今日は好ましいと感じられるニュースがいくつかあった。
ひとつは参議院の議員定数に関する合区法案の成立のニュースである。この法案が成立しても一票の格差は約3倍ということでまだまだ不十分であるが、4.7倍から3倍に減ったという意味では大きな進歩と言えると思う。この点に関しては採決では反対したが公明党の態度を評価したい。連立与党を組む「公明党が県にまたがった合区を進めるべし」と言って民主党を組む態度を示したので、孤立を恐れる自民党が渋々同意したという構図だと報じられている。公明党があのような態度に出なかったら、安保法案と同様に、自民党の意見でこの法案は前に進まなかっただろうと思う。1票の格差3倍と言うのはまだ不十分である。裁判所の判断では「違憲状態だが、選挙は有効」といって更なる格差是正を促す可能性が高いと思う。合区が可能になれば次のステップは容易になると思うので、この一歩は大きいと思う。
この法案のニュースで気になった点もある。合区される鳥取、島根、徳島、高知の議員はあくまで反対と言っているらしいが、どういうロジックで反対しているのだろうか。ニュースなどを聞く限り、「おらが県から議員が出ないのは困る」という単なる駄々っ子がゴネているだけのように聞こえるが、そうなのだろうか。鳥取県の有権者数は50万人弱で全国の有権者数が約1億なので0.5%を切るくらいである。これに対して参議院の定数は小選挙区146名、比例区96名である。しかも3年ごとに半数ずつ改選することにしているので小選挙区の選挙単位での改選数は73名である。従って、鳥取県がら議員を出そうとすれば、改選数を200名以上、つまり参議院全体の定数を500名程度にしないといけないことになる。彼らはこういったことを提案しているのだろうか。それとも、全部小選挙区にして、1回で全て改選という(こうすれば1票の格差を1倍にできる)主張をているのだろうか? マスコミはこういった点を報道してほしいと思う。
他のニュースは経済ニュースである。日経がイギリスのメディアFinantial Times(FT)を1600億円で買収するというニュースである。日程電子版はFTの記事を良く紹介しており関係が深いとは思っていたが買収するとは思わなかった。これは日経が世界に打って出ようと言う強い意志の表れで、これで日経の質が「世界の中の日本」を見るようになってくれればありがたいと思う。もう一つは明治安田生命がアメリカの生命保険会社スタンコープを6246億円で買収するというニュースである。この買収の成否は私には判断できないが「その意気やよし」と言う印象を持っている。金融界も世界に向けて動き始めており、いくつかの失敗例があっても、いずれ成功するのではないかと思う。
読売を中国資本が買った場合を引合に出していますが、そのオーナを礼賛する記事の露出が多くなったり、批判のトーンを低くすることは、すぐに読者は感じるでしょう。そして読者が離れてしまうでしょう。
それではオーナーとして高い金を出して、人事権を左右できるのか? それとも高率の配当を手にできるのか? いずれも露骨にはできません。それなら今回のFTの買収で、日経の経営陣には、どんなメリットがあるのでしょうか?
この種のM&Aが報じられる都度、気になっているのは事業、会社を買収した時点の価値の尺度と、その後事業を運営する際の「価値」をどのように評価するかだと思います。
上場企業の場合は、株式の価値は市場が評価してくれますので、投じた金額と、その時点の市場価値が明確に把握でき、投資事業が成功しているのか、そうでないのかが数字で判断可能です。もちろん数字だけではない戦略的な意味があるのは、どの例も同じでしょうが。
メディアの場合、「支配下」に置いて、どの様に連携を図るかが一つのポイントです。高くなったら売却しようとかを考えていることも重要です。つまり、その事業価値を経営者が、どの様に提議して、企業としての価値を高められるかです。FTが傘下に入って、日経だけがハッピーの状況は、恐らく長続きしないでしょう。逆も同じです。だから、M&Aの評価でむずかしいのは、買収前にどの様に企業価値を定義し、その定義で評価した場合に、買収後に、企業価値が毎年改善しているかを自己分析できるかどうかです。
メディアは利益追求型の産業でないだけに、企業の評価判定が難しいでしょう。それでも買収する方は、少なくとも何らかの尺度で判断をしたと思います。安く買って、企業価値を高め、そして次の買い手に高く売却できれば、経営者としての評価が高まります。
だから、今回のM&Aの将来予測は 色々なシナリオが描けますが、成否を判断するのは、もう少し先になりますね。
まずは日経頑張れとエールを送りましょう。
過去にはライブドアのニッポン放送買収未遂(?)が印象的でしたが、おっしゃるように日本のメディアは買収し難いように感じます(寄ってたかってライブドアが潰された印象です)。日本は総じてメディアリテラシーに鈍感とばかり思っていましたが、メディアを使う側はかなり敏感で、やはり分かっていて使いこなしていると再認識しました。(大まかに言って朝日、読売、産経は左派右派の違いこそあれ米国の主張を代弁している印象です。日経は経済紙のウェイトが高いせいか、間接的にチャイナを代弁しているようにも聞こえます。毎日は良くわかりませんが、TBSと同様に”反日”のイメージです。)
詳しいからくりは知りませんが、政治と関係が深いので買収が制限されていて、それで読売の渡辺恒雄氏のようにおかしな行動ができるのだと思っています。
地方格差と一票の格差は全く違う問題だと思っています。地方が元気がないのは出身の政治家が少ないからではなく、現在でも地方出身の政治家が多く、地方には税金を補填しているにもかかわらず格差は広まるばかりです。代議士を増やせば解決する問題ではないことは明らかです。
私は官僚の仕事の仕方が大きな原因だと思っています。オリックスの宮内氏が経営者ブログに書いていましたが、オリックスは元々大阪の会社だったのだが東京に本社を移した。その理由は東京にいないと産・官・学のトライアングルにうまくは入れないからだ、と言っています。
つまり政府の委員会などが一回2時間の会議が頻繁にあり、官僚がしょっちゅう訪問して意見交換する。官僚は有力企業のトップトップにこれを繰り返すことでことで国の方針を決めていく、と言った官僚の行動パタンのことを言っていると思います。
アメリカなどでは広すぎてこういう決め方はできないいので電子メディアと合宿を組み合わせて決めている。日本もそうするべきだと思います。
今、自民党が取り組んでいる地方創生も、このパタンを変えない限りバラマキに終わるだけだろうと思っています。
世界的に見れば、日本に於ける単位人口当たりの国会議員数はかなり少ない部類で、むしろ今よりも増やして良いくらいです。米国は国会議員の割合が日本より少ないのですが、州で最低1人ずつは確保されています。メディアが「派手に与党の足を引っ張る野党議員」ばかりをクローズアップするため、国会議員は要らない(多すぎる)と思われているのではないでしょうか。ですので「身を切る改革」にはむしろ懐疑的です。私は各県で両院共に国会議員を最低1名ずつは確保すべきと考えていますが、そもそも今の県の粒度が細かすぎる(47都道府県は多すぎる)ようにも感じます。参議院はいっそのこと米国上院のように各県2名ずつで、2年毎に半数入れ替えくらいでよいと思いますが、如何でしょうか。
日経のフィナンシャル・タイムズ買収のニュースを聞いたときは、「やるなあ」という感嘆と同時に違和感を覚えました。「外国のメディアを買収して良いの?」ということですが、テレビ局ではないので問題ないのでしょうか?日本の場合はテレビ局と新聞社の関係が密接であること(クロスオーナーシップ)が基本(?)のため、例えば読売新聞が人民日報に買収されるようなことがあると、ほぼ日本終了です(既にして、人民日報と似たような論調の日本のメディアも存在しますが…)。英国はメディアリテラシーが高い(新聞の信頼度がかなり低い)ため自国の新聞社が外国のメディアに買収されたくらいでは、さして問題ではないのかも知れません。結局、メディアリテラシーが低い国は自業自得ということでしょうか…。