水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

泣けるユーモア短編集-77- 内容

2018年04月22日 00時00分00秒 | #小説

 モノの内容は大事だ。美人やイケメンであろうと、人柄(ひとがら)という内容が伴(ともな)わないと、これはもう、野球の試合ではないが、アウトっ! と審判のように握った拳(こぶし)を上げ、声高(こわだか)に叫(さけ)ばねばならない。内容は、それほど大事だということだ。もちろん、外面(そとづら)、内面(うちづら)とも内容がいいに越したことはないのだが…。スポーツでも同じで、勝負に勝ち、内容で負けるということがある。むろん、勝つことは大事だが、内容が伴わない勝ち方は、観戦者に毛嫌いされてしまう。第一、自分自身に負けている訳だ。
 骨董好きの二人の会話である。
「ほうっ! なかなか、よさそうなモノを買ったなっ! 鹿馬草(かばくさ)君」
「いいでしょ! 掘り出し物でしてねっ! ははは…少し、値(ね)は張りましたがっ!」
 猪芋(いいも)に褒(ほ)められた鹿馬草は、機嫌のいい声で返した。猪芋は手に取ってそのモノを鑑定するように見た。
「… 待てよっ! 外見(そとみ)はいいが、こりゃ、内容が違うっ!」
「どういうことですっ!?」
 鹿馬草は訝(いぶか)しげに猪芋を窺(うかが)った。
「いゃ~、君には悪いんだが、本物はこんな内容じゃないんだ。コレは土産用の安物(やすもの)だよ」
「ええぇ~~~っ!!」
 鹿馬草は、ショボい泣けるような声で驚いた。
 内容が伴わないと、まあ、こういう話になる。だが、本人がいい内容…と思えば他人目(たにんめ)は関係なく、それが最高の内容だとも言える。

                               完


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