月3万5000円のカラ家賃を払い続ける80代の女性の患者さんのマンションの駐車場には娘さんの軽乗用車が駐車しています。女性は車の運転はできません。マンションは2LDKですから、母娘が住むには十分なスペースがありますが、感情的な対立をすることもあり、娘さんは近くのアパートを借りています。
この女性のもう一つの口ぐせが「私はなんにもできません」です。炊事も洗濯も掃除も娘さん任せですから、娘さんが時折、怒りを爆発させるのも理解できないわけではありません。「時間はあるのですから、ゆっくりしたペースで料理をつくったり、洗たくをしたりしたら、いがですか」と話しますが、「しっかりしなけりゃ」と答えるばかりです。
軽乗用車の駐車料は月1万9000円です。車に乗る機会はほとんどないようで、ここ3か月で車が動いたのは、車検のために自動車整備会社に運んだときだけでした。代わりの車が所定の駐車場に止まっていたので、聞くと「車検に出した」ということでした。
カラ家賃と加えますと、月5万4000円の出費です。でも、母娘とも、こうした出費には寛大なようです。「息子の遺族年金がある」と聞いて、調べて見ましたら、公務員の共済年金は、公務員の生計で生活している親に遺族年金が支払われることを知りました。息子さんは結婚していませんでした。
確かに、警察官や消防署員は命がけの勤務があり、死亡することがあるため、こうした支給となるようです。民間の厚生年金では、生計をともにする55歳以上の親が60歳になったら支給を受けられるという一定の条件があります。
駐車場に止まったままで、ほこりをかぶった軽乗用車を見るたびに、貧乏性の私は「もっと有効なお金の使い方があるのでは」とつい思ってしまいます。