幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第三回
幽霊平林が云ったとおり、念力の結果がでたのは、その二日後だった。マスコミ各紙は世界各地で生じている紛争の消滅と、国連で武器売却禁止条約がすべての国々の賛成で批准されたことを伝えていた。普通では百パーセント起こり得ない事態で、各国が利害から解き放たれ、地球規模の平和を模索する動きが、わずか二日で条約の批准まで進んだのだ。それを可能にしたのは、如意の筆の荘厳な霊力によるもの以外、考えようもなかった。
上山は幽霊平林を居間へ呼び出していた。卓袱台(ちゃぶだい)の上には、武器売却禁止条約の批准を報じる大見出しが掲載されていた。
「こんな時間に申し訳ない…」
『いやあ、僕に夜昼は関係ないですから…』
幽霊平林は陰気にニタリと笑った。辺りは、すでに夕闇が迫っていた。冬場だから日没も、かなり早い。五時前だというのに、もう暗闇のベールが辺りを覆っていた。上山は勤務を終え、帰宅したところだった。実は、朝刊を手にした時点で気になっていたのだが、お得意先との重要な会合があり、どうしても幽霊平林を呼び出せなかったのである。
「これだよ!」
上山は、幽霊平林の目前に新聞を広げて差し出した。
『うわぁ~! 効果があったようですね』
「あったって、君ね、こりゃ想定外だよ!」
『荘厳な霊力って絶大なんですねぇ~』
「ああ、まあよかったよ。武器輸出禁止条約が、わずか二日で、だよ!」
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