原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

権利とは何か?

2007年12月05日 | 左都子の市民講座
今回の「左都子の市民講座」では、“権利”について考えてみましょう。


 ○権利と利益との違い

   権利とは、人が単に自分の利益を主張することであろうか?
   例えば、誘拐犯が人質と引き換えにお金を要求することが権利であろうか?
   そんな訳はない。
      ↓
   相手方がその要求の“社会的妥当性”を承認し、その要求に応じる義務を
   認めた場合に初めてその利益は権利となる。

   要するに、権利とは
   “私的利益”や“生活要求”を基礎とするが、それにとどまらず
   “社会的正義”としての“公的性質”をおびたものとして
   “普遍的”に承認された利益内容のことをいう。


 ○権利成立の条件

   権利が成立するための基礎的条件、前提は何か?

    ①平等性
      個人対個人の関係が平等な社会であること
       例:戦前の日本は身分制社会であったため権利が成立する
         社会的基盤は存在しなかった。
             ↓
         戦後、日本国憲法が“法の下の平等”をうたい身分制社会は
         解体された。
             ↓
         しかし、例えば、男女差別、外国人差別等深刻な差別問題は
         社会の中に根強く残っている。
             ↓
         真の権利社会を成立させるためには、まず差別をなくし、
         平等についての基礎観念を確立する必要がある。

     ②対立性

       権利は、個人対個人、あるいは個人対国家の関係が対立関係に
       あることを前提とする。
       法的な対立関係がない場合、もともと権利を問題にする必要がない
        例 : 夫婦間で財産の所有権の帰属が問題となるのは
            離婚など、夫婦に利害の対立が生じた場合である。

     ③社会的正当性についての合意
       
       当事者の一方の利益の正当性が相手方によって承認され
       両者の間に合意が成立することが前提となる。
             ↓
       権利を主張する人は、その正当性を相手にわかってもらうように
       説得する必要がある。
             ↓
       その結果、対立している両者の“平和的共存”のルールとしての
       権利が確立する。
        例 : 嫌煙権問題
             喫煙者には煙草を吸う権利がある。
             しかし、他人に害を与えることは許されない。
                   ↓
             他人に害を与えないように喫煙者を義務付けること
             により、嫌煙権は成立する。
           (ただこの問題は、実際上解決策が困難な問題である。)

     ④利益の範囲の確定

       誰が誰に対し、どのような利益を、なぜ、どの範囲まで主張する
       ことが正当であるのかが、論理的に確定されることが前提となる。
        日本の社会はもともと義理人情の世界だった。
            ↓
        近年、急激に日本の社会は移り変わり、
        人と人とのかかわりが希薄化していく中・・・
            ↓
        日本経済や政治をめぐる資本と権力との癒着、汚職は
        相変わらずはびこり…
       
 残念ではあるが、日本の社会はいまだ“権利社会”と言えるには程遠い… 
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