ウィトラのつぶやき

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中国の現状がにじみ出た新幹線事故対応

2011-07-27 07:42:55 | 社会

中国で新幹線が衝突して大きな話題となっている。この事故に対する一連の対応に中国政府の現状が良く出ていると感じる。

まず驚いたのは衝突した先頭車両を破壊して埋めてしまったという点である。日本ではこんなことは考えられない。事故原因を徹底究明することが最大の課題である。中国で、マスコミも抑えられるのでこんなことが可能なのだろうと思う。おそらく鉄道省の高官が許可または指示してこういう対応を取らせたものだろう。これに対してはインターネットでの批判が続出した。明らかにおかしいことをやっているので当然と言える。それでも20年前ならこういうことは言えなかったかもしれない。

これに対する中国政府の二つの可能性がある。一つは批判を抑える方向であり、もう一つは批判を受け入れる方向である。どうも政府のさらに上のほうで受け入れることに決定したという感じがある。埋めた先頭車両を掘り返して事故原因を徹底究明する方向に動いた。補償も金額が出てきた。今年初めに鉄道省の幹部が汚職に疑いで解任されており、政府の幹部はこの際に鉄道関係者の体質改善、意識改善を目指したものと思われる。

中国の現状がにじみ出たというのはこういった一連の対応に対してである。ある意味で中国政府は絶対的な権限を持っているので「何でもアリ」で常識では考えられないようなことをすることがある。これが当たり前と考えている人も政府内部には少なからずいると感じる。これは伝統的な中国政府のやり方であり、従って人民は政府のやることや発表をまず疑ってみる、という体質が染みついている。

その一方でこういった体質は改善されてきており、中国政府のトップはできる限り情報公開を行って信頼される政府になろうとしているように見える。今でも「何でもアリ」的な動き方が見えるのは民族問題と、領土問題で、それ以外の一般行政問題に関してはできるだけ古い体質を変えていこうと言った姿勢が感じられる。批判を受け入れることにしたのはこの流れだと思う。領土問題などでは日本を含め周辺の国は困っている。そろそろ常識的な範囲内の動きになるのではないかと期待している。

ある中国人の人からこんな話を聞いたことがある。「中国の近代化にはこれまで二人の偉人がいた。一人目は毛沢東で西欧からの独立を勝ち取った。二人目は小平で経済発展の道筋をつけた。三人目はまだ出ていないが出るとすれば民主化を実現する人だろう」。まさにあたっている感じがする。そして小平以降の指導者も偉人と呼ばれるレベルではないかもしれないが、うまくやっていると私は思っている。三人目の偉人が出るにはまだ少し時間がかかりそうだとは思うが。


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1 コメント

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三番目の偉人? (世田谷の一隅)
2011-07-27 12:54:15
世界の主要独裁国家で一党独裁を終焉させ、民主化を進めた偉人というのは、あまり例がないようですね。

恐らく独裁を終焉するだけで精一杯なのでしょう。ソビエトの場合でも、終焉させたのはゴルバチョフでしたが、その後の評価はさっぱりでした。東ドイツや、東欧諸国で共産党独裁を終焉させて、その後、民主主義や政権を発展させた「偉人」というのは見当たらないですね。

「民衆のレベル」が最終的に、その国のスタイルを決めるのでしょう。中国の場合、まず経済面で民衆の暮らしが段々改善し、一方で、ある段階に大きな経済不況が襲ってきて、幹部の目に余る腐敗摘発で、民衆の不満が爆発して、初めて共産党独裁が転機を迎えるような気がします。

本当に共産党の独裁が崩壊し始めると、大きな、そして長い混乱期が始まるので、恐らくアメリカもロシアも誰もそんな事態を期待していないでしょう。期待するのはマスコミと、一部の中国人民だけではないでしょうか? だから民主化も、それを推進する偉人も、まだまだ先の話ですね(少なくとも10年以上は先の話でしょう)。小手先の改革運動は進むでしょうが、体制側に組み込まれている人達が多すぎるように見えます。
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