使っていた物が痛んだとき、『部品保有期間を過ぎており、部品がないため修理できません』などと言われる場合が多い。そんなとき、思わず、『ないのかいっ!』とテンションを下げ、不如意(ふにょい)を嘆(なげ)きそうになるものだ。^^ 最近の低成長の時代では、こうした傾向が頓(とみ)に強く、特に電化製品ともなれば、部品保有期間10年・・とかを堂々と謳(うた)い文句にしている。これは、暗に、『ははは…痛みましたか? 修理できませんから買い換えて下さいよっ!』とでも言いたげな会社の使い捨て感覚で、こうした経営方針には、誰もが腹立たしくなることだろう。
さて、この部品保有期間という概念を分析すれば、以外にも今後の日本経済の展望も明るくなってくるのでは…と思えるから不思議である。^^
どこにでもいそうな中年サラリーマンの夫が朝から、あ~でもない、こ~でもないとガチャガチャ音声機器を弄(いじ)っている。ゆっくり出来るのは日曜だということもある。
「妙だなぁ~? 昨日(きのう)までは、よく聴こえていたのに…。仕方がないっ! 修理に出すか…」
「あなた、トーストが冷めてしまうわよぉ~~!」
そのとき、キッチンから妻がサイレンのような声を響かせた。
「ああ!! 今、いくっ!!」
五月蝿(うるさ)いなぁ~…と思っても言えない夫は、その場しのぎの言葉を取りあえず返して、携帯を手にした。相手先は電化製品の取扱説明書に書かれていたメーカーである。
『はいっ! …ああ、そうですか。当社には部品在庫センターがございまして、ほとんどの物はケアされるシステムになっております。ですから、部品保有期間などは一切(いっさい)、ございません。お話の内容から致(いた)しますと、おそらく修理は可能と存じます。書かれております先へお送り願えれば…』
「ははは…これはこれはっ! お宅の会社を選んでよかったですよ、ほんとにっ! 他社は、ほとんど買い換えですからねぇ~」
『当社は、世界に誇(ほこ)る製品ケアを目指しております』
「なるほどっ! 会社は信用が第一ですからなっ! ははは…」
そのとき、妻の第二声が、ふたたびキッチンから轟(とどろ)いた。
「あなたぁ~~!!」
「あっ! ではっ!」
夫は慌(あわ)てて携帯を切ると、キッチンへ走った。
「危ない危ないっ! 信用、信用っ!!」
部品保有期間を分析すれば、妻の信用度に似ていることが分かってくる。^^
完