物事がスンナリと思い通りに進む状況を人々は順調(じゅんちょう)と表現する。日本語は表現方法がいろいろとあるから分かりづらい・・とは、ある外国の方の弁だが、裏返せば、それだけボキャブラリーが多い、いわばコボル[コンピューターで表現する高級言語]のようなよく完成された言語ということだ。まあ、それは兎(と)も角(かく)として、順調について分析してみたい。例によって、分析しなくったって順調は順調だっ! と言われる方もいるだろうが、それも一理(いちり)あり、お暇(ひま)な方は読んでいただけばいいくらいのものだ。^^
順調にやっている内容が推移(すいい)するには、それなりの原因、理由、経緯(いきさつ)、運の巡り、間(ま)の良し悪しetc.が介在(かいざい)していることを、当のやっている本人は認識していない。認識してやっているなら、それは神様であり仏様・・ということになる。^^
ごった返す連休のとある観光地である。
『お子様が迷っておられます。ご家族の方は館内の案内受付まで至急(しきゅう)、お越し下さいませ…』
美声を自慢げに響かせ、案内嬢がアナウンスする。迷った子供にすれば順調に歩いていた訳で、決して迷おうとしていた訳ではないはずなのだ。それでも迷った原因を分析すれば、視界(しかい)を遮(さえぎ)ったり進行を妨(さまた)げる大勢の人々・・という原因が見え隠れする。大勢の人々がいなければ恐らくその子供は迷うことはなかったろうし、案内受付に保護されることもなかったはずだ・・と、フツゥ~~の分析ではそうなる。ところが、現実はそうではなかった。その頃、子供の両親は観光地のトイレにいた。
「あなたっ! 早くしてよっ! 次の予定があるでしょ!」
「そんなこと言われても、腹が痛いんだからさぁ~!」
トイレの外で大声を張り上げて切れる妻に、トイレで用を足す夫は弁解がましく返した。妻が切れた原因は夫の俄(にわ)かな腹痛によって順調な行動が妨げられた点にある。^^
「…あらっ? どこへ行ったのかしら、あの子? まっ、いいかっ! その辺にいるわね、きっと…」
いい加減な親もいるものだが、この場合、妻の機嫌が悪かったということに加え、トイレの前に視界を遮る木々が植えられていた・・ということもある。野生動物の場合、こういうケースは余程のことがない限り、まず起こらない。^^ 結局、この家族の順調の崩れは、すべて夫の腹痛にある・・と、こうなる。
順調を分析すれば、案外、つまらない原因が順調を崩すことが多い・・と分かる。^^
完