水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (1)助かる

2019年06月19日 00時00分00秒 | #小説

 人生を歩んでいると、いろいろなところで人に助けられ、助かっている・・という事実に気づかされる。もちろん、全然気づかず、気づかないまま生きている人も多い訳だが、この助かる・・という事実に着目(ちゃくもく)して話を起こすのも面白いのではないか?  と思わなくてもいいのに思った次第だ。^^ これから展開するお話は、日常で起きている、そんな助かるお話の数々である。
 とある飛行場である。一人の乗客がキャンセル待ちの搭乗券
を求めて窓口で係員と話をしている。
「いや! どうしても帰らないと具合が悪いんですっ!」
「そう申されましてもお客さま、すでに完売されておりますので…」
 そんな美人でないにもかかわらず、化粧を塗りたくって美人に見せようとしているキャリア・ウーマンが、『こちらは、ちっとも具合悪くないわっ!』と内心で思いながら、そうとも言えず、笑顔で返した。
「なんとかならないですかっ! キャンセルがあれば助かるんですがっ!!」
「はあ、予約のキャンセル待ちですね? …あちらでおかけになって、しばらくお待ちくださいませ…」
 係員は、『出るわきゃないでしょ!!』と内心で思いながら、そうとも言えず、ふたたび笑顔で返した。
 乗客が待合室で心配顔で座っていると、もう一人の乗客が隣りの椅子へ座った。
「どうされました?」
「はあ、実はホニャララで弱っておるんです…」
「なんだっ! ホニャララですかっ!! 私も同じ便ですよ! 奇遇ですなっ! 私、一便遅らせても別に構わないですから、よろしければお譲(ゆず)りいたしましょう!」
「ええっ! 助かります…」
 乗客はもう一人の乗客に深々と頭を下げて礼を言った。
「そんな…」
 もう一人の乗客は、搭乗券を渡し代金を受け取ると、楚々と窓口へ向った。
 このような助かる偶然がドラマチックに起きることもある訳だ。^^

                                  


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