世界を震撼させるウイルスの猛威はその後も衰えず、かつて栄えた恐竜の絶滅のように、人類もこの地球史から消え去るのではないか・・という危惧(きぐ)が飛び交い始めていた。日本各地にその極悪変異ウイルスの猛威が広がり始めた頃、海老尾の深層心理に住むレンちゃんにも新たな動きが生じていた。
『いよいよ、我が配下が動き出すようだ。極悪ウイルスのアジトに潜入させたウイルスの情報だ』
『動き出すと、どうなるんです?』
『そんなことは言わずとも決まってるじゃないか。相手が全滅するか、失敗してこちらが全滅するか・・の二つに一つだよ、君』
『そりゃまあ、そうなりますよね。…で、成功の確率はっ!?』
『まあ、五分五分ってところだね。一時間後には結果が分かるだろう…』
『成功すればっ!?』
『そりゃ君、分かり切った話だ。成功すれば極悪ウイルスは消えてなくなるだろうし、当然、世界は元の姿に戻るさ!』
『失敗すれば…』
『人類は絶滅の一途を辿(たど)るだろう…』
『成功もせず、失敗もしない・・となる場合はっ!?』
『インフルエンザのように、良くもならず、悪くもならない・・ってヤツだね?』
『はい、そうです…』
『罹患(りかん)して悪くはなるが、死者も出なくなる場合だが、まあ、確率からすれば低いな…』
『どれくらいの確率ですか?』
『私の予想では、良くなる場合が40%、悪くなる場合が40%、残った20%が良くも悪くもならない確率だ』
『20%でもいいですから、そこまで成功すれば、ひとまずは安心ですよね?』
『まあ、そうだね。ともかく一時間後には結果が出るだろう…』
そして、その一時間後が瞬く間にやってきた。
「所長!! 上手くいきましたっ! これを見てくださいっ!!」
海老尾が電子顕微鏡のモニターを震え声で絶叫しながら指さした。
続