あんたはすごい! 水本爽涼
第三十八回
「面白くはありませんが、まあ興味をお持ち戴ければ、それで結構です…」
沼澤氏は終始、冷静である。
「え~と、それじゃ次は私ね?」
早希ちゃんは席を立つと、私達が座るカウンターの方へ近づいてきた。
「じゃあ、ママさんと同じように、玉の正面へ立って下さいますか?」
「ええ、いいわよ」
早希ちゃんはママが立つ酒棚側へ入ると、臆することなく水晶玉の前へ立った。沼澤氏は水晶玉をじっと覗(のぞ)き込むと、そこに映った早希ちゃんの姿を目を細めて凝視(ぎょうし)した。そして、ママにやった時と同じような仕草で約二分、長い祝詞(のりと)のような長文を読み始めた。その後も全てがママの時と同じ繰り返しで、冥想の後、静かに両の瞼を開けた。
「あなたはどうも、玉の事実を信じておられぬようです。当然、玉もそれが分かっておるのか、あなたの運を探ろうとはしていません。というより、むしろ探ることを拒絶しているのです。よって、あなたの未来運は予測不可能です」
「沼澤さん、それは、この玉の事実を信じる者のみが占えるってことですか?」
「ええ、まあそうです。半信半疑でもいいのですから…。信じて戴ける方は玉もよく承知しております」
早希ちゃんは小声で、「…やってらんないわっ」と、投げやりぎみに呟くと、元の席へと戻って座った。
第三十八回
「面白くはありませんが、まあ興味をお持ち戴ければ、それで結構です…」
沼澤氏は終始、冷静である。
「え~と、それじゃ次は私ね?」
早希ちゃんは席を立つと、私達が座るカウンターの方へ近づいてきた。
「じゃあ、ママさんと同じように、玉の正面へ立って下さいますか?」
「ええ、いいわよ」
早希ちゃんはママが立つ酒棚側へ入ると、臆することなく水晶玉の前へ立った。沼澤氏は水晶玉をじっと覗(のぞ)き込むと、そこに映った早希ちゃんの姿を目を細めて凝視(ぎょうし)した。そして、ママにやった時と同じような仕草で約二分、長い祝詞(のりと)のような長文を読み始めた。その後も全てがママの時と同じ繰り返しで、冥想の後、静かに両の瞼を開けた。
「あなたはどうも、玉の事実を信じておられぬようです。当然、玉もそれが分かっておるのか、あなたの運を探ろうとはしていません。というより、むしろ探ることを拒絶しているのです。よって、あなたの未来運は予測不可能です」
「沼澤さん、それは、この玉の事実を信じる者のみが占えるってことですか?」
「ええ、まあそうです。半信半疑でもいいのですから…。信じて戴ける方は玉もよく承知しております」
早希ちゃんは小声で、「…やってらんないわっ」と、投げやりぎみに呟くと、元の席へと戻って座った。