原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

笑われても一貫して引退宣言しないイチローを私は尊敬する

2016年06月18日 | 自己実現
 そもそも人を後ろ指さして笑う奴とは、笑われている張本人より数段馬鹿で愚かなのが世の常だ。
 

 6月15日(日本時間16日)、米大リーグ・マーリンズ・イチロー外野手(42歳)がピート・ローズ(元レッズ)の大リーグ通算最多4256安打を抜き、日米通算4257安打をマークした。
 1回の第1打席で捕安を放ち最多安打にあっさりと並ぶと、9回の第5打席では痛烈な右二塁打を放って一気に抜き去った。 
 メジャー通算安打も2979本とし、史上30人目のメジャー3000安打までは残り21本と迫っている。
 (以上、ネット情報より引用。)

 このニュースを受け後に記者会見に臨んだイチロー氏が発した言葉を要約すると、「笑われたこと 達成してきた」(朝日新聞より引用)。 (後に詳細を記す。)

 まさか、数々の歴史的大記録を42歳に至る現在まで現役選手として樹立し続けている 世紀の野球界スーパースター イチロー選手相手に、本気で後ろ指をさしてあざ笑う日本人はいないであろう事と想像する。
 この発言はあくまでもご本人の御謙遜であろうと察するが、スーパースターにしてのその低姿勢観点より自己を冷静に分析した偉業直後の発信に、感動に近い感覚を覚えた私だ。


 それでは、朝日新聞6月17日朝刊記事を参照しつつ、イチロー選手が日米通算4257安打達成後の会見にて発した“イチロー語録”を、原左都子なりにまとめて以下に紹介しよう。

 日米通算4257安打を達成した事に関しては、ここにゴールを設定したことがないので、そんなに大きな事との感覚はない。 チームメートやファンの方が祝福の反応をして下さるとすごく嬉しいのは事実で、これがないと何もない。
 ただ一方で、日米通算記録というところが難しい。 いつか、米でローズの記録を抜く選手が出て欲しいし、年間の試合数が少ない日本だけでローズの記録を抜く事を誰かにやって欲しい。おそらく一番難しい記録だと思うが。
 ヤンキーズの頃等、自分にとってはかなり難しい時期があったが、長い野球人生の中で少しは許して欲しいとも思う。 
 日米合算記録を否定する発言もあるが、自分としてはそういう発言がある方が面白い。 
 (50歳まで現役を通すのかとの記者の質問に対して)、 僕は子供の頃から人に笑われてきたことを常に達成して来ている、との自負がある。 例えば、子供の頃にも野球の練習ばかりしていて「あいつプロ野球選手にでもなるのか」といつも笑われていた。 常に笑われてきた歴史、悔しい歴史が僕の中にある。 これからもそれをクリアしていきたいとの思いはある。
 (以上、朝日新聞記事よりイチロー選手の記者会見内容の一部を引用。)


 ここで一旦、原左都子の私論に入ろう。

 日本が誇る世紀のスーパースターにして、偉業達成直後に、これ程正直に自己を語る人物が存在するであろうか?
 上記のイチロー氏による記者会見回答内容によれば、イチロー氏曰く「笑われた」時期とは、野球に没頭していた子供時代と、ヤンキーズ時代、そして今回の日米通算記録に対する米国内からの疑惑程度だろう。 ただ、それを自分自身の“痛み”と今尚胸の内に秘めているイチロー選手の心理状態こそが素晴らしのではなかろうか。 そんな(極端な表現をするなら)イチロー選手の内面に存在するコンプレックスこそが日頃より類稀な自己鍛錬を続けるイチロー氏の源のエネルギーとなり、42歳にして現役大リーグプレイヤーの立場で大記録を達成出来る根源パワーであろうと私は考察する。 


 話題をずらそう。

 世の(私に言わせてもらならば中途半端な)アスリート達とは、少し体力が衰え始めると高らかに「引退宣言」をするのが恒例となってしまっている。

 以下にそんな実態を批判した「原左都子エッセイ集」2015.8.8 バックナンバー 「フィギュアスケーターの引退宣言 必要ないと思う」 の一部を、今一度振り返らせていただこう。
 何と19歳の若さで、羽生結弦選手が「引退宣言」をしてしまった。
 これ、意地悪視点で考察すると、「僕ら(私ら)が引退する事を寂しく思うファンの皆さんにあらかじめ伝えておきたいのですが…」との、一種“特権力”を伴った潜在意識の下に執り行われる身勝手な儀式のように感じる。
 ところが、ファンではない国民にとっては所詮どうでもよい話だ。  にもかかわらず、特に五輪でメダルを取得した“一応”「大物」フィギュアスケーター氏達は、定例のようにこの儀式をやりたがる生き物、と私は理解している。
 ソチ五輪金メダリストである羽生結弦選手(20)曰く、「ソチで金メダルを取ってその次の五輪で取って終わって、そこからプロをやろうと、自分では小さい頃から決めていた」と語った。  23歳で迎える平昌五輪を集大成にすることについて、「自分がまだベストな状態の時にプロスケーターとしてありたい。 プロとしての仕事を全う出来る体力の状態でやりたいという気持ちがある」と話した。
片や浅田真央氏に話を移すと、真央氏は今後の競技活動についてソチ五輪後、「ハーフ・ハーフ」との回答をメディアを通して国民に伝えた。  その後しばらく彼女なりの休息を取った後、今春、再び国際大会に選手として出場する意思を表明した。
 これぞ、素晴らしい決断だったと私は高評価申し上げる。  女子ロシア勢の群を抜く快進撃等々の背景下に於いて、今後のフィギュアスケート競技界にて浅田真央氏が上位に君臨するには特に技術面に於いてクリアせねばならない課題が盛沢山であろう。 それでも、真央氏が自身の決断として今一度国際大会出場を狙う心情に至った事実こそを私は応援したい。
スポーツ界のみならず、一般人の世界にも様々な「引退劇場」が存在することであろう。  それを宣言した事で何らかの利益が本人にもたらされるのであろうか?? 
 私論として一番みっともなく捉えるのが、「引退します!」と高らかに掲げたはずの輩が、その世界に未練たらしくまた舞い戻って“鳴かず飛ばず”ならまだマシ、その多くは低迷状態ででうだうだ底辺を這いずずる姿である…。
 (以上、「原左都子エッセイ集」バックナンバーより一部を引用紹介した。)


 最後に、今一度、野球界スーパ-スター イチロー選手が 42歳に至るまで現役を続け長年に渡り達成し続けている「偉業」を褒め称えて、今回のエッセイの結論としよう。

 イチロー選手が過去に於いて「国民栄誉賞」を辞退した事実は、皆さんの記憶にもあろう。
 当時のイチロー氏による辞退理由発言とは、(僭越ながらも私が要約するに) 「まだまだ道半ば」 であったと記憶している。
 その後もイチロー選手は、当時の発言通りに世界記録を打ち立て続けている。
 こんなアスリートを、私は未だかつて見た事がない。

 どうか、イチロー選手ご自身が納得する時期に、今後政権が如何に移り行こうと国家は忘れずこの巨業を成し遂げ続けている偉大な人物こそに「国民栄誉賞」を授けて欲しいと、私は希望する。