原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

若年男にとっては “年収” こそが女関係を左右するのか??

2016年06月29日 | 時事論評
 最近の朝日新聞には、若い記者達が考え発信しているページがあるようだ。

 6月25日付朝日新聞夕刊記事内にて、「ココハツ」なる当該ページを見つけた。
 「『恋人なし』は自己責任?」 と題するその記事は、反論も含め興味深い内容だったため、今回の我がエッセイにて取り上げることとする。


 早速、記事の内容を要約して以下に紹介しよう。

 政治が恋愛を作っている?
 そう説明する大学教授がいる。 働く環境の影響だとも。 それがどういう事なのか、29歳の記者が取材した。
 20代後半で結婚していない人がどれ程いるか。 答えは男性約72%、女性約60%。 恋愛のメカニズムを科学的に研究する某教授は、「見合い結婚が減った今、結婚相手を探すなら95%が能動的に恋愛せねばならなくなった。」  自由恋愛の市場では、(内閣府がまとめた「結婚・家族に関する調査」から)20代男性に絞った場合、年収により結婚歴や恋人の有無に差がある事が一目で分かる。
 その中でも際立つのは、「年収300万円の壁」。 既婚者の割合は年収300万円以上の人に比べ、それ以下の婚姻率は1/3。 女性との交際経験が「ない」という人は35%。 年収が低い程「交際経験なし」の傾向は女性も同じ。
 生き方はもちろんそれぞれだし、「草食系」なる表現もある現在に於いて、別の見方をする大学教授もいる。 「デートを重ねるにもカネ、時間、労力が要る。 非正規雇用で低収入の若年層にとっては、恋愛をしたくても出来ないのが実情。 ここに政治が影響している。
 働く人の非正規化は1980年代の労働者派遣法成立から2000年代の製造業派遣の解禁まで、じわりと進んで来た。 総務省の労働力調査をみると、非正規の割合は近年増加傾向にある。 代々の有権者が選んだ政治家が政策を選び取り、その積み重ねが若年層の非正規化に繋がった。 結果として恋愛経験の差も生み出した、という指摘だ。
 だからこそ、若者に伝えたい。 「モテたいなら、投票にいこう。」と。
 (以上、朝日新聞29歳男性記者が担当したという記事より要約引用したもの。)


 早速、原左都子の私論に入ろう。

 さすがに、29歳“若造記者”が企画し公開した記事だ。 
 その発想は一応面白く、還暦過ぎた私の目にも留まるある種のインパクト力があったことは評価しておこう。

 ただ、取材力やその後の題材に対する分析・考察力が、(新聞報道なる時間制限も大きいのだろうが)無謀と言えるのではあるまいか? 

 まず、若造記者が今回取材したとの大学教授だが、これは朝日新聞“お抱え教授”氏に頼ったのであろうか? あるいは若造記者ご自身が自ら取材を依頼したのだろうか?  そこから問いたいのだが、出来るならばご自身が下調べし、自身が納得可能な研究論文等を発表している教授氏のご意見を賜るべきだろう。
 「政治が恋愛を作っている」なる名言を生み出した教授のその発信力は、確かに余興としてはインパクトはある。 そうは思いつつ私に言わせてもらうと、単に“受け狙い”的発言であることも否めないのだ。 特に恋愛等(「社会学」の範疇なのだろうか?)の関連学者とは、大して学問的歴史が無い分野も多いため、失礼ながら口先だけ適当な発言をしている事実も否めないだろう。

 あるいは当該若造記者氏が、「非正規雇用者」こそが“女関係敗北者” のごとくまとめている事実も大いに気にかかる。  
 確かに、現在「非正規労働者」が急増している世の中だ。  ただ、人間の恋愛力と金力とは別物ではなかろうか、なる根本的な疑問が私にはある。(これに関しては、後に論評しよう。)

 更には、「政治が恋愛を作っている」なる大学教授の話を真に受けて、若造記者が若者に対し投票を呼び掛けている事実も気になる。
 もちろん、世代を問わず選挙投票には行くべきだ。 ただ、29歳にもなった新聞記者が「モテたいなら投票に行こう」なる呼びかけはあまりにも幼稚でお粗末ではなかろうか。 
 今後我が国を支えて立つべくその年代層の若者には、私ならば「憲法論議」や「経済政策」「国際関係」等々を是非とも議論した後に選挙に臨んで欲しいものだ。


 最後に、原左都子の私論でまとめよう。
 
 もしもこの記事を29歳時点の私に書かせてもらえたならば、その表題は「『恋人なし』は自己責任?」ではなくて、「『結婚するかどうか』は自分の自由!」 にさせて欲しかったものだ。
 実際問題、現在の29歳程の社会で活躍する女性陣は、我が29歳頃の思想と一致すると想像する。 まさに結婚どころではなく、もしかしたら「草食男子」から求婚されても「お呼びでない!」と肘鉄食らわせつつ、自由恋愛を謳歌しながら仕事に励んでいる事であろう。

 「年収300万の壁」と言うが、その数値にも疑問を呈する。 
 おそらく、単に年収額等数値にのみこだわる若き男女が深い思慮も生活感もなく、その数値に翻弄されるがままに揺れ動かされているものと推測する。 

 「非正規雇用」が諸悪の根源、なる記載も気にかかる。
 正社員とて似たり寄ったりの現状ではなかろうか?  明日は如何なる我が身か!? など知ったものではない。
 確かに29歳とは新入社後既に年月が流れ少し熟して来る頃だが、私など、30歳にして自分の意思で民間企業をバッサリ斬り捨て、新たな学業へと突入した経験の持ち主だ。 だからと言って、「結婚するかどうかなど自分の自由!」ポリシーにはその後も何らの揺るぎはなく、お見合いにて晩婚に至るまで華麗なる独身貴族を通したものだ。 

 あるいは、「年収」といったところで、元々資産家育ちの男にとっては、自分が稼ぐ微々たる給料よりも「家」の資産力こそが“結婚相手ゲット”の要となる事実も、一昔前にはあった事であろう。
 ただ、これに関しても経済変動に伴い現在資産価値の大暴落等で激動しているのが実態だ。 資産力ある「家」に嫁いだはずなのに、相次ぐ経済激動により何百年の歴史を刻んだ嫁ぎ先が、今現在に至り貧困に窮している“良家へ嫁いだお嫁さん”事例も、国内あちこちで多発しているのではなかろうか。
 

 おそらくこの記事を書いた29歳朝日新聞記者氏は、朝日新聞社との超大手企業の正社員身分である自分の身が一生安泰?!?だと想像しているのではあるまいか。 
 そんな自身のバックグラウンドが整備されている事実に若気の至りで安穏とするがあまり、時代の大変動の有様や、一般庶民の世の現実を十分に理解出来ていないと推測出来る事実が、寂しい気もする…。