原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

大学乱立にトドメをかけた田中大臣を評価する!

2012年11月19日 | 時事論評
 現在“風前の灯”状態の民主党政権最後の内閣文科省大臣に任命されている 田中真紀子氏 が、11月上旬に突発的に発表した 「大学新設不認可」 を巡って世が混乱した事件をご記憶の方は多いであろう。
 その後の文科省の「不認可撤回」により、本日現在、当該3大学は推薦入学試験対応に漕ぎ付けている様子だが…。


 冒頭から原左都子の私見を述べよう。

 (あくまでも、上記新設予定3大学が如何なる事由により認可基準を満たしていなかったのかに関して、その内容の詳細を調査検討していない発言である事を事前にお詫びしておくが)、 “よくぞ真紀子さん、「不認可」決定を下したものだ!” と当初、田中大臣の“自暴自棄の勢い”に拍手を送りたい思いの私だった。

 と言うのも、現在大学を取り巻く環境の不確実性の程が甚だしい現状だ。
 大学志願者及び入学者の急増と平行して「乱立」を続けてきた我が国の大学設立状況だが、国内経済危機に伴う景気後退、及び少子化現象を受けて、大幅な「定員割れ」を起こす底辺大学が次々と経営破綻に追い込まれる現実を筆頭に、多くの大学において質の低下が留まる事のない現在の大学内部事情である。

 上記のごとく、田中真紀子大臣による「3大学不認可」擁護私論を我が内面に秘めていたところ、やはり同類の見解は国内に存在するようだ。

 朝日新聞11月9日付 「大学乱立? まだ必要?」 と題する記事の一部を以下に要約して紹介しよう。
 「大学の乱立を止めて質を確保し、時代の要請に合った卒業生を生み出すために舵を切らねばならない」。 11月7日の衆院文科省委員会に於いて、田中大臣は3大学の申請を認可しなかった理由を追及される中、上記の通り自らの主張を繰り返したとのことだ。
 91年に大学設立基準が見直され、さらに小泉内閣時の規制緩和の流れを受け03年度の大学設置の「抑制方針」を撤廃したことが、現在の大学乱立に繋がってしまったようだ。
 大学を運営する側の事情としては、「短大の大学化」現象や専門学校の“箔付け”目的で大学を新設したり、はたまた地方からの若者流出を防ぐため自治体の支援を受けて大学を設立する等のケースが増殖した様子である。
 そうしたところ、少子化と競争激化の狭間で定員割れに悩む大学が増産される結果となり、その対策として「社会人学生」を積極的に取り入れたり、土地が安い地方に移転した私学は変わった学部をアピールする等苦戦を強いられている状況だ。
 ただ、OECD加盟国の中では日本の大学進学率は未だ低く、現状では大学数の抑制に慎重な意見もあり、今回田中文科相大臣が大学のあり方を見直すとした事に関して「本質的な部分を突いている」との指摘も存在するようだ。
 見識者曰く、「世界では規制緩和の流れだが、日本には向かないかもしれない。」とも付け加えているとのことだが…。
 (以上、朝日新聞記事より要約引用)
 

 そうした日本国内の大学が於かれている特殊事情も受けて、現在“風前の灯”状態ではあるものの、民主党政権閣僚である田中文科相は、大学設置に向けた現在の審査体制を問題視し、“基準厳格化”に向けて「有識者会議」で検討に入っている様子でもある。


 本日昼のNHKニュースによると、田中文科相により一旦「不認可」決定と相成った3大学に於いて、国よりの再認可措置により期日が遅れたものの「推薦入学試験」に向けて動き出した模様である。

 そのニュース影像を原左都子が垣間見たところによると、3大学共に結構立派な学舎を建造している様子だ。
 大学(及び大学院)へは理系・文系そして大学院と何度も真面目に通った私であるが、古き時代であるのに加え、すべてが国公立だったためか、こんな立派な学舎で学んだ経験は皆無である。
 今回一旦「不認可決定」が下された3大学とはすべてが地方の大学と心得るが、私立公立を問わず今時の新設大学とはこの経済難にもかかわらず、こんなに立派な学舎を建設可能な事に少なからず驚かされる思いだ。  この学舎を一見した高校生達がこの大学で学んでみたいと思う現実が理解できる気もする。

 その中で、原左都子が一番気になるのが 「秋田公立美術大学」 だ。
 私は秋田を訪れたことは一度もないのだが、3、4年前に我がエッセイ集読者の方から、秋田とは芸術を尊重し美術館等の設備が整っている県であるとのメッセージを頂戴したことはある。
 それにしても、大変失礼ながら秋田県の自治体としての財政面での収支状況は如何なるものなのだろう??
 いや、地方都市に於ける公立大学設立の成功例を見聞した事もなきにしもあらずだ。 山梨県内に位置する歴史が古い“某公立大学”では、その大学を中心とした市政が成功していることも承知している。 (ところが、この公立大学の学費の高さは私立並みであることを、私は数十年前より承知しているぞ。


 最後に私論でまとめよう。
 
 小中高、大学の如何にかかわらず、「学校法人」とは「営利法人」である民間企業等とは異なり、法的には「財団法人」の位置付けにある。  主に私立学校の設置を目的として設立される法人であるが、その公益性が認められ国や自治体より多額の資金援助を得て成り立っている法人である。
 要するに国民や市民の税金が「学校法人」に多額に投入されていることを、庶民は今一度認識するべきなのだ。

 国内の政治経済危機により国家が財政難にあえいでいる現状において、国家や自治体の財源を食い潰す対象である「学校法人」の合理的存在意義を、文科省大臣たる者が的確に見抜いていかねばならないのは当然の事である。

 そういう意味では、ウダウダと煮え切らないまま衆院を解散し“落日”に至った野田政権内の最後の文科省大臣として、重要論点の一つである「大学乱立」にトドメをさすことを明示し、各界及び国民に問題意識を明確に投げ掛けた田中真紀子大臣を大いに評価したい原左都子である。
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