AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

2360:完走証

2012年08月31日 | ノンジャンル
 ゴルフスクールが終わってから、いつものように休憩コーナーに立ち寄ってしばらくの時間を過ごした。その時Nさんは、とある提案をしてきた。

 「ウィークエンドローディーにとってヒルクライムレースと言うと、富士山と乗鞍って感じですが、もうひとつ参加してみませんか?」

 「もうひとつですか・・・でも、あんまり本格的というか、競技志向のレースはちょっと荷が重いというか・・・初心者でも参加できるようなヒルクライムレースって他にあるんですか?」

 あんまりその辺の事情に詳しくない私はそう訊き返した。富士山と乗鞍は競技志向の参加者ももちろん多いが、雰囲気を楽しみたいというエンジョイ派もいる。特に富士山はお祭り気分のノリがあり、とても楽しい。

 「小規模なヒルクライムレースは確かに、ちょっと硬派な感じが漂いますが、それはそれでピリッとした刺激があって良いものですよ・・・」

 Nさんは私よりもロードバイク歴が長い。別のチームに所属し、定期的に長い距離を走ったリしているようである。

 「箱根ターンパイク・ヒルクライムレースというのが、12月の上旬にあるんです・・・距離は約14kmなので、富士山や乗鞍に比べると短いんですが、平均斜度が7%を越えるんです。10%以上の激坂がところどころにあって、相当タフですよ。私のチームは毎年何名か参加しています。どうですか、人気のあるレースではないんで、抽選なんてないですよ・・・」

 平均斜度が7%を超える・・・富士山や乗鞍は5%台の平均斜度である。それよりもかなり高い。斜度が10%を超えると、体にかかる負荷はまた別次元となってくる。そういう激坂区間がかなりないと、この平均斜度にはならないはず・・・そう思うと、少々息苦しさを覚えた。

 「結構きつそうな感じですね・・・たぶん苦手なタイプの坂ですが、来年の富士山まで何もないと、だれちゃいそうですから、前向きに検討してみます。」

 二人の会話を聞いていた「寧々ちゃん」は少々呆れ顔であった。

 「本当に好きですね坂を上るのが・・・いわゆる『坂バカ』ですか・・・本当に信じられない。何でわざわざあんな苦しい目に会うために、いそいそと出かけていくのか・・・」

 彼女は笑っていた。私も笑った。そして、Nさんも・・・

 Nさんが「乗鞍の完走証、見せてください・・・さっき持ってきているって言ってましたよね・・・」と話を振った。

 私は、ゴルフバッグの小物入れに入れていた「完走証」を見せた。

 「1時間38分57秒057」の表示をみて、「寧々ちゃん」は「これだけの時間苦しんだっていう証拠ですね・・・」と言った。

 Nさんは「これだけの時間努力しったっていう証拠ですよ・・・」と言って笑った。

 私は「この時間は、しっかりと生きていたという証です」と言って笑った。
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2359:アプローチ

2012年08月30日 | ノンジャンル
 「今日はアプローチの練習を前半行います。アプローチが安定すれば、必ずスコアは良くなります。ざっくりやトップをいかに防ぐか、これだけでも大分違ってくるはずです。」

 鈴木プロはそう言って、アプローチショットを安定させるためのポイントを説明した。「スタンスは狭くしてください。クラブを短く持ちます。ハンドファーストに構えて、最後までクラブヘッドが手を追い越さないようにしてください。アドレスした時から左足に体重を乗せて、最後まで体重移動はしません。」

 「ボールを上げようとして、クラブをすくい上げる人がときどきいますが、これは厳禁です。クラブヘッドをボールに押し付け、引きずるような感覚で低く抜いていってください。ボールはロフトの角度にしたがって、自然に上がります。」

 「それから手打ちにならないように、体の回転で打つ感覚を忘れないでください。」

 そのような注意点を幾つか列挙しながら、何球が実際に打って見せてくれた。さすがプロである。どのボールも軽くやわらかく打ち出され、一定の距離をキャリーする。見ている分には簡単そうに見えるが、意外とこれが難しい。

 それぞれが自分の打席に戻って、アプローチ練習を繰り返した。鈴木プロはスクール生の打席を回って、アドバイスをした。

 練習場は人工芝であるので、実際の芝の上よりも簡単である。それでも、実際やってみると低く出たり、キャリーの距離がまちまちだったりと安定しないものである。

 ゴルフの醍醐味は、ドライバーでナイスショットした時だけに感じられるものではない。グリーンわきのラフからアプローチして、ゴルフボールがカップの手前すぐまで転がった時などにもしっかりと感じられるものである。

 練習場に来るとついつい長いクラブを持ちがちである。そして、アプローチショットの練習は少々退屈である。そのため、アプローチショットの練習は後回しになりやすい。これからはドライバーの練習時間と同等程度に練習しなければ、と反省した。

 ある程度の時間継続して練習していると、出球も安定してくる。ゆったりとした一定のリズムで打てると、ボールは柔らかく出ていく。白いボールが緩やかな放物線を描く。キャリーは20ヤードほど。

 そのボールの行方を眺めていると、素早く過ぎゆく日々のことが思われた。時間の経過リズムは歳を追うごとに速くなり、矢継ぎ早に消えていくゴルフボールのように、日常の日々は次々と放出される。

 まだまだ暑い日々が続いているが、夏は確実に終りに向かっている。これから秋に向かって涼しくなっていくのは、過ごしやすくはなるが、どことなく盛隆が徐々に衰えていくような寂しさをも感じさせる。
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2358:報告

2012年08月29日 | ノンジャンル
 「どうでしたか・・・乗鞍・・・」Nさんとはクラブハウス内でばったり会った。スクールのために指定されている打席に向かう途中であった。

 「まずまずの結果でした・・・でも、後半本当にきつかったですね・・・空気が薄くって、脚に力が全然入らなくなりました・・・」一緒にクラブハウス内を歩きながら、答えた。

 「私も去年が初めてだったんですけど、想像以上にきつかったですね・・・本当に辛くて、ゴール前2キロぐらいのところで、自転車を降りて歩いちゃおうかなって本気で思いました。」Nさんは笑いながら話した。

 「その気持ち分かります・・・実際結構な数の方がそうしていましたし・・・」ふと先日のゴールが近くなってきたエリアの風景が脳裏によみがえってきた。

 「押して歩いても、ゴールにたどり着けば完走は完走ですから・・・でも、どうにか歯を食いしばって、漕ぎつづけましたが・・・なんだかゴールした瞬間、泣けてきちゃって・・・」Nさんは、白いゴルフバッグを手に持っていた。その取っ手のところには、かわいいキャラクターのマスコットが取り付けられていて、それが歩くテンポに合わせて揺れていた。

 「私は涙を流すところまではいきませんでしたが、やはり感動しました。天気も良くて、頂上付近はとても景色が良かったです・・・」しみじみかみしめるように、話した。

 ゴルフスクール用に確保されている打席についた。Nさんは「1時間40分は切れましたか・・・」と訊きながら、打席の指定の場所にゴルフバッグを置いた。

 「ええ、どうにか・・・休憩のときに完走証を見せますよ・・・持ってきているんです。」私はNさんの隣の打席にゴルフバッグを置きながら話した。

 「でも、今日も暑かったですね・・・」スクール用の打席は2階席である。照明に灯りがともされ、暮れなずんでいく夏空にほのかな明るさを投げかけていた。

 夜になっても蒸し暑さは残っていた。時計を見た。6時55分であった。「寧々ちゃん」の姿は見当たらなかった。

 「あれ、欠席かな・・・」心の中でそう思ったときであった。背後で「こんばんわ!」という聞き慣れた声が響いた。

 それが誰かはすぐに分かった。振りかえって「寧々ちゃん」に目で挨拶した。鈴木プロが、こちらに歩いてくるのが見えた。ゴルフスクールは7時から1時間半行われる。「これは、今日も汗をかきそうだな・・・」肌にじとっとまとわりつく暖かい空気を感じてそう思った。
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2357:眠気

2012年08月28日 | ノンジャンル
 パソコンに向かって作業をしていた午後の2時ごろ・・・恐ろしいばかりの眠気が襲ってきた。日付、科目コード、金額、摘要と順次入力していくのであるが、それらの情報が、回路が迷走する頭の中でぐにゅぐにゅと粘土のように変形してしまう。

 気を緩めると、がくっと頭が落ちる。体を地底に引きずり込むような眠気と戦うこと1時間ほど、普段の作業効率の半分ほどのスピードしかでなかった。

 昨日も昼食後、眠気が襲ってきた。車で移動中であった。「これは危ない・・・」と身の危険を感じるほどであったので、近くのコンビニの駐車場に車を停めて、仮眠した。

 日曜日の疲れは、一日ではとれなかったようである。レース後、数台の車に分乗して帰路についたのであるが、松本インターまで続く道はずっと渋滞していた。

 夏休みの最後の週末。天気は快晴。行楽地からの帰りは、新たな試練が待ち受けていた。松本インターで高速に乗って、しばらくは順調であったが、すぐさま事故渋滞に巻き込まれた。

 渋滞をようやく抜けて、双葉SAで休憩した。道路情報によれば、この先「笹後トンネルから小仏トンネルまで渋滞35km」とのこと・・・八王子インターまで3時間かかる。

 これは、大変な渋滞である。そこで渋滞前のインターで降りて下道を通ることになった。山梨県と東京都を繋ぐ柳沢峠を越えた。

 瑞穂町のガストで遅めの夕食にありついた時には、値段に深夜の割増料金10%がかかる時間帯に入っていた。(ファミレスが、深夜は割増料金をとることをその時初めて知った。)

 自宅についたのは日付が変わろうとする時間帯であった。日曜日は本当に長い一日であった。レースの疲れに、渋滞疲れが重なり、体の機能は停止寸前であった。

 その疲れは今日になっても残っていたのであろう。まだ、乗鞍の疲れがとれていないが、今日は仕事の帰りにスポーツジムに寄った。いつもの内容のトレーニングを済ませ、家に帰りついた。

 さすがに眠い・・・夕食後すぐさまベッドへ・・・昼間は猛暑であったが、夜は涼しい風が吹いていた。コオロギなどの秋の虫も爽やかな歌声を奏でていた。すぐさま深い眠りに落ちた。

 そして、深夜になって起き出し、とあるサイトをチェックした。「箱根ターンパイク ヒルクライム大会」のHPである。

 seiboさんお勧めのヒルくクライム大会。開催日は12月2日。距離は13.8km。平均斜度は7.1%。平均斜度が結構凄い。これはなかなか手ごわそう・・・特に斜度が厳しくなると私のように大柄で体重がある場合、相当に厳しい展開が予想される。

 「まあ、モチベーションを維持するためにも、ここは参加申込みをした方がいいのでは・・・」そう思って参加申込みを済ませた。

 10月には八ケ岳。12月には箱根ターンパイク。イベントの予定があると、日々のトレーニングにも精が出るというもの・・・
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2356:青

2012年08月27日 | ノンジャンル
 第2チェックポイントを過ぎてしばらくすると森林限界を超えた。すると木々は姿を消し、広々とした景色が広がっていた。上を見上げるとゴール付近まで延々と続くつづら折りが、巨大な蛇が左右にうねっているかのように見えた。

 その辺りからである。呼吸が急に苦しくなってきた。酸素が明らかに足りない。脚がずんと重くなり、まるで鉛のように感じる。クランクを回すテンポが上がらない。ケイデンスの数字はずるずると落ちていってしまった。

 「このペースではいけない・・・ペースを上げなければ・・・」と心では思うのだが、体が言うことをきかない。「せっかく、ここまで順調に来ていたのに・・・」心ばかりが焦った。

 夢の中で何か恐ろしいもの追われている時、決まって脚は鉛のように重く、思うように動かない・・・そんな感じである。

 本当に苦しかった。こういう時には弱気の虫がむくむくと頭を持ち上げる。「おまえはこんなもんだ・・・もっとペースを落とせば楽になる・・・目標の1時間40分は無理だよ・・・」そう心の中で呟き始める。

 ゴールの前4kmぐらいからは、自転車を降りて押して歩いている参加者が目に付くようになった。脚を攣ったのであろう、自転車をコース脇に置いて、苦悶の表情で脚をストレッチしている参加者もいた。

 ペースは上がらないがクランクは回し続けた。回し続ければ、確実にゴールは近づいてくる。その事実だけが唯一確かなことのように感じられた。

 ペースは上がらないままであったが、ゴールまでの距離は徐々に短くなってきた。残り3km残り2km残り1km・・・ペースはゆっくりのままであったので、前半で蓄えた貯金は徐々に目減りしていった。1時間40分までの残り時間は、両手の指の間からするすると落ちていった。

 残り1kmの表示を目にして、「アタックしよう・・・最後のあがきだ・・・」折れそうな心で、かろうじてそう思った。「1時間40分を切ろう・・・」霞みがちになっていた目標が心に再浮上してきた。

 腰がもう限界に近かったので、シッティングではペースを上げられないと判断し、サドルから重く痛む腰を上げダンシングに切り替えた。

 スピードが上がった。ペースが上がってくると、「まだ、間に合うはず・・・」と、気持が切り替わった。

 きっと無様なダンシングであったであろう・・・疲れ切った体でただやみくもにペダルを漕いだ。

 サイクルコンピュータのストップウォッチを時折確認した。まだ1時間40分は超えてはいない。ゴール間近になると「ゴール前300m」「ゴール前200m」「ゴール前100m」とこまめに表示が出ている。それを目にしてますます脚に力を込めた。

 残り100mとなった時、沿道に立っていたスタッフの方が「もうすぐゴールです・・・がんばって!」と大きな声をかけてくれた。ハンドルにもたれかかるような前傾姿勢を取りながら、ダンシングで脚を回し続けた。

 ゴール地点の路面上に帯状に設置されたセンサーが見えた。そのセンサーの上をロードバイクが超えた時、「ピッ・・・」とセンサーが反応した音が聞こえた。

 ゴールを過ぎてほんの少ししてから、あわててサイクルコンピューターのストップウォッチのストップボタンを押した。そして、表示されたタイムを見た。1時間39分4秒であった。センサーによる計測ではもう数秒は良いタイムのはずである。

 ゴールしてしばらくは虚脱状態であった。あえいでいるときは周囲の景色を眺める余裕などまったくなかった。ゴールしてからしばらく移動したところで、左手に広がる乗鞍岳頂上付近の景色をゆっくりと眺めた。

 空の色は惹き込まれるほどに澄んだ青であった。池のように水が溜まっているところがあって、その水面に空の青が映えていた。その澄んだ青を見ていると、何故かしら涙が流れた。きっと脳内に大量に放出された脳内麻薬のせいで感情が昂っていたのであろう・・・


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