原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

末端業者が担わされる過酷労働と重圧の実態

2016年11月04日 | 時事論評
 今回のエッセイにて取り上げるのは、3日前の11月1日に発生した出来事である。


 郷里に住む実母の高齢者有料介護施設への引越の大方は既に10月下旬に終了しているが、母の希望により、テレビと洗濯機だけは11月1日の別配送・現地取付を引越業者に別料金にてお願いしていた。

 その理由とは、母本人が11月1日の実質入居日まで未だ自宅にて残務があるため、施設と自宅を行き来したいと申し出た事による。 特に自宅で夜間一人で過ごす時間帯にはテレビを見たいし、朝方洗濯機が必需品と言い張るのだ。
 当初、業者に引越を依頼した私の立場から、「そんな面倒臭い事を言ってないで、自宅に戻ると言っても後数日なのだからテレビと洗濯機は我慢して、先に全部運んでもらっとけば?」とアドバイスした。
 ただ、高齢単身しかも後数日の自宅にての最後の日々を、母がいつものように過ごしたい思いも重々理解可能だ。 「分かった。それじゃあ、私の方から引越業者へ11月1日の別配送の件を連絡しておく」と母に告げると、母は心より安堵したようだ。


 さて、その11月1日がやって来た。
 いや、その前日からトラブル発生の予感が我が脳裏に過った……
 と言うのも、前日の夜、引越会社の下請電気工事業者から東京の我が家に電話があったのだ。 「明日のお母様の引越し先の電気工事の件ですが、何時頃に引越先へ伺えばいいですか?」
 (ちょっと待ってくれよ。そんな事顧客である私に聞くか? 引越会社の大本に確認すれば済む話だろ?)と感じつつも… 
 社会経験が長い私は、大手引越会社の傘下で下請業者が困惑している状態が目に見えて分かるのだ。  それを海千山千の私が責める訳には行かない。 そう考えた私は、「引越会社の方からは荷物の搬出が〇時頃と聞いていますので、その後搬送時間を考慮するとおそらく〇時頃の引越先への到着となると思います。 その後の時間帯に電気工事に伺って下されば幸いです。」 
 ここまではまだ、“事件”の序の口だ。

 さて、追加引越当日11月1日の夕方の事だ。
 とっくに実母の電気工事が終了したと安堵していた東京の自宅に、上記と同じく下請電気工事業者よりまたもや我が家に電話が入った。 「実は他の電気工事に時間を取られまして、お母さまの引越先への到着が18時頃になります。」  それに私が応えて、「おそらくその時間帯は母は施設の夕食時間帯と心得ますが、施設自体はまだ開いていますので、施設の受付にその旨申し出て下されば電気工事可能と思います。」

 ところが、これで事が済んだと思っていたら大違い!! 
 この引越の成り行きが許し難き事態となっていた事に関して、引き続き以下に綴ろう。

 19時過ぎに、大本である大手引越会社より東京の我が家に電話が入った。
 へらへらと引越会社大本の社員らしき人物が私に語るには、「今回は我が社を利用して頂きましてありがとうございました。何が不都合等がございましたら、どうのこうの…」
 この電話に怒り心頭の私曰く、「何を言っているのですか? 我が郷里の追加引越は未だ終了していませんよ! 先ほど貴社の末端業者より電話が入って電気工事が遅れるとのことです。それを大本が把握していないのですか! 我が母の引越先が高齢者施設である事を貴方は認識されていますか? それ故に門限もある事を引越依頼時に重々申し出ております。その伝達もなされていないのですか?  とにかく電気工事が終了次第、私までお電話下さい。 同時に本日電気工事がこれ程までに遅延した事に関して、貴社からも施設に直々にお詫びを入れて下さい。」と私は噛み付いた。
 そうしたところ、大本引越企業の若手社員と思しき人物が、私に尋ねるのだ。 「それは、私がする事ですか? それとも電気工事者でよいですか??」
 その世間知らずの貧弱な回答にとことん落胆させられた私は、「それは大本引越会社である貴社が判断実行することでしょ! 顧客である私に問う内容ではないですよ!」と一喝しておいた。

 一応その後、引越元である大手企業より我が家に再度ご丁寧なお詫び電話が届いたものの……


 我が国に於ける企業系列の実体として、何故これ程に本元である大手企業体質がお粗末なのだろう?
 (それは何処の大企業もその実態とは名ばかりで、上層部に真に優秀な人材が配備されていない故と心得るが。)

 片や、その末端部を担わされている下請業者従業員皆様の誠心誠意の働きぶりには、いつも感動させられる私だ。
 今回の実母の引越に於いても同様だった。 
 最初に実母宅の主たる引越を担当して下さったのは、郷里地元に住む若者二人だった。 この二人がイケメンならば、その働きぶりは既に“全国標準化”されていると私は悟った。
 その二人が無駄口一つたたかず引っ越し作業を終えた後、その二人のあまりにも可愛らしい風貌に感激した私は尋ねた。 「これで本日の引越作業は終わりですか?」 ところが、返された答えに驚かされるはめとなる。「これからもう一件の引越をこなします」

 これ、いくら若者と言えども重労働に間違いない事実だ。 大本の大手引越企業はこの現状を如何に捉えているのだろう。


 こんな歪みがある経済政策を更に煽ったのは、安倍政権によるアベノミクス経済政策に他ならない。
 そもそも、安倍政権が政権発足当初より目指したアベノミクス経済政策とは、経済上位部に位置するごく一部の企業を潤わせ、下部の組織団体はそのしたれ露を浴びる事により“おこぼれ”を頂戴する政策であった事は、皆さんも重々ご存知の事であろう。 
 ところがどっこい、そのアベノミクス経済政策大失策により、今に至っては末端部に“おこぼれ”が届くどころか、上層部までもが経済困難に陥らざるを得ない現在の我が国に於ける貧弱実態だ。
 
 生活保護受給者が、過去に増して現役世代までにも拡大している我が国の実情でもある。
 その現状下に於いて、企業組織の末端部で日々身を粉にして一生懸命働いている若者の働きぶりを非難できるはずもない。

 庶民の立場として問うべきは、アベノミクス経済政策大失策により思考力を低下させられ、我が身息災にみっともなくもホクホクとしている上位1%程のごくごくわずかに潤っている“らしき”企業団体上位に位置する組織の惨然たる有り様だろう。