水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百九十回)

2011年04月12日 00時00分01秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百九十
 アジアの一角で発生し猛威をふるったウイルスは、わずか一ヶ月で世界各地に飛び火した。これでは何のための輸出入禁止決議なのか…と、国連で疑問視され始めた頃、発生地付近で最初の死亡者がでた。WHOは蒼ざめ、私もそのニュースに唖然とした。ウイルスを止める手立てのない現状では、孰(いず)れ人類は滅(ほろ)んでしまうであろう…と刹那、思えた。
 国家戦略局長の煮付(につけ)先輩は、私以上に驚愕(きょうがく)していた。幸いにもこの時点で、我が国では感染家畜の報告はされていなかったが、世界に蔓延(まんえん)する勢いを見せているウイルスが日本へ侵入するのは時間の問題かと思われた。だから煮付先輩も必死なら、小菅(こすが)総理、雑穀(ぞうこく)厚労相以下の閣僚も必死で、東奔西走していた。人類に手立てがない以上、ここは見えぬ力に縋(すが)るしかない…。よし、お伺いを立ててみようと、ふと玉の霊力を思った。玉ならば、何かのヒントを与えてくれるかも知れない…という淡い希望的観測だった。で、私はさっそく念力を集中して想念を送ってみることにした。過去に一、二度、テストパターンだが、私からコンタクトをとり、玉のお告げを呼び出すことに成功したことがあったから、強(あなが)ち捨て鉢な賭けではなく、ある程度、呼び出せる自信はあった。さすがに人目のある所や時間帯では…と思え、マンションへ帰着してからにしようと思った。


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