未明に目が覚めたある日、NHKラジオ深夜便の「明日へのことば」を聞いたら、河岡義裕・東京大医科学研究所特任教授(67)が「新型コロナウイルスの制圧を目指す」(11月27日放送)というテーマで話していました。
稲岡教授はインフルエンザウイルスを人工的に作る技術を開発したウイルス学者で、エボラウイルスワクチンも開発しています。米国のウィスコンシン大教授でもあります。
インフルエンザウイルスの人工合成はウィスコンシン大でウイルス研究をしていたとき、ドイツの女性研究者がウィスコンシン大に来たことがきっかけになりました。
インフルエンザウイルスには8本のRNA(リボ核酸)が含まれていますが、女性研究者は1本を作る技術に成功していました。実験室でその技術を見せてもらったところ、実に簡単に作れることがわかったそうです。
そこで、残り7本を作る技術の開発を分担して研究し、インフルエンザウイルスの粒子1ナノメートル(1万分の1ミリ)に8本のRNAを入れることに成功したそうです。
「運がよかった。女性研究者がウィスコンシン大に来なければ、インフルエンザウイルスの人工合成をしようとは思わなかった」と河岡教授。
「幸運の女神には前髪しかない」といわれますが、稲岡教授はチャンスを逃さず前髪をつかんだのです。