蛸山がその声に驚き、海老尾の席へ近づいたのは言うまでもない。
「なんなんだっ、これはっ!!」
電子顕微鏡のモニターに映し出された映像には、悪性ウイルス群がことごとくアポトーシス[自然壊死]した様子が映し出されていた。
「なんなんだっ、これはっ!! と言われましても、見てのとおりとしか…」
「そらまあ、そうなんだが…。どうしたんだっ!?」
「いえ、それを私も知りたいんです。偶然、こうなったとしか…」
「馬鹿か君はっ! 偶然、こうなる訳がないっ! ナニかの結果、こうなったんだっ!」
「ええ、そらまあそうなんですが…。そのナニかのナニが分かりません…」
「その前はどうしたんだっ!?」
蛸山に訊(たず)ねられた海老尾は、自分がした手法と解析機器の手順を蛸山に詳しく説明した。
「と、いうことは、このベクター[外来遺伝物質を別の細胞に人為的に運ぶために利用されるDNAまたはRNA分子]が有効に作用した・・ということになるが…」
「でも、そのベクターは前回も使用しております…」
「そうだね…。妙だなぁ~? 他にしたことは?」
「他にしたこと…」
海老尾は目を瞑(つむ)ると考え始めた。
「あっ!!」
しばらく考え込んでいた海老尾だったが、突然、何かを思い出したように、両手の掌(てのひら)を合わせるとバシッ!! と叩(たた)いた。
「思い出したんだねっ!?」
「はい、所長!!」
海老尾は大きく頷(うなず)いた。
続