ウィトラのつぶやき

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突如現れたOHGからのプレッシャー

2011-05-23 08:34:49 | 昔話

1999年順調に船出した3GPPがその後突然現れたOHG(Operator's Harmonization Group)というグループに随分掻き回されることになる。

これは3GPPが設立してから3-2カ月後にアメリカのcdmaグループが同様の趣旨の団体3GPP2を設立したことに対して、世界の大手オペレータが集まって3GPPと3GPP2の一本化を求める声明を出したものである。オペレータの集まりなのでベンダは招待されておらず、オペレータ間で実現性を議論していたが、結局オペレータでは技術が良く分からないのでベンダの意見を聞くという話になった。

このOHGはカナダのオペレータが言い出したものだが、3GPPと3GPP2の一本化の技術的化の可能性に関してはARIBで私が議長をして3GPP設立前にさんざん議論してその結果、一本化は無理だという結論になったので、この議論は3GPPの議事進行を遅らせようとするアメリカ側の嫌がらせではないか、と思ったりしたものである。ドコモは大手のオペレータとして当然OHGグループに入っており、一緒に議論をしたのにこんな話を出してくるなんて、と当時私は思ったものである。ドコモの人は抑えようと努力したけれども抑えきれなくなった、というのが実情らしい。

ARIBで議論した時と同じような点が論点になり、オペレータをなだめるために妥協案を検討した。その妥協案としては、①3GPP陣営はチップレートを4.096Mから3.84Mに変更する。②3GPPと3GPP2の両方で使える端末ができるようにプロトコルを工夫する。すぐには無理なので後で機能追加ができるように仕組みを用意しておく(これをフックと呼んだ)の2点である。

①は3GPP2と合わせたわけではない。3GPP2は3.68Mだったので実質的に意味はない。それまで1フレームを16スロットで検討していたものを15スロットに変更すればできるというエリクソンの提案だった。若干レートは落ちるがエリクソンは実現性に不安を感じていたのだろうと思う。

このような提案を含むベンダレポートを作るためにベンダ間の電話会議を頻繁に行った。これが5月のゴールデンウィークの時期で最後のレポートをまとめる会議はそれぞれの陣営が細かい言葉までこだわり、日本時間で夜の8時から朝の9時までの完全徹夜になった。

これで、一応OHGは納得し、3GPPと3GPP2の合同会合も開いて表面上はお互いにつながるようにしたのだが、結果として特につながるようなアクションは取られておらず、OHGというグループもすぐに消えてなくなった。

世の中、時々このような不合理の起こるものである。


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