水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <41>  古い種(たね)

2019年01月10日 00時00分00秒 | #小説

 女性はともかくとして、男性の場合、老人でも精力さえあれば子には恵まれる。例(たと)えが下世話(げせわ)で申し訳ないが、これも偏(ひとえ)に分析の手法であるから、お許しいただきたい。^^ 
 精子は、年齢にはまったく関係なく若い。そこへいくと、植物の古い種(たね)、特に野菜の種ともなると、これは、もういけない! 一年置けば、待てど暮らせど芽が出ない・・という悲しい結果を迎える場合があるのだ。
 古い種を分析すれば、動植物の関係なく、種属(しゅぞく)によるその強靭(きょうじん)さの違いが見えてくるのである。
 とある家庭菜園で男が野菜の種を蒔(ま)いている。
「どうかなぁ? 去年の古い種…。まあ、いいかっ! 出なきゃ、また買うさ…」
 男は独りごちて、野菜の種を蒔き終えた。男の妻はアメリカ・リンカーン大統領の母、ナンシー夫人のような女性で、男が蒔く姿を遠目に眺(なが)めて呟(つぶや)いた。
「… 間違いは始まりの元(もと)・・って言うから…」
 妻は男の間違いを指摘(してき)せず、するに任(まか)せた。
 そして2週間ばかりが瞬(またた)く間に流れた。
「妙だなあ~?」
「なにが?」
「いや、芽が出ないのさ…」
「そら、そうでしょ! 古い種だもの…」
「ああ、やはり…」
「お隣(となり)のお爺(じい)さん、80で子供作ったけど…」
「はいはいっ! 頑張りますよっ! 頑張りゃ、いいんでしょ!!」
 男は妻に焚(た)きつけられた気分がした。
 収穫が遅れたせいで、その年の野菜は小さかったが、分析の結果、古い種は新しい種に勝(まさ)る・・ということもあるようだ。^^

                                 


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