水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-61- 樹木と組織

2018年07月15日 00時00分00秒 | #小説

 組織は一本の樹木に似通(にかよ)ったところがある。組織を・・平たく言えば会社や店、家族などだが、これらを樹木の枝や葉、根、幹(みき)に分かち、それぞれを組織の構成部分に当てはめることが出来る。葉は言うまでもなく従業員、社員、家族の個人などといった末端の人々に当たる。例(たと)えば会社だが、会社自体は幹であリ、根は末端に広がる組織、これも平たく言えば、出張所、支社、個々の店舗・・などといった類(たぐい)に当たる。枝葉(えだは)や根を繁らせたり張らせ過ぎたりすれば、強い雨風で幹がボキッ! と折れるし、枯らすことにもなる。海外の現地生産工場や支社は根に相当するだろう。海外へ進出し過ぎた結果、根腐れで幹が枯れ、倒産とかのお通夜な事態に至る。チ~~ン! と鉦(かね)が鳴るようなことは戴(いただ)けないから、経営トップには留意が求められる。
「また種(たね)が飛んで生(は)えてるな…」
 ご近所の大木から飛んだ種が自然生(しぜんば)えし、輿神(こしがみ)の家の敷地内に多数、芽吹いた。輿神は、まったり・・とした気分で何も考えず、それらの芽を抜くと鉢へ植えたり、ご近所の敷地に植え替えたりしたあと、敷地内の際面(さいめん)部分に除草剤を、まったりと撒(ま)いた。ところが、それがいけなかった。家の庭木がその影響で枯れ始めたのである。迂闊(うかつ)を通り越し、ぼんくら・・だな…と輿神は自(みずか)らのアホさ加減(かげん)を、まったりと思った。が、過失は元に戻(もど)しようもない。過失責任を償(つぐな)うという気分でもなく、輿神は水に溶かした栄養剤をまったりと施(ほどこ)し、樹木の回復を願った。そして、その庭木を、しんみりと見て、まったりと思った。
『飛んで生えた芽は、さしずめ産業スパイか…』
 と。そして、また考えた。
『事態に気づかず、何げなく除草剤を撒(ま)いて庭木を弱らせる・・というのは機密情報が漏(も)れることを意味する…』
 と。そして、またまた考えた。
『そうなると、組織は弱体化し、下手(へた)をすれば倒産だな…。家族なら崩壊(ほうかい)か…。この木、大丈夫かっ!?』
 と。
 その後、輿神の庭木がどうなったのか? 私はよく知らない。ただ、樹木と組織が、よく似通っていることは確かだ。^^

                                 


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