原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

“職替え” も立派な人生の選択肢の一つと私は思う

2016年12月09日 | 仕事・就職
 NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」よりの引用が続くが、本日は主人公すみれのご亭主 紀夫くんを取り上げよう。

 えっ? 原左都子って、ここのところNHKの批判ばかりしている割には、実はNHKのファンなんじゃないの? ですって??
 いえいえ、決してファンと言う程NHKの番組を見ている訳でもないのだが、いつも昼食時間帯に天気予報と昼のニュースを見る流れで、連ドラを習慣的に視聴しているのは事実だ。


 さて、その紀夫くん。 
 すみれの女友達のご亭主の内、戦争から帰還するのが一番遅かった。
 それまで紀夫の帰りを待ち続け泣いて暮らしていたすみれだが、何故か、戦争との困難を乗り越え無事生還したにもかかわらず、紀夫に対する態度が冷たい。  その理由とは、すみれが立ち上げた「キアリス」に対し紀夫が当初批判的な感情を抱き、すみれにそれを辞めるように嘆願した故だ。

 原左都子に言わせてもらうならば、戦争の残虐性や悲惨さを考慮した場合、その現場から生還直後の紀夫の心理的大打撃こそをドラマ内で周囲が労わるべきはずだ。

 にもかかわらずシナリオではその描写が完全に抜け去り、あくまでも主人公すみれの身勝手な心情を「善」と決めつけ、それに合わせるべくストーリーが展開していく‥
 ちょっと待った! と言いたい我が気持ちを抑圧し白けつつドラマを見続けていると、結局、紀夫の戦争体験は何一つ描かれる事は無かった。 (極寒の戦場にて風呂に入ると、仲間に衣服を盗まれ凍死するため風呂に入れないし、そうやって凍死した仲間の死体から衣服を剥ぎ取って生き残った、なるエピソードのみ、紀夫の口から語られたが…) 
 その紀夫の逸話すら すみれは完全無視して、ドラマはとっとと次なる場面へと急展開した。 
 今になって遅ればせながらHNKに問いたいが、一体全体何故紀夫の悲惨な戦争体験を無視するシナリオ展開としたのか!?  (やはり、戦闘地南スーダンへ平然と自衛隊員を派遣する安倍政権迎合故か??)


 そんな紀夫くんが戦争から帰還後、今度は「坂東営業部」なる民間企業の最高責任者としての立場で苦しんでいる。

 ドラマをご存知ない方々のために少し補足説明をしておこう。
 紀夫はそもそも、「坂東営業部」創始者の次女である娘すみれと婿養子の立場で見合結婚している。 戦争により「坂東営業部」は崩壊したものの、それを再び立ち上げようと現在長女ゆりとそのご亭主 潔 が頑張っているとのドラマ設定だ。
 紀夫が戦争帰還後、長女のゆり夫婦が企業再建に向け頑張っている事実を垣間見た紀夫は、自分が「坂東営業部」より去るべきと考え、一時“就活”に励んだ。 ところが、その実態とは“なしのつぶて”…
 それを知ってか知らずか、「坂東営業部」創始者であるすみれの父とゆり夫婦が、「お前こそが、『坂東営業部』の最高責任者だ!」と紀夫に告げる。  就職先が決まらずやむを得ずゆり夫婦が立ち上げた職場へ行くも、その職場環境が紀夫に冷たい…
 例えば、元々営業肌の社員がバリバリ働いている。 そして陰で紀夫の悪口を言う。「あの人、営業の適性など全く無い」 あるいは、すみれの姉のゆりさえも「紀夫さんは経理に向いているからそれをさせてあげたらいいんじゃないの?」
 そして本日の放送内では、ゆりの夫 潔から突然「紀夫くんには今後新しく展開するデパート内で婦人服教室統括の仕事をしてもらう!」  それに対して紀夫くん曰く、「自分には適性が無いから経理を引き続き担当したい」  それに対し潔曰く、「お前には経験値を積んで欲しい」
 それに愕然とした紀夫が、酒処で男グループに酔っ払いつつ相談したところ、「職替えはどうなか?」なる一意見が出た。 (参考だが、この場合の“職替え”とは、紀夫が「坂東営業部」を辞職して経理等自分の能力が活かせる他の職場に移るとの意味、と私は理解しているが。)
 本日の「べっぴんさん」ドラマ展開はこういう風になっている…


 ここで、原左都子の私見に入ろう。
 
 ドラマ「べっぴんさん」と現在の時代背景が大幅に違っている事実を視野に入れつつも…

 どうも、ドラマ「べっぴんさん」にて現在行われている紀夫くんに対する処遇の程が、「いじめ」 に近いような印象を抱かされるのだ。
 私の感覚では、すみれの「キアリス」がある程度成功しているがばかりに、紀夫くんは妻にも気遣ってもらえず今尚「孤立」をやむなくされているように映る。 加えて、坂東営業部再建のためにその職場へ戻れ!とゆり夫婦から嘆願されれば、それに従わねば仕事がない紀夫の立場をどうしてあげたらよいと言うのか…

 そんなこんなで、これこそ紀夫に対する最たる「いじめ」と私は捉え、紀夫戦争帰還後ずっと(弱者であろう)紀夫視線で物事を考えている。
 確かに紀夫はまだまだ若い。 ゆりの夫潔が言う、紀夫には経理のみではない別分野の能力も開花させよう! との発言は、紀夫の将来を思っての事だろうが…… 

 そんな折、紀夫の男子グループの一人が紀夫の困惑に応え「職替えをしたらどうか?」なる提案をした。
 この一言が酔っ払った紀夫の脳裏に響いた様子だ。


 最後に、原左都子の私論に入ろう。

 紀夫が生きた戦後間もない時期と、現在の職業事情を比較出来る訳もなかろう。

 そうだとして私が想像するに、ドラマ内の紀夫はおそらくこの後(2017年3月放映終了までには)、すみれの夫として「坂東営業部」を立派に引き継ぐべく成長を遂げ、ゆくゆくは社長として ゆり夫婦を手下の経営陣として迎え入れている事だろう。 
 我が推測が正しいとして、いやはやドラマはそれで済まされるから放っておくこととして…。

 片や、現在の混とんとした時代を生き抜かねばならない次世代を支える若者達は、一体如何なる職歴を辿ればよいのやら…
 我が意見としては、特に財閥等の大企業の子孫でもない限り、自分の能力や可能性を信じられる人材は積極的に“職替え”をして冒険すれば、また新しい世界が開拓されるのではないかと結論付ける。

 とにかく、一般庶民は自己の能力が未来へと拡大すると信じるならば、“職替え”を実施するのも良き手段となろう。

  紀夫くん、シャイで口下手な貴方は結構私の好みですよ! そんな自らの個性こそが自分を支える最高の力と信じて、これからも頑張り抜こう!!