水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-78- 担(にな)い手

2018年11月08日 00時00分00秒 | #小説

 公私、善悪を問わず、様々(さまざま)な組織を統帥(とうすい)する[束(たば)ねる]担(にな)い手は、その力量(りきりょう)が試(ため)されることになる。その器(うつわ)でない者が組織を統帥すれば、シッチャカメッチャカとなり、組織は乱れたり分裂を余儀なくされる訳だ。多かれ少なかれ組織が大きくなればなるほど、考え方が違う幾つものグループが生じるのは当然で、やむを得ない。組織の担い手は、この幾つもの考え方の違いを超える絶対的な信任がなければ永(なが)く君臨(くんりん)することが出来ない。考え方が多少、異(こと)なっても、ああ、あの方ならっ! …と、全会一致へ持ち込めるオーラを秘めた実力者・・それが真の担(にな)い手となり得る存在なのである。
 とある婦人会の会場で、役員の選挙が行われている。二人のしゃべくりマダムが小声で雀(すずめ)の囀(さえず)りのようにチュクチュク、チュンチュンと話し合っている。  
「そうよねっ! 豚丘(ぶたおか)さんなら、間違いないんじゃないかしらっ!」
「あなたもそう思うでしょ? 牛窪(うしくぼ)さんは少しお高く留(と)まってらっしゃるように思えるわっ!」
「そうなのよっ! 和風のお着物は素敵なんだけど、お高いのよねぇ~。もう少しお安く、いえっ! お低くされれば申し分ないんだけど…」
「なんか見下されてるようなところがあるじゃない。それが腹立たしいのよねっ!」
「ええ…。新しい担い手にはねぇ!」
「そう! だから豚岡さん」
 しばらくして壇上の選管(せんかん)から選挙結果が報じられた。
「開票結果は以上の通りです。よって、新会長は鳥滝(とりたき)翼(つばさ)さんと決定いたしました」
 会場から満場の拍手が起こり、鳥滝が座席から立ち上がり、笑顔でお辞儀した。雀のような二人のしゃべくりマダムは予想外だったからか、焼き鳥にされたように押し黙った。
 担い手は手頃な価格、いや、手頃な人が愉快な気分になれていいようだ。^^

                                 


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