水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (25)嘆(なげ)く

2020年01月29日 00時00分00秒 | #小説

 人は、思い通りにならないとき、なぜ嘆(なげ)くのか? という疑問を雑事をしながら考えてみたい。^^ 考えながらやっていたら、雑事が雑になったり、場合によると失敗するぞっ! とお叱(しか)りを頂戴するかも知れないが、まあ、そんなに深くは考えないつもりだからご安心をっ! ^^ 考えても、ゆっくりとペースを落とすし、手を止めるから、その点は手抜かりがない。^^
 いつやらも別の話に登場したとある春の公園である。一人の老人がベンチに座り、深刻そうに考え込んでいる。そこへ、もう一人の老人が散歩に訪れた。二人はご近所だから、互いによく知っている。
「どうされました? 谷底(たにそこ)さん?」
「… ああ、これは上崖(うえがけ)さん!」
「いつもウトウトされている谷底さんが…。なんぞ、嘆くことでも?」
「いや、そうたいしたことじゃないんですがね…」
「どうされました?」
「いや、話すほどのことじゃないんですよ、ほんとにっ! ぅぅぅ…」
「なんですっ? 気になりますなぁ~」
「いや、ほんとにつまらんことでして、ははは…」
「ははは…言ってくださいよっ! 益々(ますます)、気になります」
「笑いませんかっ?」
「ええ、それはもう…。絶対、笑いませんからっ!」
「そうですかぁ~、ほんとにっ?」
「ええ、ほんとにっ!」
「それじゃ。実は……」
「実はっ!!」
「さっき、50円、落としたんですっ!」
「えっ? 50円?」
「はい、50円…」
「どこでっ?」
「ここでっ!」
「ははは…そんなに嘆くこっちゃないでしょ」
「いいえ。その50円がないと、楽しみにしてたうどんがっ! ぅぅぅ…」
「うどん?」
「ええ、うどん。蓑屋(みのや)のうどんが…」
「…」
 その訳に得心したのか、訊(たず)ねた老人は静かに頷いた。蓑屋とはこの公園近くの美味(うま)くて有名なうどん屋である。老人は
いつも散歩の帰りに蓑屋のうどんを食べて帰るのが日課になっていたのである。
 このように、人はどのような理由で嘆くか分からない? という疑問がある。^^

                                完


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