ノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典・東京工業大栄誉教授の講演を聞いてきました。京都産業大で今年4月、タンパク質動態研究所が開設されたのを記念したシンポジウムです。大隅さんは同研究所の招聘教授を務めており、当初は150人収容の図書ルームで開く予定でしたが、大隅さんがノーベル賞を受けたことで、約1200人が入れる神山ホールに切り替えたとのことでした。
10月26日の水曜日の午後4時開催でしたが、40分前には一般受付には4列の長い列ができていました。高齢の男女の姿が大半で、どうやら私と同じ団塊の世代が中心とみました。大隅さんのオートファジー(自食作用)理論を聞いても、私同様、理解はできないと思いますが、好奇心と知識欲が高いのはこの世代の特長です。同研究所の意向で、高校生や大学生に聞いてほしい、と若い人たちが招待されていました。
大隅さんは、細胞内タンパク質の動態を研究している同世代の6人の研究者と「七人の侍」を結成し、一緒に講演会を重ねています。そのあとの飲み会が愉しみで、「飲み会のついでに講演会を開いている」という仲間たちです。七人の侍のうち、6人が大隅さんのエピソードをパワーポイントで紹介しました。その一人で同研究所長の永田和宏さん(69)は「高校生や大学生のみなさんに」と前置きして「大隅さんを、あがめるのではなく、あこがれてほしい」と呼びかけました。
永田さんは京都大学で細胞内タンパク質の品質管理を研究する一方、歌人として何冊もの歌集を出しています。妻は歌人として知られた故河野裕子さんで、短歌結社「塔」の前の主宰でした。適切な言葉を選んで「崇めるのではなく、憧れてほしい」と訴えました。若い人が崇めては、行動力に結びつきません、憧れることで若い人たちは同じ道に踏み出す勇気がわいてきます。
私にも、新聞記者として憧れた先輩記者が何人か、おります。その人たちは定年後も自分の信念に基づいた言動を続けています。年をとっても、先輩にあやかった活動したい、と心がけています。