代役アンドロイド 水本爽涼
(第123回)
『帰られたようね…。どうしようかと思ったわ』
保が振り向くと、すぐ後ろに、いつ現れたのか沙耶が立っていた。
「沙耶のことは妹と言ってあるから、今日から俺の妹だ。奈々と二人か…」
『ああ、妹さんがいるって言ってたわね』
「そう。遠い田舎だけどな」
『怪獣、長左衛門の生息地ね』
沙耶の感情システムの融和プログラムが働き、沙耶は少し砕けた物言いをした。
「ははは…、お前、俺以上に口悪いな」
『そこまで言えば、口が悪いのか…。難しいわね』
沙耶は考え込んだ。
「いや、まあ…。いいんだ、いいんだ。そんな言い方もあるからな」
『そう?』
「ああ、ドンマイ! ドンマイ!」
保としては沙耶を考え込ませないように宥(なだ)めているつもりだった。確かに、保の祖父である長左衛門は、なかなかの強敵で油断がならなかった。沙耶が言うように、それは絶えず警戒しておかねばならない。この前は中へ入らず、スンナリと入口でUターンしたから事なきを得たが、いつ現れ、さらに上陸するか分からない。加えて、長左衛門には沙耶のことはバレていて、保の彼女と怪獣は思っている節があった。注意せねばならない問題は、もう一つあった。
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