(冒頭写真は、ネットより転載したネアンデルタール人の顔の模型。ドイツ・ボンのライン州立博物館所蔵。)
冒頭より、朝日新聞2022.10.04付「社説」のひとつ、「ノーベル賞 人類の起源に光当てた」を以下に要約引用しよう。
我々はどこから来たのか。 人類が抱く根源的な問いに答える研究が顕彰された。
今年のノーベル医学生理学賞に、独マックス・ブランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボさんが選ばれた。
医学生理学賞は、細胞の働きや病気の原因の解明、薬の開発などに贈られることが多く、人類学への授賞は異例だ。(中略)
ペーボさんの研究は人類学の世界にDNA解析の手法を持ち込み、常識を一変させた。 人間は死んだ後でも、その骨や歯に遺伝子を構成するDNAをわずかに残す。 掘り起こした骨に、歯科医のドリルで小さな穴をあけ、DNAを取り出して解読に成功した。 昔の人類と現代人とを比較すれば進化の過程がわかってくる。 最終的には人類がいつどこで生まれ、どのような進化の過程を辿ってきたのか、推測できる。
約3万年前までに絶滅したとされるネアンデルタール人は現代人の先祖ではないものの、現代人の祖先と交雑していたことを示す痕跡を見つけた。 (中略)
ペーボさんは、現代人がネアンデルタール人から受け継いでいる遺伝子の違いと重症化しやすさに関係性を見いだし、論文を発表している。 (途中大幅略)
純粋な好奇心は、科学の飛躍的な発展の源となる。(中略) 実用的な成果を狙わなくても、科学を発展させる原動力となる。
(以上、朝日新聞「社説」より一部を要約引用したもの。)
話題を大幅に変えるが。
千葉県江戸川付近で見つかった女児の遺体について、本日昼頃 DNA鑑定により、9月27日より自宅を一人で出て行方不明になっていた7歳女児であることが判明した。
ご冥福をお祈り致します…
話題をノーベル医学生理学賞に戻そう。
「ノーベル医学生理学賞」と言えば、これまでは医学関係者による業績に与えられる賞と相場が決まっていたものだが。
今回の受賞者は進化人類学者であるとのこと。
この私も一時、理化学研究所にてあくまでも医学分野でのDNA解析の実験に携わった経験があるのだが。
まさに今の時代は学問研究分野の垣根を越えて、各分野でDNA解析が盛んにおこなわれている実態を思い知らされる。
最後に参考資料として、ネット情報より「クロマニヨン人とネアンデルタール人」に関するペーボ博士の「ノーベル医学生理学賞研究」内容に関する記載を引用しておこう。
■クロマニヨン人とネアンデルタール人
一般に種が異なると、ラバやケッテイのように一代限りの雑種はできても稔性(子孫を作れる)の子孫はできない。現生(クロマニヨン)人は、形質や遺伝的に最も近いネアンデルタール人とは数万年ともに過ごしており、生存競争に勝ち残ったのが我々の先祖であり、体格は優れていても知的に劣ったネアンデルタール人は滅亡したと考えられてきた。
しかし、両者の形質を兼ね備えた化石人骨が出土したことから交雑の可能性が指摘されてきた。ペーボ博士は、クロアチアで出土した約3万8千年前のネアンデルタール人骨3体からDNAを抽出して全ゲノムシーケンスを解析し、5人の現生人類(アフリカ南部、アフリカ西部、パプアニューギニア、中国、フランス)のゲノムと比較した。
その結果、アフリカ2カ所を除く3人のゲノムとネアンデルタール人の一致が高く、アフリカで誕生したヒトの一部が、8万年前以降にアフリカを離れてユーラシア大陸に広がる前に中東近辺でネアンデルタール人と混血した可能性があるということ、さらに、ヒトの遺伝子の1~4%はネアンデルタール人に由来する可能性があることを明らかにした。
もともと、人類発祥の地であるアフリカでは遺伝子の多様性が高いのに対し、それ以外の土地では少ないため、たまたまの浮動でこのような結果が出た可能性は否定できない。 従来はPCRでネアンデルタール人と現生人類を比較し、交雑はなかったとする報告が多数を占めてきた。だが、ペーボ博士らは次世代シーケンサーを使って全ゲノムを網羅的に解析した結果から、定量的な結果を得たのだった。
(以上、ネットより引用したもの。)