衆議院が解散し、新しくできた「希望の党」が自民党に対する対立軸になることがはっきりしてきた。事実上、民進党を解党する決断をした、前原代表の英断だったと思う。
私はここ数回、「民進党は解党すべきだ」という立場でブログを書いてきた。代表選挙で前原氏に決まり、その後の動きを見て「解党は無いな」と思っていたのだが、突然の衆議院解散に対して、大負けは必至とみて希望の党に組み込むことを決断したのは大きな展開である。民進党が解党する場合、「どう分かれるのか、誰が残るのか」が大きな問題となる。私などは左派を切ってほしいと思っており、前原氏が代表に決まった時にそのような行動をとることを期待していたのだが、それはできず、今回の決定は誰を切るかという判断を希望の党にゆだねたことになる。
民進党からは公認候補を出さず、希望の党に入党してそこから立候補するか、無所属で立候補するかが民進党議員に残された道である。参議院もあるので民進党自体は無くならず、希望の党と連携することになる。これで、小池氏が民進党の左派を受け入れず、希望の党は民進党の右派を軸として構成され、新しい保守が出来上がることを期待している。
テレビでは小池氏が「総理大臣になるかもしれない」というようなことを言っているが、そこまでは行かないだろうと思う。自民―公明が第1党を維持するが、議席数はかなり減らす、というところだと思う。過半数を維持できるかどうかは今後の希望の党の打ち出し方次第だと思う。
希望の党は「寛容な改革保守」という言葉を打ち出しているが、具体的な政策はそれほど出てこないと私は思っているし、付け焼刃的に政策を打ち出さないほうが良いとも思っている。しかし、漠然とした政策に対するイメージは小池氏の中にあるので、民進党の議員からの選別はできると思う。今回は政党再編ができればそれでよいと思う。
いち早く希望の党入りを決めた細野氏が「菅元総理や野田前総理のような総理経験者には来てほしくない」というような発言をしているが、ばかげた発言だと私は思っている。早くも希望の党の中での権力を始めようという姿勢がうかがえる。このような選別をすれば希望の党は失敗するだろうと思う。今、選別に必要なのは政策の方向性を緩やかに合わせて、政党がどの方向に向かうかを打ち出すことである。それ以外の邪念を入れると混乱が続くだけだろうと思う。私は小池氏にはこれができると思っている。
しかし、希望の党は政策全体を打ち出すことには無理があるのでイメージだけで戦える範囲ではそれほど大きな議席数には届かないと思っている。それでも意義は大きい。おそらく選挙後に希望の党、民進党、自由党、大阪維新が合流して対立軸となる政党ができる。それでこの選挙の意義は十分にあったと思う。
私には民進党に「右派」のイメージは殆どありません。今回の希望の党で右派(保守派)と言って良いのは日本のこころ代表の中山恭子氏くらいです。小池氏は中山氏に対し「憲法改正」、「拉致問題解決」、「消費増税反対」に賛同されたとのことですが、おそらく話す人によって意見を合わせていることは容易に想像できます。つまり「拉致問題解決」自体に真っ向から反対する人はあまりいないはずですし、「憲法改正」も中身を言わないと意味がなく、「消費増税反対」もその時の景気次第です。(「バーナム効果」をうまく使う占い師のようなものです。)
そもそも今の国会で野党再編は必要でしょうか。民進党程度の野党でも国会での質問時間は多すぎるほど与えられます(内容は酷いものばかりでしたが…)。烏合の衆では民進党と同じで「反安倍」をいう以外なくなります。「反安倍でしかまとまれないから仕方ない」というのはかつての民進党議員自身の言葉です。政策(選挙公約)はある程度具体的でないと、それこそ(森友、加計の時のように)税金の無駄遣いになりかねません(せっかく解散したというのにです…)。
希望の党(小池氏)は選挙キャンペーンに偏りすぎており、選挙後の政治が大いに不安です。小池氏に対する印象は(かつての小沢氏同様)一流の「選挙屋」です。「政治家」としての実績は都政の大失敗(豊洲移転問題)が示す通りです。選挙でポピュリズムに走りすぎると必ず歪みを生みます。「全てを包括して言う」ことは「何も言わない」のと大差ない気がします。希望の党の入党条件ついては(失礼な言い方になりますが)いっその事「靖国参拝」で踏み絵を踏ませてちょうど良いくらいだと思っています。
※小池氏は「リベラル派は排除」するとのことのようですが、保守は「リセット」してはいけません。小池氏に関しては突っ込みどころが多すぎて書ききれないほどです。曖昧な抽象論やキャッチフレーズでうまく大衆を先導しているように見えますが、何一つ具体的なことを言っていません(その最たる例が党名「希望の党」です)。そして広く浅く言葉をチョイスした結果、(ご本人は知ってか知らずか)多くの矛盾が生じています。そしてその矛盾の結果が残念ながら現実の都政に出てしまっています。
国民が期待している(と私が推定している)のは、「外交や安保は自民党と似た政策で、経済がもう少し明るくしてもらえそうな政党」との位置づけではないでしょうか? (公明党に近い?) 憲法が変わっても変わらなくても、国民生活はすぐには変わらないでしょう。
それに憲法の記述表現如何に関わらず、憲法を変えたら日本が戦争に巻き込まれると真剣に考えている人はごく少数派だし、いまの違憲状態の自衛隊では隊員の士気も維持しにくいでしょう。
政権交代と言っても、前々回の様に、外交も安保もガラッと変えてしまうような考えの政党ではなく、もう少し穏健で、但し「自民党にお灸をすえるような程度の変更」が期待できそうな流れです。
その意味で希望の党や維新、民進の右派等が集まれば面白い力になると思います。この際に各党派の主張の違いを乗り越えて、政権交代を実現する目的で、どこまで妥協できるかです。
それじゃ「自民党と変わらないじゃないか?」との批判が出るのはその通りですが、何を国民が望んでいるか、を考えれば、「国民は大変化ではなく、中から小の変化、その為の野党結集だ」と主張する方がわかりやすいと思います。
但し、今回は自民党の戦術もあって野党の再編が未熟な段階で選挙なので、一気に政権交代は難しいでしょう。マスコミはそれではインパクトが小さいので、針小棒大に報道しているけど、いくら「リベラル結集」といっても、枝野+社民+共産が「一大勢力」になるとも思えない。枝野氏はともかく、野田氏や岡田氏がこのリベラルグループから距離を置くのもわかる気がします。
というわけで、恐らく自公グループが現有勢力維持で、憲法改正に大きく踏み出すと見込んでいます。それで戦後のタブーの一つから解き放たれて、政治が良くなるのではと思います。
UCS-301さんは、小池氏の言動に批判的ですが、この程度のパフォーマンスがないと、ブームになりにくいと思います。私は小池氏に期待はしませんが、マスコミ的には格好のネタとして追いかけ続けるでしょう。発の助成総理の候補としてしばらく前に挙げられた野田聖子氏の現在の埋没ぶりを見ると、やはり小池氏の方がこの種のパフォーマンスは秀でていると感じます。
保守の定義は人によって異なります。しかし、今回の騒動で結果として(保守)派が希望の党に集まったと思っています。安倍総理も保守ではないという人もいてその定義は人によって様々ですが、UCS-301さんの保守(右派)はどういう人なのかは私には分かりません。
小池氏の豊洲移転問題対応は極めてまともだと思っています。問題を起こしたのは前任者です。UCS-301さんは採取した水を一日置いてベンゼンが飛んでから「ベンゼン無し」と発表して豊洲移転を強行しようとしていた前任者を支持しておられるのかもしれませんが、ごまかしがあったら「ごまかしがあった」と発表して、移転を遅らせ、再検討した結果、結局豊洲に移転することにしたのは極めてまっとうな対応だと思っています。
政治家には「選挙」と「政策」という二つの重要な能力が必要であり、「政策」寄りなのが、石破氏、「選挙」寄りなのが小沢氏で、安倍総理は中央あたり、小池氏はやや「選挙」寄りだという点ではUSC-301さんに近い印象を持っていますが、小池氏は小沢氏ほど極端ではないと思っています。
ちなみに私個人の定義としては古典の通り、「右派」については王党派(敢えて云うと日本国憲法第1条の通り)、「保守」についてはエドマンド・バーグが「フランス革命の省察」に示す通りです(依って、考えが古いのかも知れませんが…)。ただ、日本においては保守派が改憲といったり、改革派のはずが護憲であったりと色々ズレているようです。
環境基準の話について、ベンゼンが飛んだ後に測定することは何の問題もないと思います。ベンゼンは「飛ぶ」からです(つまり何年にも渡って摂取し続けることがないということです)。そして地下水を何かに利用するわけでもなく、後は上からコンクリートを打つだけです。つまり問題にならないことにマスコミが乗ってきたためプロパガンダとして利用されたのだと思います(「強行」、「ごまかし」は明らかにマスコミの印象操作です)。石原氏については「報告を受けていない」と何度も仰っています(問題がないからそもそも報告もされていないのではないでしょうか)。そしてその後小池氏が何と言われているかというと「安全だが安心できない」です。つまり情緒論ですが、誰が不安を煽ったかということになります。
前任者のことを言えば、石原氏の前から話は豊洲ありきで進んでおり、舛添氏も「問題なし」として進んでおりました。私は特に石原氏を支持している訳ではありませんが、個人に対する仕打ちがあまりにも理不尽(個人への賠償責任など)と感じました。更に言えば石原氏は議会承認された案件に裁可しただけです。議会承認された全ての案件を、都知事権限で全ての案件について追検証する必要性については無駄と言わざるを得ません。
今回の選挙結果後の政局としては右派・左派を抜きにして、改憲へ前(?)進するのではないかと思っています。これは安倍総理にとっては(自民党の議席は減っても)結果オーライのはずです。安倍総理、小池氏と中山恭子氏はマスコミに露出しないところで話を通しているのではないかと見ている政治評論家もいるようです。安倍総理も実は自民党を再編したいのではないでしょうか。
※ 小池氏の政局の見極め方は抜群のものがあると思っています。そして小沢氏ほど節操なし(?)ではないとも思います。民進党(民主党)は議員の間口が広過ぎました。それとは別に今の民進党議員の変わり身の速さに、国民の信頼が得られるのかは甚だ疑問です(希望の党と民進党は主張が真逆です)。
※ 豊洲移転問題への客観的意見としては、有本香氏の著作『「小池劇場」が日本を滅ぼす』が妥当だと思います。