今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

白内障手術体験記:見えている瞳のままで

2013年08月04日 | 健康

今日はいよいよ我が右目の白内障手術。
私が通う秋葉の「アイクリニック」では、
日曜は手術専用日で、外来は受付けない。
なのにロビーはほぼ満席。
つまりこれだけの人が一斉に白内障の手術を受けるわけだ。

自分もその一員に加わり、血圧測定など術前の検査と瞳孔を拡げる薬を点眼される。
そして施術していただく赤星先生の問診を受ける。
赤星先生は白内障手術の世界的権威でありながら、いたっておだやかな応対で、こちらの気も落ち着く。

手術を受ける者は一人一人呼ばれて上階に行く。
私も呼ばれて、手術室前室に案内される。
そこで頭に防水用の帽子をつけられ、青いガウンをはおる。
椅子に座って、腕に点滴を挿入され、数分おきに両目に抗生物質を点眼される
(別に視野や眼の感覚に変化はない)。

患者の手術が終わるたびに、次の席に点滴ごと移動する。
下で待っていた人が最後尾の席に加わる。
そう、手術時間はたった数分間で、次々にさばかれていくのだ。

私の前の人が手術室に入り、私が待合室の先頭になった。
手術なるものが初めてなので、当然手術を待っている状態も初めて。
命にかかわらないといっても、手術は手術。
診察を待っているのとは気分が全然違う。
いよいよ次は自分の番となると、まるで処刑を待たされていた囚人の気分。

ついに私が手術室に入るべく、看護師に付き添われた。
手術室には手術台代りのリクライニングの椅子(歯医者のそれに近い)が2台横に並んでいて、
1台ではすでに前の人の手術が行なわれている。
空いている1台が私用だ。
室内には、モニターが幾台もあり、そこには今行なわれている手術が大きく映し出されている。
他に見るものがないので、いやでも、黒目に施される手術のアップ画面を視野にいれてしまう。

そしていよいよ私の番。
施術用の椅子に移動し、仰向けになる。
真上から強い光が差し込んでいて、視野は白いだけで何も見えない。
右目部分だけが空いた布のカバーを掛けられ、右目が細い管で洗浄されるが、
その液の勢いもあって、眼球はまだ敏感に反応している。
はたして麻酔が効いているのか不安になる。

この手術は赤星先生が開発した「フェイコ・プレチョップ法」という方法でなされる。
すなわち、角膜の脇を切開して、まず濁っている水晶体を砕き、
それを取り出した後、折り畳んだ人工レンズを挿入する。
人工レンズにはループと呼ばれる支持部(脚)がついていて、
挿入されるとそれが開いて固定される。
非常に熟練を要するが、赤星先生は片目につき4分で済ませことができる。
だから、半ばベルトコンベア的に次々とさばくことができるのだ。

私は、意識が明瞭で右目の網膜像がONになっている状態で、これからその作業を体験するわけだ。

視野的にも気持ち的にも、私の意識は、明るい右目の網膜像に集中させられる。
だが強い光のせいもあり、目の前に接近するメスは幸いにもよく見えない。
右目の中心部に触覚的違和感が走った。
切開が始まったようだ。

ただし、右目の視覚像は、真っ白いだけの光の世界に、
時たま角張った黒い影が、視野の中央で光を遮るようにうごめいている状態。

そして、ある時から、視野一面が細かい細胞状で構成された(ある意味)美しい風景となった。
術中、視野に拡がった唯一の形態像だ。
きっと水晶体が砕かれたたのだろう。
それによって視野の外部対象を失い、網膜に眼球内部の風景が映ったかのようだ。

そして、また光と影のせめぎ合いが始まり、
やがて明らかに、光源周囲の光彩が鮮明(クリア)になった。
人工レンズが無事装着されたに違いない。
その鮮明な光彩が打ち勝ったかのように、角張った黒い影が視野から消えていった。
手術が終わった。

椅子が戻され、手術室が明るくなった。
隣の椅子には次の患者が横たわっている。
すかざず、看護師が保護メガネを装着する。

手術を終えた赤星先生にお礼を言って、導かれるままに手術室を出て、
術後者専用の椅子に腰掛けて、眼の周囲のふき取りや点滴の解除などの措置を受けた。
もちろん、痛みの有無を尋ねられた。
右目に違和感はあるが痛みはない。
だいいち、すでに右目で見ている。

階下のロビーに降りていくと、帰りの付添いとして来てくれた母がいた。
その後車で迎えに来てくれた弟もやってきた。

あとで知ったが、この頃、宮城県で震度5強の地震があった。
手術中に震度5強の地震がなくてヨカッタ。

→「人工水晶体からの眺め」に続く


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