけど・・・修理業者はいるからね・・・でも、工藤さんじゃないとレベルが落ちるような気がしてね・・・」とPaoさんの表情は暗めであった。

 「それはそうと、そこに置いてあるCDプレーヤーはもしかしたら次なる候補ですか・・・?」と私はこの部屋に入った時から気になっていた疑問をPaoさんにぶつけてみた。

 「ああ、これね・・・オーディオ仲間の一人から借りているんだ・・・メーカーはYBA・・・知ってる・・・?」

 「YBA・・・?いえ知らないです・・・」

 「YBAはフランスのオーディオメーカーでね・・・一般的な知名度はとても低い・・・でも日本にも正式に輸入されているんだ・・・輸入代理店がアポロインターナショナルというところで・・・これは少し古い機種、製品名はCD3 SIGMA。」

 「フランスのメーカですか・・・そう言われるとフランス製らしいデザインですね・・・正直よくわかないというか・・・センスが良いのか悪いのか・・・でもなんだか気になる存在ですね・・・トップローディングであることは良いですね・・・CD34はピックアップ交換が必要なようですし、こちらを聴いてみたいですね・・・」

 と私が続けると「今日はCD34とこのCD3 SIGMAをじっくり聴き比べをしようと思っていたんだけど。CD34の調子がかなり悪そうだから、もうYBAに換えてみるか・・・電源は丸二日ほどONにしたままだから、もう本調子なはず・・・」とPaoさんは応えた。
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5193:愛国製茶

2020年05月29日 | ノンジャンル
 都電荒川線に沿って続く新目白通りを走ってから脇道にそれて、コインパーキングに車を停めた。「愛国製茶」という名前の会社のビルの傍であった。

 少し歩いた。天気は良かった。陽の当たっているところでは少し暑さを感じたが、日陰では爽やかな空気に包まれた。

 車を降りてから新目白通りに戻って少し歩くと甘泉園公園がある。新宿区立の公園で回遊式庭園である。

 「甘泉園」の名は、ここから湧く泉の水がお茶に適していたところからきたとのことである。江戸時代には大名屋敷が建っていたようで、池を抱く日本庭園は周辺とは別世界の静けさを演出している。

 Paoさんのお宅はこの甘泉園公園に面している。親から相続した建物はかなりの年代物である。右隣りは古い分譲マンション。左隣は小さな教育関連の出版社の社屋となっている。

 古い呼鈴を鳴らした。引き戸式の玄関のすりガラスの向こう側に人影が表れて、がらっとその玄関が開いた。1年ぶりに顔を見るPaoさんであった。

 Paoさんは63歳。60歳で公務員を定年退職して2年間は嘱託職員として働いたが、今は毎日が日曜日である。

 一人息子がまだ幼かった頃離婚し、数年前に同居していた母も亡くなったので、この古い家に一人暮らしである。

 「どうも、どうも・・・」と挨拶をして中に上がった。Paoさんのリスニングルームは2階にある。階段を上ってその部屋に入った。

 部屋の広さは8畳ほどである。和室であったところを洋間に直した部屋には窓が二つある。西に面した窓からは甘泉園公園の緑を望むことができる。

 新目白通りから1本入ったところにあるので、とても静かである。稀に都電荒川線の電車が通る音がかすかに聞こえた。

 Paoさんのシステムは1年前と変わりなかった。システムの要となるスピーカーはYAMAHA NS-5000である。見るからに「MADE IN JAPAN」を思わせる30cm3ウェイスピーカーは専用のスタンドの上に置かれていて、滑らかな黒い塗装が輝いていた。本格的なオーディオ製品から遠ざかっていたYAMAHAが数年前に出した高級スピーカーである。

 NS-5000を駆動するアンプは「オールド・レビンソン」と評される初期の頃のMARK LEVINSONである。プリアンプはNo.26LでパワーアンプはNo.27.5Lである。こちらもブラックフェイス。

 そして送り出しはMarantz CD34。1985年に発売されたCDプレーヤーでコンパクトな形状をしている。決して高級機というわけではないが、中古市場でも人気がある。

 このCD34は、アンプ製作などで有名な工藤氏が数度にわたる改良を加わえている。「中身はほとんど別物・・・改良に要した費用は全部で100万円を超えている・・・」とPaoさんは以前話されていた。

 そのCD34は薄茶色の鈴布団のような形状のインシュレーターの上に置かれている。あまりかっこいいとは言えないインシュレーターであるが、これも工藤氏の手によるものとのことである。

 しかし、このCD34、最近挙動がおかしくなりつつあるようであった。「工藤さんが体調を壊されていて、修理を受け付けてくれない・・・そうなると新たな候補を探さないといけないようだ・・・」と先日のPaoさんからのメールには記されていた。

 そのメールの内容を裏付けるかのように、リスニングポイントに置かれたアームチェアの右脇には1台の見慣れないCDプレーヤーが床に置かれていた。

 「どこのメーカーだ・・・見慣れないものだな・・・」とちらちらと気になるその物体に視線を送っていたが、メーカーを特定できなかった。

 「Paoさんが新たな候補としてピックアップしたCDプレーヤーであろうか・・・」そんなことを思いながら、お茶を入れてきてくれたPaoさんとしばし世間話をした。

 美味しい緑茶であった。「もしかしたらすぐ近くに本社社屋がある愛国製茶のお茶であろうか・・・」と思いながら、澄んだ色合いの緑茶を楽しんだ。
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5192:添加剤

2020年05月28日 | ノンジャンル
 Paoさんのお宅には年に1回ほどお伺いする。新宿区と豊島区の境目に近い位置にお住まいであり、我が家からは車で1時間と少しの移動時間が必要となる。

 今日は湿度が低い。そのためからっとした爽やかな空気感で、長袖のシャツで上着を着ていない状態でちょうど良いといった過ごしやすさであった。

 道は比較的空いていた。今日の午前中ガソリンスタンでガソリンタンクを満タンにした際に、ガソリン添加剤を一緒にタンクに入れた。

 商品名は「POWER CLUSTER(パワークラスター) PROTECT FUEL PRO For Gasoline」である。ここのメーカーは以前エンジンオイルを交換した際に「RACING」という商品名の高級オイルを採用して好印象を持った。

 そこで、ガソリン添加剤も使ってみようと思ったのである。「プロテクトフューエルPROは燃費の改善、排気ガスの清浄化、バルブ・燃焼室周りの洗浄、パワー・トルクアップ等さまざまな効果が体感できます。」と購入したサイトには広告文が掲載されていた。

 使い方はとても簡単、ガソリン満タン時にガソリンタンクに入れるだけである。1回に50mlを使う。満タン注油時2回に1回ぐらいの頻度で入れて使い切る。100mlのものを2本購入したので、4回の投入で使い切ることになる。

 するとバルブや燃焼室にこびり付いていたカーボンなどの汚れを洗浄する効果があるようである。そういった汚れが取れると、エンジンの回転がスムースになり燃費も向上するとのことである。

 そのガソリン添加剤を入れて、走り出してみると、「確かにアクセルレスポンスが向上したような・・・」と体感された。

 赤信号で一旦止まって、信号が青に変わって発進する時、「結構気持ち良いな・・・」と思わず思ってしまった。

 「BMW523iに搭載されている2.OL直4エンジンが直列6気筒エンジンになったかのような感覚・・・」とまで評するとオーバーかもしれないが、なんだかより高級なエンジンに換装されたかのような錯覚をひと時感じた。

 「これは使い続けてみよう・・・」と思えた。ガソリン添加剤は非常に多種な商品がある。何種類か試してみたことはあるが、「まあ、こんなものかな・・・それほど変わったという気がしないけど・・・」といった印象のものがほとんどであったが、これは「効果が確かにある・・・」と思えるものであった。

 新青梅街道を延々と走っていき。やがて道は新目白通りに入った。ここまで来るとPaoさんのお宅は近い。

 緊急事態宣言が解除されたからといって、人々の動きが一気に開放されたわけではない。普段よりも道は少し空き気味であったので、快適なドライブであった。窓は少しだけ開けていた。車内の空気はすっと流れていた。
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5191:カーリング

2020年05月27日 | ノンジャンル
 Alpe du Zwiftを上り終えた。事前に、上り終えたら頂上付近のアーチの傍で止まって、皆が上り終えたところで、下りは一団となって走りましょう・・・ということになっていた。

 Zwiftでのバーチャルライドで実走と一番異なるところはブレーキが効かないということであろうか・・・

 実走ではブレーキレバーを握りしめたらロードバイクは当然止まる。しかし、Zwiftではいくらブレーキレバーを力強く握りしめても、スマホの画面上のアバターは止まらない。

 クランクを回すのを止めるとしばし惰性で走っていき、出力が10ワット以下になったくらいでアバターは止まり、左足のクリートをペダルから「カチャッ・・・」と音をさせて外して地面に片足を着く。

 止まる場所を指定された場合、その前からクランクを止めて停止させるのであるが、その距離感が難しい。

 メンバーが集まっているところを止まらずに通過してしまったり、随分と手前で止まってしまって再度そろそろと走り始めたりと皆その調整に手間取っていた。

 私はメンバーが集合している場所の随分と手前で2度3度と停止しながら徐々にその間合いを詰めていって、集合場所にどうにか止まれた。「なんだか、カーリングをしているような心境だな・・・」と思った。

 集合場所を通過してしまったメンバーはUターン機能を使って戻ったりしながら、ようやく一つの画面内にチームメンバー全員が納まった。

 そして下り始めた。下りはほとんど漕がなくてもどんどんスピードが上がっていく。スマホの画面にはスピードも表示される。実走では怖くて絶対に出せないようなスピードもバーチャルでの下りあれば出せる。

 時速70kmで下りのカーブを曲がるなど実走では絶対にありえないこともZwiftでは可能であった。クランクを全く回さないと画面上のアバターはいつしかクランチングスタイルに変わっていた。これも実走では私には怖くてできない態勢であった。

 長い下りでの高速走行を終えた。下り終えた地点で、今日のバーチャルチームライドは終了した。「お疲れさま・・・」と挨拶をして、かなりハードな内容であった4回目のバーチャルチームライドを終えた。

 スマートトレーナーに固定されているLOOK 785 HUEZ RSの下にはスマートトレーナーに付属していた消音用のマットが敷かれている。そのマットの上には流した汗が水たまりのようになっていた。そして、スマホに表示された消費カロリーも1,000キロカロリーを超えていた。
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