ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

中国にとってトランプ政権は扱いやすい?

2017-04-12 10:07:04 | 社会

トランプ大統領と中国の習近平国家主席との会談が終わった。大きなことは何も決まらず、基本的なことは平行線だったというが、直接会って話をしたことでお互いに相手の人物を探りあって感触を得たことと思う。結構長い時間顔を突き合わせていたので、十分に相手の人物を計ったことだと思う。

客観的に見れば五分の別れだが、基本的には中国側が自分たちのペースを保ったと思う。アメリカは会談中にシリアを攻撃して、かなり中国側に強いプレッシャーを与えたと思われるが、かなりリスクを取って強気の行動に出て互角だった、というのが私の印象である。貿易不均衡に関して実務レベルで検討することになったが、実務レベルでは統一のとれていないアメリカ側はなかなか押し通せないだろうと思う。

トランプ政権が成立したときには、ロシアと接近して、中国には厳しく当たる、というのがトランプ政権、という印象だったが、3か月を経過してロシアに厳しく中国とは対等、というように中国に対しての態度はかなり和らいできた印象である。ある記事で見たのだが、中国はトランプ氏の娘の事業にかなり金を入れたうえに、経済的にも様々なメッセージを出した。例えば、ソフトバンクの孫氏はトランプ氏と直接会って「5万人の雇用を生む」と発言し大きく報じられたが、アリババのジャック・マー氏は「100万人の雇用を生む」、といったそうである。この裏には中国政府の意図が働いていることは間違いないだろう、と記事は書いていた。イヴァンカ氏の話でも、アリババの話でも中国政府が動いたという証拠はなく観測記事であるが、いかにもありそうな話だと思う。そして実際にトランプ氏の中国に対する態度はかなり変わってきた。

今、中国国内で韓国製品の不買運動が起こっているが、これも中国政府の意向が働いているとみて間違いないだろう。THAAD配備に対しての不満を示し、大統領選挙に圧力をかける意図だろう。このように、中国では欧米では取れないような手法を取ることができる。これは民主主義国でなく、共産党の一党独裁だからできることである。トランプ大統領はこのようなことに対抗するために、同じレベルに降りて行って批判を受けても独断的な決定で対抗しようとしているようだが、しょせんこの種の手法では中国には敵わないだろう。そういう意味で中国にとっては扱いやすい政権だと思う。一見正論だと思われる意見を言いながら、実は自分だけの利益を押し通す、という手法の実行に関しては中国のほうがかなりうまく、アメリカは同じことをやって相手国との摩擦だけでなく、自国内での摩擦とも戦わなくなるだろうと思っている。アメリカの取るべき手法は多くの国の賛同を得ながら行う、というのが本筋であるべきだと思う。

シリアの攻撃に関しては国連を通してはいなかったがヨーロッパ諸国の賛同を得ている。トランプ政権の性格を見せつける上では良く考えた手法だったと思っている。


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3 コメント

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チャイナの内情について… (UCS-301)
2017-04-19 19:10:26
日本でチャイナの内情にもっとも通じている一人に河添恵子氏がいます。氏は現地で要人の通訳を勤めていた経験もあり、現在でも個人的な情報ルートを持っているようです。(個人的に河添氏の情報にはリアリティがあると判断しています。)

河添氏の特徴として個人個人の情報に精通していることが挙げられます。チャイナセブン(中国共産党中央政治局常務委員会)のメンバーはもちろん、今回の会談に参加したチャイナ側の一人一人についてコメントできるのは私の知る限り河添氏くらいです。今回の会談を河添氏は”土下座外交”と評していました。つまり、北朝鮮の核を北京にも向けさせないように”お願いする”という意味です。

チャイナセブンのメンバーも李克強首相(共青団)を除けば半分(3名)は江沢民派です。引退後に粛清(逮捕)されることを考えればこのまま黙ってはいないのではないでしょうか。また、少し前に話題になった令完成氏(機密情報を持ってアメリカへ亡命希望中)の影響もバカにできないと考えます。私はアメリカ以上にチャイナの内部分裂の方が激しいと見ています。

ロシアについては事前に通達していたということで、ロシア軍には全く被害が出ていませんし、もちろんプーチン大統領はアサド大統領に連絡しているはずです。今回のシリア攻撃は牽制球のようなもので、これにより米露関係は悪化しない(むしろ事前通達したことで信頼を得た?)と思っています。

北朝鮮については私も抑制を望みますが、拉致被害者とそのご家族のことを考えると複雑な思いです(被害者の親世代ではここ数年で亡くなっている方も多いと聞きます)。
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中国がそれほど困っているとは思えない (ウィトラ)
2017-04-14 11:02:55
トランプ陣営が「中国を嵌めた」と思っている可能性はありそうに思います。私の気分ではそこまではやっていないだろうという感じですが。
中国は北朝鮮に圧力をかけるし、経済統制もすると思います。この段階で北朝鮮とアメリカの間で戦争が始まることを望んでいないことは確実だと思います。
中国はこれまでも北朝鮮に圧力をかけていたことがある(圧力を強めたり弱めたりするというのは日本を含めた全ての周辺国に対してやっている)ことは間違いないと思います。これまでは自分の判断だけで調整していたのが、今回はアメリカの要請を受ける形で行った、という点が従来との違いだと思います。
トランプ政権は成果として宣伝するでしょうが、中国にとっては別に痛手ではないと思います。むしろ、このために米露間の関係が険悪になったとすれば、中国にとっては好ましいことだと思います。
軍事関係の動きはトランプ政権のこれまでの様々な行動の内で最もまともな、成果を期待できる動き方だと思っています。
ただし、北朝鮮がどう動くかは、予測困難です。世界のリスクはかなり高まっており、「北朝鮮が抑えてくれればよいが」、と願っています。
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アメリカには対等な気などないのでは… (UCS-301)
2017-04-13 18:39:45
私の見方はウィトラ様と反対(?)に、今回の会談で周主席はトランプ大統領(というよりアメリカ)に完全に嵌められたように思いました。

アメリカ側の本筋の狙いは朝鮮半島問題であり、たまたまシリアの化学兵器問題が重なったのではないということです。全て会談向けに準備されていたのではないでしょうか。そもそもシリア政府軍が化学兵器を使用する理由からして大いに疑問が残ります(米側の偽旗作戦の可能性があります)。また、韓国の次期大統領候補である親中親北派の文在寅氏もTHAAD容認の発言をし始めました。

いずれにしても、チャイナは北朝鮮へ経済制裁を実行するか、米軍の北朝鮮への軍事行動(おそらくピンポイント爆撃)を黙認するかしかないのではないでしょうか。チャイナが北朝鮮への経済制裁へ今一つ踏み切れないのは北朝鮮を緩衝地帯として温存するという理由以外に、北朝鮮と関わりの深い旧瀋陽軍区(現北部戦区)が江沢民派の影響下にあることが挙げられます。(例によって)日本メディアには露出していませんが、チャイナは大きな国内問題を常に抱えています(人口、人種が多いため当然といえば当然ですが…)。

人物的には、周主席が演技下手で真面目(堅物)であるのに対し、トランプ大統領はポーカーフェイスであり演技派という印象です。「一見正論だと思われる意見を言いながら、実は自分だけの利益を押し通す」手法についてはアメリカの方が(メディアなどを上手く利用し)バレにくいという点で一枚上手だと思います。
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