水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <32>  納得(なっとく)

2019年01月01日 00時00分00秒 | #小説

 人によって納得(なっとく)の程度は異(こと)なる。飴玉(あめだま)一つで、いとも簡単に納得する人から、数億を積まれても納得しない人まで、世の人は様々(さまざま)なのである。この納得という心の動きを分析するのも案外、面白い。この慌(あわただ)しい師走(しわす)に、何を呑気(のんき)に分析してるんだっ! と、怒られる方もお有りだろうが、そこは一つ、温(あった)かい甘酒でも啜(すす)ってご容赦(ようしゃ)願いたい。甘いものがダメな方は、美味(おい)しい肴(さかな)で酒でも飲んでいて欲しい。だが、孰(いず)れもセルフ[ご自身]でお願いする。^^
 仲のいい二人の男が飲み屋店で怒りをぶちまけている。どうも今回の人事異動が不満な様子だ。
「だろっ!? 俺が怒るのは、その点だっ!」
「たかだか入社3年の青二才に、10年目の俺らが負けたんだぞっ! 納得できるかっ!」
「いや、その通りだっ! あんな若造(わかぞう)に、『はいっ、分かりましたっ! 課長補佐代理っ!』なんて言えるかっ!?」
「言えん言えん、とても言えんっ!」
 二人は、今春の人事異動で課長補佐代理心得に昇格したばかりだった。
「ぅぅぅ…、派遣社員の連中の方が、まだましだっ!」
 一人の男は激昂(げきこう)して、酒が入ったコップをガブ飲みした。そこへ店主が顔を突っ込んだ。
「まあまあ、お二方(ふたかた)。これは奢(おご)りです」
 店主は美味(うま)そうな一品料理の皿を二人の前へ置いた。
「ああ、どうも…」
 二人は、すぐ納得して大人(おとな)しくなった。
 分析の結果、納得が出来る心の発生は、些細(ささい)なことのようだ。^^

                                 


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