原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

“炉心溶解”の恐怖を国民は今一度我が事として振り返ろう

2016年06月23日 | 時事論評
 どうやら、5年前の東日本大震災時に「東電福島原発事故」との世紀的大参事を引き起こした企業である東京電力の社長が、その発生直後に「炉心溶解使うな!」なる信じ難い社内指令を発動していたとのニュース報道だ。

 ただ、冒頭より元科学者の端くれである原左都子に言わせてもらうならば、「東電原発事故」発生直後の3月15日頃から「福島原発」が炉心溶解(メルトダウン)の危機に瀕し実際炉心溶解したのを、承知していた記憶がある。
 その情報を何処から仕入れたかに関しては不確かなものの、とにもかくにも東日本大震災発生直後に、当時の民主党政権の菅直人氏が一目散に「東電福島原発」に駆けつけた事実が記憶に新しい。 何でも、首相経験者には珍しく元々理系の東工大出身だった菅氏が「メルトダウン」を恐れ、その阻止のために一目散に飛行機を飛ばしたのが福島原発現場だったと覚えているのだが…。


 さて、ここでネット情報より 東電社長おわび 炉心溶融「隠蔽と捉えられるのは当然」と題する情報を以下に紹介しよう。
 東京電力福島第一原発事故で炉心溶融(メルトダウン)の判断基準があったのに公表が遅れた問題で、東電の広瀬直己社長は21日、「社会の皆さまの立場に立てば隠蔽(いんぺい)と捉えられるのは当然だ」としておわびした。 第三者検証委員会の報告書で「当時の清水正孝社長が『炉心溶融という言葉を使うな』と社内に指示していた」などと指摘されたのを受け、会見した。
 東電によると、判定基準は、2010年4月改訂の「原子力災害対策マニュアル」に「炉心損傷の割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定する」と明記されていたことにより、福島第一原発事故から2カ月後の11年5月まで炉心溶融だと公表せず「判断する根拠がなかった」と説明してきた。
 しかし、東電は今年2月になって、社内マニュアルの存在を公表。 事故の検証を独自に続ける新潟県の技術委員会の求めで行った調査で存在が分かったと説明した。 東電は問題の経緯や原因を検証する第三者委を3月に設置。 今月公表された報告書は、事故から3日後の2011年3月14日、清水元社長が、記者会見していた武藤栄副社長(当時)に対し、広報担当社員を通じて「炉心溶融」などと記載された手書きのメモを渡し「官邸からの指示によりこの言葉は使わないように」などと耳打ちをさせたと指摘していた。
 第三者委が「官邸からの指示」があったとしたことについては、当時の首相、菅直人衆院議員や官房長官だった民進党の枝野幸男幹事長は否定している。


 さて、2011年3月11日に発生した「東日本大震災」にともなう「東電福島原発事故」に関するレポートを、当時日々掲載し続けた我が「原左都子エッセイ集」より、以下にその一部を反復させていただこう。

 東日本大震災の混乱と平行してもっと恐怖であるのが、表題に掲げた東京電力福島第一原子力発電所に設置されている4機の原子炉の壊滅状態だ。 本日見聞したテレビニュース報道によると、福島第一原発に設置してある原子炉の4機全部が順を追って壊滅状態に陥っているようだ。
 その原因は水素爆発であったり、格納容器の損傷であったり、火災発生であったりするらしいが、それらの破損により検出された3号機近くの放射線量が400mシーベルトであるとの報告である。
 元医学関係者である原左都子も過去において仕事上の関係でRI(放射性同位元素)を取り扱った経験があるが、専門家とはある程度のRIに関する知識があるからこそ、その扱いに関して慎重な行動が可能なのだ。   今回報道が繰り返し伝えている通り、放射性物質とはその被爆量が少量であるならばすぐさま人体に際立った症状が出るという性質のものではない。(それ故に、何らの痛みも出なければ何の症状も表出しない。)
 そういう認識をふまえているからこそ、東京電力も政府も「落ち着いて行動して下さい」とのみの報道に留まっているのであろう。
 それでも私が報道に望むのは、今現在福島原発が放出している“人体への影響が決して少ないとは言えない”放射性物質が将来に渡って国民に及ぼすダメージにまで触れて欲しいということである。 そうすることによって半径30km圏内の住民は将来に渡る危機感を抱け、避難行動あるいは隔離行動を即刻実行できると思うのだが…。
 (本エッセイ集2011.3.15 公開「大震災を追い討ちする原子炉爆発の地獄絵図」より一部を引用。)


  自衛隊や消防庁による懸命の放水、あるいは外部電源からの電力引き込み等々、その作業に係わらざるを得ない決死の覚悟の作業員の被爆量を慮っては心を痛める原左都子である。  ところがその甲斐があるのやら無いのやら、相変わらず福島原発の各号機は灰色の煙や白煙を放出し続ける現状だ。
 さらに、放水溝から放出されて海面に流れ出た放射能の現実とは、 セシウム137の半減期は約30年! これが海水中の魚介類の体内に取り込まれ、今後それを人間が食した場合の被爆は当然ながら考慮されるべきだ。   昨日より降っている雨の影響か、私が住む東京地方でもここ2日間は一昨日の放射線量のデータの2倍近い線量が記録されているようだ。
 そんな折、以下の新聞投稿を見つけた。  事故を起こした福島第一原発は冷却再開へ前進しているようだが、深刻な状況には変わりない。 現場で作業する方々には頭が下がる思いだが、一方で政府をはじめとする報道機関からの報道は確証のないままの「安心せよ」との言葉ばかりが目立つ。 これまで安全神話を一緒に作ってきたであろう(議員や学者?)先生方に「心配するな」と言われても素直には聞けない。 今後の対策がうまくいかなかった時にどのような事態が想定されるのかを具体的に説明せずして(国民に)冷静に、と呼びかけるのは虚しい。 例えば炉心爆発が起きた時の影響範囲のシミュレーション結果などは、あらかじめ公表しておいてもよいのではないか。 それは今後可能性のある危機から国民を守るためには必要な処置と思う。 政府や報道機関には、次に起こり得る最悪の状況も想定した対策や情報提供を願いたい。
 ごもっとものご見解であり、まったく同感である。 さらに、元医学関係者である私の懸念を少し申し述べよう。  現在のメディアの報道とは「今現在福島原発から発生している放射線量は“さしあたり”人体に影響を及ぼす量ではありませんから、安心して冷静に対応して下さい」…… 日々この種のアナウンスの繰り返しである。 
 ところが、当エッセイ集のバックナンバーでも再三述べている通り、放射線被害とは人体への「積算量」で考察していくべきなのだ。  今回の福島第一原発事故による放射線放出量はその距離の近さによっては、現実問題として既に報道が言うところの“安全域”を超過しているのではあるまいか??
 いつまでもいつまでも“安全神話”を市民に発する国や東電、そして報道機関の姿勢から、原左都子は既に将来に及ぶ「責任逃れ」の匂いを感じ取ってしまっている。
 私自身が医学関係の仕事から離れて10数年の後、皮膚癌を患ったことに関しては当エッセイ集のバックナンバーでも再三述べている。 癌発症のメカニズムとは今現在の医学においても解明不明なものではある。 それは承知の上ではあるが、健康体を誇る私が何故に皮膚癌など罹患せねばならなかったのかと考察した場合、自分の癌発症と我が過去における一般人が通常経験しない量の医学関係業務上の危険物質取り扱いとの間に、必ずや何らかの因果関係があったとしか考えられないのだ。
 放射能の影響とは、国やメディアが日々報道している程に生易しいものではない。  歴史的大震災発生後、この期に及ぶ安全の確証なくして“安全神話”を国民に吹聴し続ける国の指導者の置かれている現状の裏側に、既に国力を失った我が国の将来に渡る国民に対する「保障力」の無さを垣間見てしまう原左都子の論理は歪んでいるだろうか?? 
 (本エッセイ集 2011.3.22公開 「確証無き放射能安全報道に警告を発したい!」より一部を引用。)


 「スーパーの水」をご存知だろうか?
 我が家の近くのスーパーマーケットにも、この「スーパーの水」の浄水器が設置されている。  そのシステムとは、初期投資として水を運ぶ容器(500円前後のようだが)のみを購入すれば、その後浄水器から欲しいだけ水を無料で持ち帰れるということのようだ。
 昨日スーパーへ行った際、この浄水器から水を持ち帰ろうとしている小さい子どもを連れた若い夫婦に出くわした。  ご夫婦曰く、「この水は放射性物質が含まれている危険性があるから小さい子どもには飲ませないように、との注意書きが貼ってあるよ。」 「そう言われても、水のペットボトルもただの1本の在庫もないし、子どもには一体何を飲ませればいいのだろうね?」  要するに、「スーパーの水」とは水道水から水を引き入れて浄水するシステムであるため、放射能を除去する機能など一切ないのだ。 
 この夫婦のごとく小さい子どもさんを抱える家庭においては、まさに生命を支える最低限である安全な「水」の確保においても危機にさらされていることを実感させられる。
 我が家とて同様だ。 水道水にヨウ素131やセシウム134等が含まれていると言われたところで、我が家には水ペットボトル1本の買い置きもない。 生命体とは水を摂取することなく生き延びられるはずもないため、放射能入りの水道水を日々摂取する他に方策はない。
 この期に及んで尚、政府や報道は「ヨウ素は半減期が短いこともあり成人には影響は出ない。セシウムも一旦体内に取り込まれてもそのほとんどが排出されるため問題ない」との“安全神話”を繰り返すばかりである。   例えば水道水汚染状況の一部である半減期が30年のセシウム134の“安全性”に関しては、上記のごとくの“専門家”とやらの見解を報道で見聞したが、それは一体如何なる研究データに基づいての発言であるのか?  報道機関が自らの報道の信憑性を高めたいのならば、少なくともそのデータの出展元(如何なる科学誌の何年度の研究結果より引用等)を視聴者に対して明確にするべきである。 単にメディアが簡単に入手出来る国内提携大学研究室等の一研究結果から得た報道を、報道機関自らの検証もなく国民に発して「安全宣言」を施すことの罪の深さを、報道に係わる科学者たる者少しは思い知るべきではないのか??   ここは、少しは“世界標準”も視野に入れて国民を指導する体制に入るべきであろう。
 (本エッセイ集 2011.3.26 公開エッセイより一部を引用したもの。)
 

 福島原発3号機タービン建屋において冷却装置の復旧に向けて作業をしていた東電協力会社の作業員が、原子炉からある程度離れている建屋において通常の1万倍の放射能が検出される中足に被爆し“β線熱傷”を患ったとのことである。 このニュースの続報によると、作業員達が3号機タービン建屋に入るにあたり、事前に室内の放射線量が測定されていなかったとのお粗末さである。
 この不祥事から推測して、どうやら今回の福島第一原発事故に対する国や東電の対応は、原左都子が30年程前に医学関係の仕事で放射能を取り扱っていた頃の放射能管理や職員の健康維持に関する“ずさん”のレベルから一切進化していないと判断できるのではあるまいか??  もしそうであるならば、国内の何処かの放射性物質取扱機関が国や東電に対して適切な指導を出来ないものかとも考慮する私なのだが…
 世界評価尺度では「レベル6」に相当すると判断されたにもかかわらず、国と報道機関はその無知さ故に、今尚国民に対して“安全宣言”を発するしか方策が取れない辛い状況なのであろう。  「信じるものは救われる」との論理が成り立たないのが、放射能汚染の現状ではなかろうか?  放射能には色も匂いもなければ、その被爆を微量受けたところでさしあたって痛くも痒くもないしね~。  
 さらに、福島原発近くの海水中では原発から流れ出た放射線量がヨウ素131に関しては通常の1250倍、セシウム134は117倍との信じられない程の高値である。 これに関しても、“そのうち海水で希釈されるから今現在は影響のない数値である”との東電の“責任逃れ”報道に及んでは呆れ果てる思いの原左都子である。 
 本日(2011年3月28日)午前中の枝野官房長官記者会見の中で、枝野氏は福島第一原発事故による半径20km圏内の避難者に対し、以下のような指示をした。   避難指示の対象となった住民が家財を持ち出すための一時帰宅については「原発から20キロ圏内は汚染されている可能性が高く、大きなリスクがある。特に指示がない限り、決して立ち入らないでほしい」
 既に炉心が損傷している2号機からは、相変わらず高濃度の放射能が放出され続けている。 近くの海水の汚染度合いは、前回の測定地点より北側の海域でもヨウ素131は千倍を超える測定値を記録しているようだ。 釜石では漁港を再開する動きも出ていると聞くが、一刻も早くこの海水汚染を阻止して欲しいものだ。 
 さらに恐怖なのが地下水の汚染である。 地下水の流れは同時に土壌を汚染していくことが明白であり、2号機タービン室内の早急な汚染水の回収除去が望まれる。  このような危機的状況下において、福島原発20km圏内は枝野官房長官も会見で認めた通り、今ここに立ち寄ることは人体への被爆の大きなリスクがあろう。
 (本エッセイ集 2011.3.28 公開エッセイより一部を引用したもの。)

 「原左都子エッセイ集」大震災直後に綴り公開した 「東電福島原発事故」関連バックナンバーの紹介が膨大になった事をお詫びする。


 最後に我が私論に移ろう。

 もちろん、東電社長はもっと早期に「5年前の“炉心溶解ひた隠し”に関するお詫び行脚」をするべきだったが、それをこの期に及んで何処の誰が煽ったのだろう?!?
 その張本人とは、もしかしたら参院選を控えている自民党政権ではなかろうか?

 確かに、民主党菅政権下にて発生した「東日本大震災」の対応がお粗末だった事実も否めないであろう。 ただ私論としては、菅直人氏が理系出身だったからこそ叶った、大震災直後の福島原発炉心溶解(メルトダウン)視察ではなかったのだろうか?
 これがもしも、原発推進を一途に貫く自民党安倍政権下で発生した原発事故だったとしたら、とてつもない「炉心溶解“ひた隠し政策”」に突入していた事であろうと、空恐ろしい感覚に陥る。

 何よりも、炉心溶解した原発近くで今後も生計を営まざるを得ない福島県民の皆様の今後のご健康をお祈りしたいものだが…