≪脚色≫
春の風景
特別編(下)コラボ(2) <推敲版>
登場人物
湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
湧水恭一 ・・父 (会社員)[38]
湧水未知子・・母 (主 婦)[32]
湧水正也 ・・長男(小学生)[8]
その他 ・・猫のタマ、犬のポチ
○ (回想) 台所 夜
食卓テーブルの椅子に座り、テレビを観ながらコップのジュースを飲む正也。廊下から聞こえる声に振り返る正也。立ち話をする恭一
と未知子。
正也M「テレビを見ながら、風呂上がりのジュースを賞味していると、廊下で父さんと母さんが云い合っているのが見えた。云い合うと
は、両者が相応の力を有する場合だが、いつも父さん蛞蝓(ナメクジ)は母さん塩(ジオ)にすぐ溶かされるから、この表現は少し
誤っているだろう」
風呂上がりの恭之介が浴衣姿で台所へ入り、廊下の二人を覗き見る。
恭之介「ん? …どうした? 恭一!(声を投げ掛け)」
恭一は即答、出来ない。取り繕う未知子。
未知子「あら、お義父さま。別に大したことじゃないんですよ。うっかり、私が銀行へ寄るのを忘れてたもんですから!。明日のお財布が…
(恭之介の方を向き)」
恭之介「えっ? …ああ、恭一は明日、出張らしいですな」
未知子「ええ…それで費用は会社から出るんですけどね、いつも給料加算の後払いでして…」
浴衣の腹に手を入れ革財布を取り出し、中から二十枚以上、新札の一万円札を取り出す恭之介。
恭之介「立て替えて自腹の仕組みですか…。なるほど、粗方(あらかた)は分かりました。いいでしょう! 一両ほど持って行きなさい」
慣れた手つきで取り出した札を指で数え、十枚ほどを未知子に手渡す恭之介。
正也M「一両? 僕が首を捻ると、じいちゃんは浴衣の腹に手を入れ革財布を取り出した。その財布は、遠目からはブランド物のよう
で、高級ぽかった」
未知子「お義父さま…、こんなことを、なさっちゃ…」
恭之介「いいんです、未知子さん。普段、お世話になっておるんですから…(少し照れて)。それにしても、手持ちがあり、まあ、よかっ
た…(呟いて)」
バツが悪いのか、軽く笑いながら、場を離れる恭之介。、
二人 「…どうも、すいません!(二人同時に恭之介の後ろ姿へ声を投げ掛けて)」
無言でテーブル椅子へ近ずき、正也の隣へ座る恭之介。
正也 「じいちゃんは、お金持ちなんだね?(小声で)」
恭之介「ははは…何をおっしゃる。正也殿の足元にも及びませぬ(豪快に笑いながら)」
正也M「訊きたかったということもあるが、僕は少々、ベンチャラぎみの言葉をじいちゃんに云った。じいちゃんは笑いながら、お武家言
葉で斬り返した」
しまった、とばかりに頭を掻く正也。沈黙。テレビの音。
○ (回想中のフラッシュ) 台所 夜
財布から新札の一万円札を取り出す恭之介。慣れた手つきで取り出した札を指で数え、十枚ほどを未知子に手渡す恭之介。
正也M「それは兎も角として、じいちゃんの金が父さんの旅費となったのだ。早い話、母さんを介して間接的に、じいちゃんと父さんがコ
ラボした、と考えることが出来るだろう(◎に続けて読む)」
○ もとの台所 夜
食卓テーブルの椅子に、座りテレビを観ながらコップのジュースを堪能する正也。正也の隣で、つまみを食べながら、酒燗をチビリチ
ビリ堪能する恭之介。
正也M「(◎)また、じいちゃんの光る禿げ頭は、仏様の光背のような神々しい輝きなのである。これは、じいちゃんと金ピカのコラボな
のかも知れない(◇に続けて読む)」
○ 茶の間 昼
櫓炬燵を囲み、茶菓子を食べながらお茶を啜る、四人の談笑する姿。
正也M「(◇)その輝く光に囲まれて、僕達家族は長閑な春の陽気の中を、日々、お互いにコラボしつつ暮らしている」
○ エンド・ロール
畑でほころぶ梅の花。囀るウグイス。湧き水家の全景。
テーマ音楽
キャスト、スタッフなど
F.O
※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「春の風景 特別編(下) コラボ」 をお読み下さい。