70代後半の女性は1年ほど前、脳こうそくを患いました。左脳に血栓がたまり、血栓を溶かす薬を注入されましたが、一時意識不明になりました。3日後、目覚めたら、普通に言葉が出たので、医師がびっくりしたといいます。右の手足に当初はマヒ症状がありましたが、今では気にならないほど回復しました。
ところが、脳こうそくになってから、料理の味がわからなくなったそうです。確かに味覚を感知する味覚野は脳にありますから、脳細胞がダメージを受ければ、味覚障害が起こるかもしれません。
でも、女性の脳こうそくは軽度でしたから、脳細胞が大きなダメージを受けたとは考えられません。味覚は舌の味蕾で感じるものですから、「舌を出してください」と言いました。
女性の舌には、舌のコケといわれる舌苔がびっしりはりつき、舌の表面は真っ白です。これでは味蕾が感知することが難しいです。
舌ブラシを購入して、舌苔を取り除くように伝えました。舌ブラシは味蕾を傷つけないよう、なでるように除去する方法を示しました。
数日たって訪れた女性に聞きますと、「味覚が戻ってきました」とうれしそうに答えました。