かなり古くなるが、本日は朝日新聞2022.06.10夕刊記事「乳がん経験者 心ほぐれる温泉 「傷があっても、私は私のままでいい」からヒントを得てエッセイを綴ろう。
私の場合、過去に経験したのは乳癌ではなく、皮膚癌なのだが。
時は32歳、2度目の大学生かつアルバイトの身の頃の事だ。
ある日突然、頭頂部やや左寄りに固いできものを発見した。
痛くも痒くも無いのだが、そのできものが固いがために皮膚が突っ張っている感覚はあった。
まあ、明日になったらなくなっているさ。 程度に捉えて日々学業に仕事に励んでいたのだが、そのできものが1か月経っても2か月経っても消えない。
心配ではあるがとにかく超多忙な時期だったし、私自身が医学部出身者で、ある程度の医学的判断も可能な我が身でもあり、そのまま放置することとした。
大学にての春の健診時に、若き医師先生にそのできものの相談をしてみた。 その回答とは、「おそらく粉瘤等の悪性度の無いできものだと思いますが、もしも大きくなってきたり、何個もできたり、形が崩れたりした時には必ず皮膚科を受診して下さい。」
それから更に年月が流れ、高齢にて娘を出産した後のことだ。
どうやら、頭のできものが少しずつ大きくなってきている気がしていた。 ただ高齢出産で自らの身体が大打撃を受けているし、子育ては大変だし…、身内には一切そのことを告げずそのまま放置することとした。
そして娘が2歳になって私は40歳時に、そのできものが直径3㎝程までの大きさになった際に、「これは捨ておけない!」と自ら判断して、やっと皮膚科を受診した。
組織診等々の結果「皮膚癌」と診断され、私はその摘出及び自分の足からの植皮手術を受けた。
幸い頭蓋骨への転移が無かったことが幸いして、私はこの通りこの世で今尚元気に生き延びている。
さてその後は、とにかく自身が医学関係者であることが大きくものをいい、私は健康体にしてずっと世を渡っているのだが。
普段は、家を一歩でも出る際には必ずウィッグを着用している。
近年のウィッグは実によく作られていて、それがウィッグだとバレることはほとんどない。
一番困惑するのは、それを外さねばならない時だ。
困惑した事例を挙げると、「ヘルメット強制着用」との場面が一度あった。 その際もウィッグを外すことなくその上から装着すると、ウィッグの留め金が頭に当たって実に痛いのだが、それを我慢した…
旅行に出る時にもウィッグを人前で外すわけにはいかないため、決して温泉旅行になどは出ずに必ずやホテル部屋内のバスルームを使用している。
ところが、だ。
7,8年前の話だが、認知症の義母がどうしても温泉宿へ連れて行って欲しいと私に嘆願してくる。
やむを得ずそれを実行したのだが。 認知症の義母は私が頭部皮膚癌手術をした事実など、当の昔に忘却の彼方で…
ホテルの大浴場へ行く際、エレベーター内で義母をつれた私が頭の皮膚癌後の箇所にガーゼを貼っていると。(参考ですが、普段家でもそのスタイルです。急に宅配物が届いた時等に対応せねばならないので。)
同じく大浴場へ行く目的のエレベーターに同乗してきたご年配の男性が、親切にも私に問うて下さる。 「頭、どうかしたの?」
これに応えて、「手術跡があるので、ガーゼでカバーしています。」
すると男性曰く、「そんなの気にすることは無いよ。ガーゼなんか取って温泉を楽しみなさい。」
この男性の返答が素晴らしく嬉しい記憶として、今尚我が記憶に残っている。
認知症に加えて難聴も兼ね備えている義母に、そんな会話が聞こえるすべもなく。
とにかくその大浴場では義母のフォローが実に大変で、私は所詮頭髪を洗える訳も無く重労働の時間が過ぎたものだ。
その後ホテルの自室に戻って義母を先に寝かせた後、私はやっとバスルームで寛げたとの結論だった。
話題を、冒頭の朝日新聞記事に戻そう。
記事によると、乳がん手術等で温泉等を楽しめない女性たちのために「心ほぐれる温泉」の提供が各地で広まっている、との明るい話題だ。
これぞ、吉報であろう。
どうか、手術後の傷跡や治療による脱毛等々に苦しむ人たちが、心おきなく寛げる温泉にて心を開放して欲しいものだ。
ただ私の場合は、今まで通り家風呂と、旅行の際にはホテル部屋内のバスルームで十分だなあ。
徹底した集団嫌いの身としては、それが本音で一番寛げるのが正直なところだしね。😌
最後に余談だが、本日私はまたひとつ年齢を重ねた。
幾つになっても元気に歳を重ねられる我が健康体に心より感謝しながら、今後も丈夫で有意義な人生を貫いて行こう!!😃