水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

雑念ユーモア短編集 (62)お告げ

2024年05月02日 00時00分00秒 | #小説

 どうも最近、妙なことを考える…と雑念に悩まされ続ける西岩は、とある雑居ビルにある占い専門店へと入っていった。
 店へ入ると、頭に紙垂(しで)を挟み込んだ細い注連縄(しめなわ)を付け、巫女らしき格好をした白髪の老婆が現れた。
「はいはい…いかが、されましたんじゃ?」
「最近、妙な雑念が浮かびますので、見てもらおうと思いまして…」
「さようでござりましたかのう。まあ、お座りになって下さりまし…」
 老婆は西岩に対峙し、椅子へ座りながらボソボソと言った。テーブルの上には大きな水晶玉が一つ、玉台の上へ鎮座していた。老婆は水晶玉を覗き込みながら頷(うなず)いた。
「あ~なるほど。あんたさん、最近、年下の方に先を越され出世ば、されましたのう…」
「はあ、まあ…。毎年のことですから…」
「自分は自分じゃと気にされねば、道はかならず開けるぞよ・・と、お玉様は申しておられますじゃ」
「そんなことを?」
「お玉様のお告げですじゃ。間違いは、なかですばい」
「そうですか…」
「はい。五千円…」
 それを聞いた西岩は憑(つ)き物が取れたようないい心地になり、見料の五千円を支払うと店をあとにした。
 その後、どういう訳か西岩は妙な雑念に悩まされなくなったという。
 お告げを信じる心ひとつで雑念は消える・・というお話でした。^^

                   完


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