水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

雑念ユーモア短編集 (87)返金

2024年05月27日 00時00分00秒 | #小説

 橘はネットで商品を購入した。ところが、その商品を使用しようと設置を業者に依頼したところ、業者が、液化天然ガス取締法のコンプライアンス強化で設置できません…と攣(つ)れなく断られてしまった。購入商品は宙に浮いてしまったのである。¥30,000近い商品だったため、橘は宙に浮かせておくのも如何(いかが)なものか…と思慮し、ネット販売先でキャンセル手続きをした。そして、手続きが業者から了承されたため宅配便で返品した。橘は、やれやれ、これで返金される…と安堵(あんど)した。ところが、である。そのひと月後、とある買い物をして預金通帳から額を引き出したところ、クレジット会社から購入商品の全額が引き去られていたのである。橘は、? と頭を傾(かし)げた。キャンセルで商品は返品したのだから引き去られるはずがない…と考えた訳だ。橘はネット販売先へ電話をかけた。
『所有者証と電池、本人確認票が入ってませんでしたので…』
「えっ!? 着いた箱でそのまま送り返したのですが…」
『もう一度ご自宅にないか、確認してもらえませんか?』
「ちょっと、このまま待って下さい…」
 橘は書類ファイルを電話を切らずに調べ始めた。すると、ファイルの中に言われた書類があった。入れ忘れていたのである。
「ありましたっ!」
『そうしましたら、箱などで梱包(こんぽう)して送って下さい』
「はいっ!」
 橘はこれで返金される…と安心した。
「返金はいつ頃になるんでしょう?」
『到着確認をして、その後になります…』
「全額、返金してもらえるんでしょうか?」
『開封されてますから、会社の規則で半額返金となります』
 橘は半額か…と、ガックリ肩を落としたが、それでも返してもらえるなら…と雑念を湧かせた。
「よろしく、お願いします…」
 一党独裁はよくないな…と、電話を切った橘は飛躍した雑念を湧かせた。橘の飛躍した雑念の構図は次の通りである。
 一党[政府与党の]独裁→他の政策集団は手も足も出ない→法強化‎[コンプライアンス強化]→使用不可→暮らしにくい→庶民泣かせ[橘を含む]→クーリング・オフの返金額[全額]→会社の規則[開示により半額]→ぅぅぅ…
 橘さんを踏まえ、皆さんも一考、下さい。^^

                   完


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