水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <36>  浮かぶ瀬

2019年01月05日 00時00分00秒 | #小説

 諺(ことわざ)に、━ 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあり ━ というのがある。この諺を分析すれば、要するに、迷っていることでも思い切りよく勇気を持ってやれば、案外、上手(うま)くいくものだ・・ということである。むろん、上手くいかず、浮かぶ瀬に乗った途端(とたん)、沈む・・ということも有り得る。そういうときは、お気の毒っ! と慰めの言葉をかける他(ほか)はないのだが…。^^
 浮かぶ瀬も、今のような世知辛(せちがら)いご時勢(じせい)ではビミョ~~な存在以外のなんでもない。
 とある平凡な会社である。二人の社員が語らっている。
「まだ、これだけあるんだ。なんとかして欲しいよっ!」
「いや、お前は、そんなにしなくっても大丈夫さっ! ははは…苦労性(くろうしょう)な奴(やつ)だなっ!」
「そうかぁ~? いや、こうしてやってる残業が、俺にすりゃ浮かぶ瀬なんだからな」
「いやいや、やったとしてもだっ! 飛ばされるときは飛ばされるんだぜ。お前もこの前の人事、知ってるだろっ?」
「ああ、あいつな! あいつ、今、どうしてる?」「まあ、それなりに地方で出世してるそうだぜ」
「そうなんだ…」
「地方へ飛ばされた結果だから、返って浮かぶ瀬だつたのかもなっ!」
「やめたやめた…」 
 浮かぶ瀬の残業に見切りをつけ、二人は巷(ちまた)の飲み屋へと向った。
 分析の結果、浮かぶ瀬は深く考えない方が浮かぶようだ。^^

                                 


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