NHKラジオの明日へのことば「正しい知識が命を救う~地震のメカニズム」で鎌田浩毅・京都大名誉教授(地球科学)は「南海トラフ地震は100年に1回は起きている」といいます。次の地震は2035年±5年で発生すると予測します。
鎌田さんによると、南海トラフ地震は1707年の宝永地震、1854年の安政南海地震、1946年の昭和南海地震とほぼ100年置きに発生しています。南海トラフ地震は海からのプレートが陸のプレートに沈み込み、陸側のプレートのひずみがたまってはじけたときに起こります。
震源地は静岡県沖、愛知県沖、高知県沖の三カ所で、次の地震は宝永地震と同じ三か所同時発生となると予測しています。
その根拠となるのが、高知県・室津港の地震の隆起量です。地震のエネルギー量を海岸の隆起量で測るそうです。地震が大きければ隆起する高さが大きい、さらにプレートの沈み込みで地盤が沈んでいきます。前の地震で隆起した分と同じくらい沈めば次の地震が起こると予測します。
どれだけ隆起したかという100年以上前のデータはないのですが、唯一高知県の室戸岬にある室津港に土佐藩の港番が記録していた古文書があったのです。それによると、宝永地震では1.8メートル、安政南海地震では1.2メートルの隆起があり、昭和南海地震では1.15メートルでした。それらをもとにはじいた次の地震の予測値が2035年±5年です。
だが、東京新聞記者の小沢慧一さんが書いた「南海トラフ地震の真実」(第71回菊池寛賞受賞)によると、室津港は人工的に何度も掘り下げ工事が繰り返されており、隆起の高さを測定するには合理的なところではありません。しかも、この測定方法で地震を予知しているのは南海トラフ地震だけといいます。小沢さんは南海トラフ地震の予測について「百害あって一利なしです。各地域にどんなリスクがあるのかを伝えるべきです」と話しています。