水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 春の風景 特別編(下) コラボ(2) <推敲版>

2010年04月09日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      春の風景

       特別編
(下)コラボ(2) <推敲版>      

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   
その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

○ (回想) 
台所 夜
   食卓テーブルの椅子に座り、テレビを観ながらコップのジュースを飲む正也。廊下から聞こ
える声に振り返る正也。立ち話をする恭一
   と未知子。
  正也M「テレビを見ながら、風呂上がりのジュースを賞味していると、廊下で父さんと母さんが
云い合っているのが見えた。云い合うと
       は、両者が相応の力を有する場合だが、いつ
も父さん蛞蝓(ナメクジ)は母さん塩(ジオ)にすぐ溶かされるから、この表現は少し
       誤
っているだろう」
   風呂上がりの恭之介が浴衣姿で台所へ入り、廊下の二人を覗き見る。
  恭之介「ん? …どうした? 恭一!(声を投げ掛け)」
   恭一は即答、出来ない。取り繕う未知子。
  未知子「あら、お義父さま。別に大したことじゃないんですよ。うっかり、私が銀行へ寄るのを忘れ
てたもんですから!。明日のお財布が…
       (恭之介の方を向き)」
  恭之介「えっ? …ああ、恭一は明日、出張らしいですな」
  未知子「ええ…それで費用は会社から出るんですけどね、いつも給料加算の後払いでし
て…」
   浴衣の腹に手を入れ革財布を取り出し、中から二十枚以上、新札の一万円札を取り出す恭介。
  恭之介「立て替えて自腹の仕組みですか…。なるほど、粗方(あらかた)は分かりました。い
いでしょう! 一両ほど持って行きなさい」 
   慣れた手つきで取り出した札を指で数え、十枚ほどを未知子に手渡す恭之介。
  正也M「一両? 僕が首を捻ると、じいちゃんは浴衣の腹に手を入れ革財布を取り出した。そ
の財布は、遠目からはブランド物のよう
       で、高級ぽかった」
  未知子「お義父さま…、こんなことを、なさっちゃ…」
  恭之介「いいんです、未知子さん。普段、お世話になっておるんですから…(少し照れて)。そ
れにしても、手持ちがあり、まあ、よかっ
       た…(呟いて)」
   バツが悪いのか、軽く笑いながら、場を離れる恭之介。、
  二人  「…どうも、すいません!(二人同時に恭之介の後ろ姿へ声を投げ掛けて)」
   無言でテーブル椅子へ近ずき、正也の隣へ座る恭之介。
  正也  「じいちゃんは、お金持ちなんだね?(小声で)」
  恭之介「ははは…何をおっしゃる。正也殿の足元にも及びませぬ(豪快に笑いながら)」
  正也M「訊きたかったということもあるが、僕は少々、ベンチャラぎみの言葉をじいちゃんに云
った。じいちゃんは笑いながら、お武家言
       葉で斬り返した」
   しまった、とばかりに頭を掻く正也。沈黙。テレビの音。

○ (回想中のフラッシュ) 台所 夜
   財布から新札の一万円札を取り出す恭之介。慣れた手つきで取り出した札を指で数え、十枚ほ
どを未知子に手渡す恭之介。
  正也M「それは兎も角として、じいちゃんの金が父さんの旅費となったのだ。早い話、母さんを
介して間接的に、じいちゃんと父さんがコ
       ラボした、と考えることが出来るだろう(◎に
続けて読む)」

○ もとの台所 夜
   食卓テーブルの椅子に、座りテレビを観ながらコップのジュースを堪能する正也。正也の隣
で、つまみを食べながら、酒燗をチビリチ
   ビリ堪能する恭之介。
  正也M「(◎)また、じいちゃんの光る禿げ頭は、仏様の光背のような神々しい輝きなのであ
る。これは、じいちゃんと金ピカのコラボな
       のかも知れない(◇に続けて読む)」

○ 茶の間 昼
   櫓炬燵を囲み、茶菓子を食べながらお茶を啜る、四人の談笑する姿。
  正也M「(◇)その輝く光に囲まれて、僕達家族は長閑な春の陽気の中を、日々、お互いに
コラボしつつ暮らしている」

○ エンド・ロール
   畑でほころぶ梅の花。囀るウグイス。湧き水家の全景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「春の風景 特別編(下) コラボ」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《教示②》第二十七回

2010年04月09日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示②》第二十七回
 左馬介に浮かんだ策は、二、三あった。しかし、突き詰めればその孰(いず)れもが不可能なように思えた。一つの策は布切れか何かの遮蔽(しゃへい)物を持参し、それで覆って出る…という策である。それだと確かに火を消さずに出ることは可能なのだ。覆ってあるから瀑水を撥ね返し、燭台の火は消えない筈だ。しかし、要はそこからなのである。首近くある滝壺の水嵩(かさ)の中を、手に持って抜け出ることはまず至難の業であろう。特に瀑水が落下する真下の辺りは、火が危ういどころか自分の身さえも危ういと思えた。ということで、次に考えられる策は、木の小舟を準備して滝へと突入し、燭台もろとも左馬介も舟に乗り脱出するというものである。この場合も勿論、覆う布などは持参する。では、この策で何か危うい点があるだろうか…と、左馬介は考えた。そして、一つの問題があることに気づいた。それは、舟を移動する手段であった。移動するとは勿論、舟上で漕ぐことを意味した。洞穴(ほらあな)へ侵入する時は手に何も持たずともよいから櫓(ろ)は漕げる。だが、問題は洞穴より出る時で、布等で包んだ燭台を手に持って舟に乗り、櫓を漕ぐという運びになってしまう。燭台の火を消さぬように安定させる…という点を考慮に入れれば、最小限、片手で持たざるを得ない。


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