原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

介護施設に住む義母が起こした漏水事件

2016年11月07日 | 医学・医療・介護
 マンション・アパート等集合住宅にお住まいの方や不動産業の方々は重々ご承知であろうが、その種の物件に於いて発生するトラブルの中でも、「漏水」程厄介なものは無いのが実情だろう。


 この私も、約20年間に渡り自己所有マンション物件を賃貸運営していたため、その経験がある。

 2年程前に入居したばかりの賃借人より「物件老朽化に伴い漏水の恐れがある」と訴えられたのだ。 その対応のための排水管修繕及び工事中のホテル代保障、あるいは修繕後の水回り対策予想費用として150万円程の損失計上と相成った。
 その後も賃借人よりの苦情が続いた。
 (これはあくまでも私の憶測にしか過ぎないが)、どうも女性オーナーとして当初より賃貸人及び仲介不動産会社に甘く見られてしまったようだ。 それが証拠に、賃貸借仲介会社(一応JASDAC上場企業のようだが)がさほどの調査もせずして、賃借人の意向に従うようにとオーナーの私に一方的に告げるのだ。 更にはその修繕の仲介もするが、排水管工事に2,3百万の費用が発生すると物件仲介会社が平然と私に言う。   
 更に別筋より、この賃借人が過去に居住していた複数の賃貸物件でも同様のトラブルを何度も引き起こし、オーナーよりカネを巻き上げては住まいを変えるとの遍歴があるらしき裏情報を得た。
 それを知る前より、ヤクザもどきの言動に出るその賃借人(及びそれを支援する仲介会社)と今後対決を繰り返す事を避けるべきと私は判断していた。 そして早速所有物件をオーナーチェンジのリノベーション対象物件として売却するとの手段で、私は得体の知れないその賃借人(及び仲介会社)と今後一切の縁を切る道を選択した。
 不幸中の幸いとしてその賃借人は“深追い”はしないタイプの様子で、我が損害は私自身が自分で判断して支出した150万円程の金銭損失のみで済んだ事実に、今は安堵している。 (更に後に得た情報だが、その賃借人はあれから2年以上が経過した現在尚、私が売りに出した物件にまんまとずっと居住しているとのことだ。

 さて、我が元所有物件が、実際そのまま放置しておけば本当に漏水したのか否かは未だ不明だ。 ただ、当時築32年だった同マンション内で既に水回り大規模工事を執り行った居室は少なくなく、あるいは2年前の私同様、リノベーション物件として売りに出された部屋も多い。
 その事実を鑑みるに、確かに老朽化に伴い「漏水事故」が発生するのは時間の問題だった事であろう。 その意味では、売り時だったと今は振り返っている。

 とにかく一旦集合住宅内で「漏水事故」を起こしてしまうと、その漏水量の大小にもよろうが、下階の漏水被害を受けた居室に対する損害賠償額とは莫大な金額となろう事は歴然だ。


 前置きが長引いたが、この辺で今回のエッセイの本題に入ろう。

 昨日午前中、未だ痛む歯と腫れた歯茎を抱えた私(前回のエッセイをご参照下さい。)の元に、義母が住む高齢者有料介護施設のケアマネジャー氏より電話が入った。
 施設からわざわざ電話を頂く時とは、大抵ろくでもない事件や事故が義母の身の回りに発生していると予想出来る。

 今度は何を引き起こしたのかと、恐る恐る電話口に出ると……

 義母担当のケアマネジャー氏曰く、
 「昨夜、お義母様が施設の自室内で漏水事件を起こしました。 どうした事か、義母様は真夜中に洗面台にて洗濯をされたようです。(参考だが、この施設では掃除・洗濯は全面的に施設スタッフが実施してくれているが、個人の自由として小物類を自分で洗濯する事を認めているとのことだ。) その途中で水道栓を開いたままベッドで寝たようです。 何分耳が聞こえにくいお母様のこと、おそらくそのまま寝入った事でしょう。  施設の夜間勤務スタッフがその事態を察知したのは、下階に住む複数の入居者様より“上から水が垂れている”なる苦情が届いた事によります。 早速下階の入居者の部屋に駆けつけ、漏水が起こっているのは上階だと察知したところ、まさにお義母様の部屋が漏水を起こしている源と発見しました。  洗面台にて洗濯中の洗濯物が排水溝を塞ぎ、お義母様の室内は水浸し状態でした。 それに気付いたスタッフがお義母様を起こしたところビックリされ、その後は自分の犯した事件に落胆されています。  その後の処理は本日に至ってスタッフにて何とか原状復帰しました。  今回保証人様にお電話しましたのは、お義母様の認知力がこれ程までに低下しているとの事実を報告するべきと考えた故です。」


 いやはや、義母の認知力が低下し始めて以降、施設内で様々な“事件・事故”を引き起こしている事態は保証人として重々承知しているが、これ程の(もしかしたら膨大な損害賠償を要する!?)事件は初めて!?と私はおののいた。
 その思いを正直に電話を頂いたケアマネジャー氏に伝えた。 「私自身もマンション等の集合住宅で発生する“漏水事故”の実態に関してある程度承知しているつもりです。 今回義母が引き起こした漏水に関して、本当にケアスタッフさん達が後処理をして下さった事で済む話でしょうか? もしも今後施設設備に関して今回の漏水事故にて不都合があるようでしたら、保証人として必ずやその賠償責任を果たしますのでご連絡下さい。」 

 その後、義母が住む施設のケアマネジャー氏より連絡が無いのをよしとするべきか……

 それにしても、ケアマネ氏の第一義の訴えである、“義母の認知力の更なる低下” こそが保証人にとっても最大の課題となろう。

 義母の認知力低下が突き進むと、更なる「損害賠償責任」行動を次々と引き起こすのか???
 もしそうだとすると、いくら義母に金融資産があると言えども、保証人にとってはその資産はすぐさま損害賠償金として消え去る事を今後の恐怖として再認識させられる事態だ。

 「なるべくお世話になっている貴方達(我々夫婦)に私の資産を残したい」と言うのが口癖の義母だが…

 その前に、ご自身が取るべき行動にこそ注意して欲しいと言ったとて、叶わぬ認知症状の進み具合に保証人の立場としては呆然とさせられるばかりだ……