水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 春の風景(第八話) ♪ 鯉のぼり ♪  <推敲版>

2010年04月03日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      春の風景

      
(第八話)♪ 鯉のぼり ♪ <推敲版>          

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


 湧水家の外景 朝
   風に靡いて泳ぐ鯉のぼり。
  正也M「宙天にヒラヒラと泳いでいるのは僕の家の鯉のぼりだ。勿論、鯉のぼりは僕の
家だけでなく、ご近所のあちこちでも泳いでい
       
るのだが…」

○ メインタイトル
   「春の風景」

○ サブタイトル
   「
(第八話)♪ 鯉のぼり♪」

○ 離れ 朝
   宙天高く翻る、庭に立てられた鯉のぼり。渡り廊下に座りガラス戸から眺める恭之介と正
也。
  正也  「じいちゃん、この鯉のぼりは、いつ頃からあるの?(単に、鯉のぼりを見上げて)」
  恭之介「ああ、これなあ…(鯉のぼりを、しみじみと見上げて感慨深そうに)。そう、あれは正也が、まだ二つの時だっ
たなあ、確か…」
  正也  「フ~ン…(興味なさそうに)」
   云った後、チマキを美味そうに頬張る正也。
  正也M「最近の都会ではチマキなどというものは食べないのだろうが、僕達の田舎では普通
に作られ、普通に食す。よ~く考えれば、
       自然の息づく田舎で人間は育てられてきた
ように思える」
   恭一が庭で吹く、下手なハーモニカの音がする。
  正也M「父さんが上手いと自負して吹くハーモニカの音が、♪ 鯉のぼり ♪の小学唱歌を奏
でて庭から流れてくる」
  恭之介「あいつは、ちっとも上達せんなあ。アレ、ばっかりだ!」
   離れと母屋の取り合い廊下の方から聞こえる未知子の声。
  [未知子] 「お義父さま! お茶、置いときます…」
  恭之介「ああ…、未知子さん、すみません!(声高に)」
  正也M「じいちゃんは母さんに星目風鈴・中四目を置いている。一目、置く…とは、よく云うが、
これだけ置く人はそうざらにはいないだろ
        うと思える。伊達に蛸頭を照からせている
訳ではないな…と、敬いつつ見上げた」
   ハーモニカの音が止む。未知子が廊下に置いた茶盆を持って離れへ入り、渡り廊下に座る恭
一。
  恭之介「おお、恭一か…」
  恭一  「バスで行ったのが正解でした。出歩いた日中は多少、暑かったですがね。渋滞とか
詰め込みは関係なかったですから…」
  恭之介「ほお、そりゃよかったな。たまには、夫婦水入らずも、いいもんだろう」
  正也M「今日のじいちゃんはチマキが効いて機嫌がいい。これなら、じいちゃんにチマキを毎
日、食わせておきゃ…とも考えられるが、
       とても実現はしないだろう」
   恭一が運んだ茶をフゥーフゥーと冷ましつつ飲む恭之介。真似てフゥーフゥーと飲む正也。
得意満面にポケットからハーモニカを取り
   出す恭一。それに気づく恭之介。
  恭之介「恭一、もういいから、やめてくれ!」
   真顔に戻り、ハーモニカをポケットに入れる恭一。
  正也M「懇願するようなじいちゃんのひと言に、父さんは真顔に戻り、テンションを下げた」

○ エンド・ロール
   はためく鯉のぼり。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「春の風景(第八話) ♪鯉のぼり♪」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《教示②》第二十一回

2010年04月03日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示②》第二十一回
 叱責はいいとしても、今一つ、幻妙斎の云わんとすることが解せない左馬介であった。
「今日は疲れたであろう。陽が沈まぬうちに早う帰って休むがよい」
 少し怒ったので宥(なだ)める積もりなのか、幻妙斎は優しく言葉を閉ざした。辺りはふたたび静寂に覆われ始めた。左馬介は岩棚にを仰ぎ見て一礼し、洞窟を退去した。既に陽は西山の一角に没しようとしていたが、妙義山の中腹からは、未だ暮れ泥(なず)んで見え隠れしていた。
 その後、左馬介に課せられる幻妙斎からの指示は途絶えた。左馬介はその都度、幻妙斎に修行の開始と終了を告げるのみで、それに対し、首を縦に振り了解の意を伝えるのみの師であった。隔日とはいえ、妙義山へ出向く修行は、駆けては叩き斬り、また駆けては叩き斬る日々の連続であった。だが上手くしたもので、二ヶ月ほど経つと、その要領というものが自ずと備わり、最初の頃よりか四半時ほどは短く回峰出来るようになっていた。それは決して左馬介が、こうしたのだ…と、師に告げられるものではなかったが、以前より機敏に動けるようになったとは、自身も思える左馬介であった。


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