国家試験の中で、過半数が無試験で資格を取得している業界は、税理士しかありません。日本税理士連合会によると、全国の税理士7万2500人のうち、税理士試験に合格して税理士になった人は3万3000人(45%)といいますから、残りの55%が無試験組です。その大部分が、税務業務に23年以上携わった経験がある国税庁OBです。
ちなみに23年度の税理士試験の合格者は1094人です。受験者数は4万9510人ですから、合格率は2%という狭き門です。税理士試験は科目別の合格が認められていますが、全5科目をすべて合格した人がわずか1094人です。5科目を一度に合格した人はたった1人でした。(pikaさんのコメントで指摘を受け、調べ直しましたら、コメントの通りでした。科目別の合格者は7973人でした)
国税庁OBには税務行政に精通した人たちが多いことは理解できますが、過半数がそういう無試験組が占めるのでしたら、試験制度の意味が問われても仕方がないでしょう。税法に詳しいのは、しっかり勉強した試験組と思います。
それでも、国税庁OBの税理士に会社や事業者が最も期待するのは、ずばり脱税をもみ消してもらったり、減額してもらったりすることでしょう。「所得漏れや税務の不適正処理が分かった時、国税庁OBならば、後輩の税務署員に頼んで上手に処理してくれるから」という人もいます。
脱税は最高7年さかのぼって課税できますが、これが3年なり、2年にしてもらえば、会社、事業者側からすれば大助かりです。7年分の帳簿類を調べるのは税務署にとって大変な作業なので、事業者側が修正申告をしてもらえば、2、3年分で済ますのが普通のことです。しかし、OB税理士に「本来なら7年分を徴税されるところですが、私の顔で2年分にしてもらいました」といわれれば、感謝感激でしょう。
OB税理士が「脱税指南役」を務めて検察当局に逮捕されるケースも出ています。国家公務員の天下りには厳しい声が上がっていますが、国税庁の税務職員との「癒着」を前提としたようなOB税理士の「天下り」は、依頼する側とOB税理士の双方にメリットがあるため、批判の声はとりわけ小さいように思います。
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